【コラム・浅井和幸】自分の給料が良くないのは、景気が悪いせいだ。コミュニケーションが下手なのは、親の育て方が悪かったからだ。今、気分が悪いのは、朝の占いが悪かったからだ。自分がこんなに苦しいのは、自分の能力がないからだ。

私たちは、日々、嫌なことから逃れるために、原因を探して対処しようとします。苦しさにはまっている時は、さらに、漠然とした原因探しに没頭し、改善する行動を避けます。

悪循環になっているときは、さらに正しいことをすればよいと、事態が悪い方向に向かう行動を繰り返してしまうこともあります。宿題をやれと言っても宿題をしないので、宿題をやれと怒鳴るというような行動を取りがちですね。

以前、悪人が作る料理でも美味しいかもしれないし、善人でも病気になるかもしれないというコラムを書きました。悪いことをすると悪いことが起こる、良いことをすると良いことが起こるという、固定観念は危ないということです。

Aという地点に行きたいとき、Bという状況にしたいとき、それに反する悪いことを削除しようと、私たちは努力することが多いものです。

それをしてはいけないということではありませんが、それで上手くいかないときは、A地点に行くためにプラスになること、B状況に近づけるために有利な要素を増やすことを考えて行動することが大切です。

何か不都合なことが起きたときに、何が悪いのかと考えることと、どう良くしていくかと考えることでは、全く別物であると捉えた方がよいでしょう。究極的に考えられれば同じなのですが、そこまで突き詰めて考えられない私たち凡人は、この2つは別物の考え方、アプローチであることを前提にとらえたほうがよいのです。

希望の達成に出来ることを試す

好ましくない状況が変わるまで待つ、我慢するというのも、一つの方法ではあります。しかし、少しでも自分の目的に沿うような要素を、自分の言動で加えていくことの方が目的に近づきやすくなるのは当然のことです。

曖昧で動かしがたい悪い原因を考えて、全く行動を起こさないということは、苦しさの持続を手助けしているようなものです。苦しみの緩和や希望の達成に対し、できるだけ具体的に、些細(ささい)なことでも出来ることを試すことをお勧めします。

何が良い行動かは、試してみないと、そう簡単に未来の予測は出来ません。試して検証して、また試して検証してと、微調整をくり返し、想像ではなく事実、現状をできるだけとらえていくことです。

苦しみにはまり込んでいる自分は、いったい何で悩んでいるのか、希望は何かをもう一度考え直してみてください。出来ることは些細な簡単なことです。難しいと考えるのであれば、それは、専門家に相談を繰り返すという行動を試しましょう。(精神保健福祉士)

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