【コラム・奥井登美子】昨年当地で開かれた世界湖沼会議で、土浦の自然を守る会は土浦のサテライト会議と、つくばのポスター発表に参加した。私はハイスクール会議に行くことができず、とても残念であった。

若い人たちが何を発表したか気になっていたが、先月開かれた霞ヶ浦市民協会主催のシンポジウム「世代をつなぐ環境活動の問題点」で、市村和男氏、黒田久雄氏からハイスクール会議の報告を聞き、少し安心した。今後、高校生の環境問題への関心を、どう日常生活と結びつけていくか。

地球環境のオゾン層、海水温度などが、直接、災害や健康被害としてのしかかってくる時代。若い人たちが、50年後100年後の地球をどんな形で残すのか、気になってしまうのである。

学生時代の体験は一生を支配

1983年に開かれた世界湖沼会議のプレ会議(琵琶湖)で、私は「霞ケ浦流入56河川の市民の手による水質調査」について発表した。

この調査には、1982年=202カ所・167人、83年=229カ所・130人が参加した。調査は学生たちに団長役をまかせ、産業技術総合研究所の原田泰さんがまとめ役になり、奥井薬局に事務所を置いた。

お金がないので、酒屋さんから寄付してもらったビールの空き瓶を採水瓶にした。このため、奥井薬局は足の踏み場もないほど瓶だらけになってしまった。7回目の調査(786カ所)には320人が参加した。このときの団長は筑波大学生の麓尚仁君だった。

パックテストもない時代で、分析をどうするか、参加した子供たちが怪我をしないようにするにはどうしたらいいか―など、夜中までビール瓶の間に座り込んで議論をした。

汗だらけになり、子供たちに水の汲み方を指導し、霞ケ浦流域を駆けずり回った。麓君のほかの団長役を務めた学生たち、筑波大の片亀光君、静岡大の前田恭伸君、森保文君、広島大の浅野敏久君らは、今、全国に散らばって、環境問題の専門家として活躍している。

彼らの論文や著書を読んで感心するのは、その幅の広さ、志の豊かさである。高校生、大学生のときの体験はその人の一生を支配する。昨年の湖沼会議に参加した高校生に霞ケ浦の未来を期待したい。(随筆家)

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