《邑から日本を見る》2 原発問題はやはり争点だった 知事選でわかったこと(2)


私は、橋本昌氏が告示日の直前になって、東海第2原発の再稼働に反対するという「豹変」ぶりを見せたことに疑問を感じた。新聞は、橋本氏は8月8日の政見放送の収録で「再稼働を認めない」と言った、と伝えている。支持者への根回しはなかったようだ。再稼働反対の公明票をつなぎとめるためではないか、と見られている。

しかし、結果は橋本氏の期待通りにはならなかった。新聞各紙の出口調査では、投票した人の約6割が原発再稼働反対だった。しかしそのうちの4割の人が大井川氏に投票した。原発再稼働は争点にはならなかったと言える。原発に賛成の立場の連合は逆に反発し、大井川氏に流れたようで、橋本氏は結果としてアブ蜂取らずだった。

鶴田氏の敗因はいくつか挙げられるが、決定的と思えるのは、出馬表明が遅れたことだ。記者会見から告示日まで実質1カ月しかなかった。しかも、民進党、社民党の推薦は得られなかった。野党共闘は茨城の知事選では実現しなかった。

私は、自分の経験も踏まえ、投票の際、政策で選ぶ人は1割くらいしかいない、と考えている。会う、話をする、講演会などで聞いてもらう、靴を何足も履きつぶすほど歩け、人に会え、と言われた。しかし、選挙民すべての人に会ったり話したりはできないので、友人や知人の役割も大きい。あの人の言うことなら信頼できると。自公両党はそれぞれの組織をフル稼働させた。本人(大井川)のことは知らなくとも、あの人が言うのだから、という積み重ねの結果だったのではないか。

では、鶴田氏の出馬は無駄だったのか。そんなことはない。新聞各紙が書いたように、最初はそうではなかったのに、間違いなく東海第2原発の再稼働問題は争点になった。原発反対運動をしてきた市町村議の何人かは橋本氏支持を表明し、鶴田票を取り込む行動に出た。

9月に行われた隣県のいわき市長選では、3人の候補者は東京電力福島第1、第2原発がすぐ近くにあるのに、誰も原発や放射能問題を積極的に触れなかった。結果は現職再選だった。原発銀座と言われる福井県では、県レベルでも市町村レベルでも、原発問題を主要論点とする候補者はこれまでほとんどいなかったと聞いている。

大井川氏は「県民の意思を十分に反映する形で、再稼働の可否を慎重に判断する」と言っているようだが、「茨城県民は原発再稼働に反対」が半数を超えていることを重く受け止めて欲しい。

鶴田氏の功績の二つ目は、「いのち最優先」という、誰もが当たり前だと思うことを前面に押し出したことであろう。「歴代知事は大型開発優先の県政を進めてきて、全国第8位の財政力がありながら、医療や福祉、教育は全国最低クラス、魅力度も最低。それはどうしてなの」というのは、主婦の感覚、庶民の感覚であり、これまでそのようなことが選挙時に話題になることはなかった。最新の報道では、本県は今年も「魅力度」全国最下位だそうだ。

さて、本稿が皆さんの目に触れる時には今回の総選挙の結果が出ている。茨城では実質的な野党共闘が成立しなかった。

事前のメディアは、ほとんどで自公両党が圧勝し、野党では小池東京都知事が率いる希望の党が伸びず、立憲民主党が健闘している、と伝えている。結果はどうか。疑惑隠し、大義が見えない、などと言われてきた。天下取りを狙った小池さんは、安倍政権を倒すと言いながら「排除」を振りかざし、しがらみのない政治を口にしても、おやりになることはしがらみだらけ。一貫性がない。有権者はどう判断するだろうか。

とにかく、政治を変えることができる唯一のチャンスは選挙だ。「台所は必ずしも政治につながらないが、政治は確実に台所につながっている」。ありとあらゆることがテーマ、争点になるのだ。年金、医療、教育など、自分の暮らし、地域の変貌、農業の衰退などをどうするのか。あの人に頼まれたからではなく、自分のアタマで考えたいが、後の祭りか。

次回は今回の選挙結果を取り上げる。(先崎千尋)