【コラム・先﨑千尋】「日本原子力発電東海第2発電所の再稼働は住民投票によって判断すべき、避難計画の策定は困難」。茨城大学人文社会科学部の渋谷敦史教授らの調査グループは先月、「地域社会と原子力に関するアンケート2018」の結果を公表した。

同グループは、東京電力福島第1原発の事故前の2010年から、東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市の住民を対象にこのアンケートを実施してきており、昨年12月に実施した結果をまとめたもの。対象者は4,000人、有効回答率は24%だった。

これによると、原子力施設に対する安心度は、「安心、まあ安心」が24%、「不安、少し不安」が65%と、3分の2は不安を抱いている。東海第2の再稼働については、「なるべく早く再稼働」8.8%、「地震・津波などに備えた耐震・防潮対策を徹底するまで運転再開するべきでない」28.1%、「再稼働は凍結し、東海第2原発の今後について地域で白紙から議論すべき」8.1%、「現在の老朽化した原子炉に代わる新型炉を新設する」6.7%、「運転を停止したまま廃炉に向けて準備し、原子炉の新増設はしない」45.9%であった。

東海第2の20年延長については、「危険はない」「保守点検を適切に行い、慎重に運転すれば危険はない」が合わせて3割、「保守点検を適切に行い、慎重に運転しても危険がある」が60%という結果だった。

廃炉を求める声が多数-茨大調査

この2つから、東海第2の廃炉を求める声がこれまでの調査と同じく、最大多数の意見となっていることがわかる。那珂市では廃炉を求める意見が2年前より8%増え、東海村でも慎重に運転しても危険という意見が53%と半数を超え、ひたちなか市では67%と3分の2に達している。

東海第2の再稼働については、昨年3月に地元6市村と新協定を結び、地元自治体の同意、事前了解が必要になった。その判断についてアンケートでは、「首長の判断」5%、「議会と首長の判断」10%、「住民投票と住民アンケート」49.4%、「県民投票」24.3%と、住民・県民が直接意思表示する方法を望む人が7割を超えていることが分かった。

原発事故が発生した時を想定した避難計画については、「十分可能」が20.9%、「かなり難しい」が59.4%で、多くの人は、市町村による避難計画の策定は難しいと考えている。2016年以降、東海村をはじめとして避難計画策定作業が目標通りに進んでいないことが背景にあろう。

自由意見でも、避難計画策定よりも、避難の必要性を生み出すような原発を止めるべき、廃炉にすべき、という意見がかなり出されている。「福島第1原発事故の問題が解決していないのに、さらに原発を再稼働させることが信じられない」「避難計画を考慮しなければならない危険があるのなら、再稼働はすべきではない」など。

このほか、調査結果から、専門家や国、裁判所の判断は信用できないなど興味深い結果が読み取れる。この内容は、同大人文社会科学部市民共創教育研究センターのホームページで公開されている。(元瓜連町長)

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