【コラム・室生勝】2010年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会に突入した。その次に来る「多死社会」は2012年から始まっていると言われており、その年、国立社会保障・人口問題研究所が年間の死亡者が最も多くなるのは2040年と発表している。

時を同じくして、厚労省は2012年度に、「在宅医療介護連携拠点事業」を全国の市町村、医療機関、訪問看護事業所、医師会などの職能団体などに補助金を出して奨励。茨城県では4団体が、つくば市では筑波メディカルセンターが実施した。その翌年から3年間、つくば市医師会も取り組んだ。

市医師会は、主に「退院から在宅への移行の支援」「日常の在宅療養支援」「緩和ケア」「在宅の急変時の対応」「在宅での看取り」について、多職種が研修し、意見を交換した。しかし、医師の参加は少なかった。唯一の成果は、各診療所医とケアマネージャーが話し合う時間「連携タイム」(参照→つくば市ホームページ)一覧の作成であった。

2016年度からは「在宅医療介護連携推進事業」として市地域包括支援課が引き継ぎ、3年を経過したが、医師の参加が少なく、十分な成果を挙げていない。6圏域ごとに年6回開かれる圏域ケア会議の予定表が各診療所に配布されているが、筑波圏域以外では診療所医師の出席が毎回1名しかいないことも少なくない。

30名ほどのケアマネージャーや医療介護職が事例検討するが、事例の病気、治療内容を理解したうえで検討しなければ、適切な在宅ケア支援方法を見いだせない。ケア会議は13時半から90分間である。診療所医師に、30分間だけでも出席してほしい。この3年、私が可能な限り出席(筑波圏域以外)している状況である。

松戸市医師会の2人主治医制

本来ならば、医師会は、この課が担当する連携推進事業を牽引(けんいん)しなければならない立場である。市民への在宅医療を実施する診療所医師の紹介や多職種の相談などに積極的に応じてほしい。いま全国的に、従来の地域包括支援センターが有していない医療問題に対応できる「在宅医療介護支援センター」を、医師会や市区が各地で設けている。

今年1月、「在宅医療介護推進事業」の多職種意見交換会で講演した松戸市医師会の川越正平理事は、昨年4月に医師会が開設した「松戸市在宅医療介護連携支援センター」を紹介した。困難事例への相談支援・ 訪問支援、圏域ケア会議へのサポート医(医師会で研修養成)の派遣、2人主治医制の推進、在宅医療を新しく始める医師への支援―などを行っている。

つくば市でも、2月の在宅医療介護推進協議会で、保健福祉部長から「地域医療連携推進法人」という形で提案があった。医療職がいない地域包括支援課では、対応困難な医療問題を含む事例の日常的な相談に応じることができる。本年度の協議会の大きなテーマである。

この協議会は、本年度から委員構成が変わる。学識経験者、職能団体代表、民生委員代表、市職員などに、若干名の公募市民委員が加わる。私は昨年度まで在宅医療経験者代表であったが、本年度から在宅医療介護サービスを受ける立場の市民委員に応募した。

3月のコラムで紹介した喘息(ぜんそく)持ちのH郎さん(77)からは、かかりつけ医から協力医を紹介されたと連絡があった。松戸市医師会では「2人主治医制」といっているが、「協力医制」と称している医師会もある。主治医が学会や旅行で不在の場合、協力医が代わりに診療する。急変時に対応してくれるので、患者や家族は安心だ。(高齢者サロン主宰)

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