【コラム・室生勝】私が主宰する高齢者サロンは来月には5年目に入る。この1年間の参加者は60名を越すが、月2回以上の常連は43名である。男性12名、女性31名で、60代3名、70代19名、80代21名、90代1名。ボランティアは臨床心理士1名(50代女性)、ピアノ伴奏者2名(50代、70代)である。

一昨年5月のコラムに介護予防のことを書いたが、このサロンは、自己健康管理を主目的とした介護予防サロンであり、社協の「ふれあいサロン」と少し異なる。高齢者(特に後期高齢者)の健康管理は、青壮年層の月単位の健康チェックとは違い、週単位のチェックが必要である。

精神的健康管理も支えている。1年前からサロンに参加した臨床心理士と世話人7人の中の民生委員2人が主になって、悩んでいる人の相談相手になっている。精神的負担を抱えてサロンに来て救われた人も手伝っている。関わる人たちは悩める人の個人情報を漏らさぬよう心がけている。

身体的健康管理については、高齢者の内科疾患を繰り返し学んでいるが、整形外科疾患は脊椎・関節・筋肉の障害の学習だけでなく、参加者個々の身体状況に応じた運動指導も心がけている。最期を迎えるまで下半身の力を維持したい。来年度からは運動指導のボランティアの手を借りるつもりだ。

同郷・方言は「癒やし」の力に

この3カ月間は、寒さだけでなく、インフルエンザを恐れて外出を控えた人が多かった。その結果、閉じこもり気味になり、運動不足で食欲低下と睡眠不良をきたす人があった。後期高齢者では、これらの状態からフレイル(虚弱)に陥りやすい。閉じこもり(うつ状態)→食欲低下→体重減少→下肢筋力低下→運動不足→閉じこもり→食欲低下と、悪い方へ渦巻き状に進みやすい。

寒くてもサロンに来ていた90歳代の1人暮らしの女性Mさん(息子夫婦世帯が市内在住)がいる。サロンではよくおしゃべりし、私が体調を訊(き)いても、「おかげさまで何とか生活していますよ」と笑顔で答えた。しかし家に帰れば、ボランティアの臨床心理士に寂しいと電話をかけていた。

担当民生委員に時々の訪問を依頼したが、2~3週間ごとでは寂しさは癒やされなかったようだ。3月半ばに、私が親しくしている40歳代男性の鍼灸マッサージ師KさんがMさんの隣接県出身であるので、時々訪問してくれないかと頼んでみた。Mさんに方言の癒(い)やし効果を期待したからである。故郷と決別した高齢者には、方言が大きな力を発揮することを30年前に経験している。

Kさんは早速、Mさんに私から依頼があったと電話をかけ、自己紹介後に「Mさんは僕の大叔母と同姓同名です。漢字は違うかもしれませんが」と方言で話したところ、快活な声で返事してくれたと報告があった。Mさんに電話でKさんの感想を聞いたところ、近々会うのを楽しみにしていると喜んでいた。

後期高齢者にはサロン以外の日常的な支えが必要である。1人暮らしや高齢者だけの世帯には担当の民生委員がいるので、地域の民生委員にはサロン見学をお願いしている。これからは、介護保険サービスを利用している高齢者については、担当ケアマネジャー、主治医、サービス提供者たちと連携していきたい。(高齢者サロン主宰)

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