【コラム・及川ひろみ】啓蟄(けいちつ)も過ぎ、宍塚ではアカガエルの産卵が最盛期を迎えています。アカガエルは冬でも水がある谷津田のような環境で卵塊を生みますが、今年の初認は2月20日、例年よりかなり遅い産卵でした。その前日、気温が15℃以上もあったことから、一気に産卵が進んだようです。カエルたち、温かな夜を待っていたのですね。

白梅もそのころから一気に開花が進み,シジュウカラもまだ高らかなとはいきませんが、さえずりが聞かれました。フキノトウの開花はそれよりずっと早く、今年の初認は2月5日でした。

アカガエルの産卵、フキノトウの開花、いずれも水が浅くたまった谷津田や湿地環境で見られます。谷津田や湿地は水辺と森をつなぐ環境です。このような場所は、カエルやトンボ、水生昆虫,湿地製植物などの生息場所になり、絶滅危惧動植物の宝庫でもあります。

しかし、湿地や放棄された谷津田はアシ・ガマなどに覆われ、またヤナギ類などが育ちやすいなど、放置すると、瞬(またた)く間に多様な生物が失われます。

林の活動・湿地環境・竹林活動

宍塚の会では、現在4か所の湿地環境保全を行っています。そのうちの1か所は、2010年から県自然博物館と合同で年3回植物調査を行い、どのような管理が望ましいかを専門家を交え話し合い、冬季には湿地の一部の耕耘(こううん)を行っています。

しかし、油断は禁物。ヤナギ類やアシ・ガマなど、湿地で育つ植物の取り除き活動が必要です。これは、里山環境について学ぶ大学生や専門学校生、それに数社企業の応援を得て行っています。湿地だけでなく、里山の環境の要素である森林・草原・池・小川、田畑など、それぞれの環境について調査と保全を継続しています。

これらの活動には、中学生・大学生、企業、行政・研究機関、そして市民、会員、時に小学生も加わっていますが、林の活動が好きな人は林に関する活動を、湿地環境に興味のある人は湿地活動、中学生は竹林活動を継続するなど、興味や関心を大切にしています。

かつて里山は農業・暮らしに深く結び付いていましたが、今では実践を通して環境を学ぶ大切な場になっています。宍塚の里山はこれら多様な環境に恵まれていることから、その役割が大変大きなものになっています。

里山の価値はいったん見失われたかのようでしたが、生物の多様性を補完する場所として、また子どもや若者が環境を学ぶ場所、里山の文化を継承する場所として大切になっています。(宍塚の自然と歴史の会代表)

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