【コラム・高橋恵一】昔、職場で、職員の趣味を紹介する企画があり、自分は「地図を見ること」と答えたら、珍しいといわれ、挙句は「地図を見ると何が面白いの?」という反応だった。ゴルフやテニス、読書や音楽鑑賞は、趣味として堂々と認められているのに、当時は、俺も地図を見るのが趣味だと名乗り出る人もなく、マイナーな趣味であった。

自分が地図に関心を持ったのは、小学校の教材としてB5判の「地図帳」を渡された時からで、B5見開きのページに、世界地図や日本の地方別の地域が陸地と水面に色分けされ、陸地は緑色の平野部と、茶色の濃淡で高度を表現した山地部が表現されていた。

地図は、1ページの中に膨大な情報を記号化して、書き込んである。世界は、国ごとに境界が国境線で区切られ,それぞれの首都は赤色で表現され、国内は、都道府県など行政界が県境線で区切られ、県庁所在地の都市に赤い丸を付けられていた。

地図を見る楽しみは、小さな発見にある。学校の休み時間に、地図帳を広げ、地名探しゲームをした。広げたページの中から、町や山、河川などを探すのだ。もちろん、索引を使うのは違反である。

関東で一番高い山は?

北海道地方で一番高い山(カッコ内数字はメートル)は、大雪山(旭岳、2291)。では、東北地方で一番高い山はどこか? 早池峰山(1917)より、磐梯朝日の吾妻山(2035)の方が高く、鳥海山(2236)も考えられるが、燧ケ岳(ひうちがたけ、2356)が最高峰である。どちらかというと、群馬県の尾瀬ヶ原の延長で、至仏山と兄弟みたいな存在だが、福島県の山である。

関東地方は、那須連峰,日光連山、三国山脈、赤城山、榛名山、箱根山など多彩だが、高さで言うと白根山、日光白根(2578)になる。地図帳の茶色の濃いゾーンから、標高の高いものを探すのだ。

中部地方は、日本一の富士山があるので、2位を探すゲームになる。北アルプスに奥穂高岳(3190)、槍ヶ岳(3180)をはじめ日本の屋根が連なるが、南アルプスの白根山(北岳、3193)が2位で、北岳は日本の2位でもある。

山ばかり探していてもつまらないので、山の多い中部地方で、湖を探すのも興味深い。浜名湖や諏訪湖のような有名な湖は探す手間もかからないので、加茂湖を探すことにした。小さいので見つけにくいが、地図帳には載っている。ヒントは、大きな島を探すことだ。

九州で一番高い山は?

近畿地方には2000メートルを超える山がないので、小さな島を見つけるのを問題にした。沖島(おきのしま)を見つけて欲しい。中部地方の湖探しをヒントにすれば、すぐに見つかるだろう。

中国・四国地方の高い山は、超有名な大山(だいせん、1729)と石鎚山(いしづちさん、1982)で、問題の出しようがない。

九州地方は面白い。ど真ん中に阿蘇山(1592)が鎮座し、北に久住山(1791)、西に雲仙岳(1483)、南に霧島山(1700)と、名だたる有名火山が競っている。しかし、一番高い山は、火山ではなく黒色の山マークの宮之浦岳(1936)。いつも雨雲に覆われ、縄文時代から杉の原始林に囲まれている山だ。

最後まで付き合ってくれた方には、お詫びするが、趣味というのは、他人の迷惑が判っていても、途中ではやめられないものだ。(地図愛好家)

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