【コラム・坂本栄】県内トップの進学校、土浦一高に中学校が併設され、同校は「中高一貫校」になるそうです。移行は2年先ですが、県が2月に発表した県立高大改革、エリアの小学生の父母にとってはビッグニュースだったと思います。土浦一高の中高一貫化は私の持論でもありましたので、この決定に拍手を送ります。

詳しくは本サイトの記事「土浦一、水戸一など10校が中高一貫に 県が県立高校改革プラン」(2月21日掲載)をご覧ください。見出しからも分かりますように、中高一貫が導入されるのは土浦一高だけでなく、県内12ブロックの拠点校(2ブロックは導入済み、新規は10ブロック)になります。

事情通によりますと、当初、対象校は「土浦一、水戸一」に絞り込まれていたそうです。ところが、議論の過程で「自分の出身校も入れろ」といった声が噴出、全域に拡散したとのこと。良いか悪いかは別にして、とても民主的な決定プロセスがあったわけです。

最初のパラグラフで、土浦一高の中高一貫は私の持論と述べましたが、その論旨を「土浦一高進修同窓会会報」(2014年12月1日号)への寄稿から引用します。

「10年前のTX(つくば―秋葉原)開通により、つくばの優秀な中学生は東京の高校も選択できるようになった」「また、県南の私立高校が中高一貫制を採用、優秀生の奪い合いが激化している」「学校としても、こういった地政学的変化、教育システムの進化に対応しないと…」「県立高の制約はあると思うが、土浦一高も中高一貫(全国の優秀生を念頭に寄宿舎も用意)を導入したらどうか」

竹園東>吾妻>手代木>土浦第四>土浦第一

つまり理由は2つです。ひとつは、新鉄道の開通で県南が東京圏に組み込まれ、地域間競争が激化したこと。もうひとつは、官営サービスが民営サービスの挑戦を受け、対応を迫られていること。いずれも教育のシステムだけでなく、他の分野にも見られる現象です。

地域の変わり様は、首都圏という広域はもちろん、土浦とつくばの2市間でも見られます。土浦一高によると、出身中学校別生徒数(現年度の1・2・3年合計)は、竹園東79(★)、吾妻64(★)、手代木47(★)、土浦第四39、土浦第一37、土浦第二37、谷田部東31(★)、並木29(★)の順です。圧倒的につくば市内(★印)が多く、土浦一高でなく「つくば一高」と呼んだ方がよいくらいです。

どちらの市が「偉い」ということではありません。研究学園の誕生によって県南が変わったことを指摘したいのです。ビジネスは言うまでもなく、教育もノスタルジーに浸っているわけにはいきません。強い教育システムをより強くすることで変化に対応する―これが中高一貫必要論の主意です。

東京の高校関係者の皆さん、県南地域の私立・公立中高関係者の皆さん、賢い子がより賢くなるよう、競争してください。そして、地域の塾経営者の皆さん、この新たな教育マーケット(お客様は小学生)はチャンスです。(経済ジャーナリスト)

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