【コラム・奥井登美子】私は台所の生ゴミを、まだ捨てたことがない。全部自家処理している。東日本大震災のときに、倒れてしまった隣家の跡地に家庭菜園をつくり、そこに大きなコンポストが鎮座ましましている。

家庭菜園は私のささやかな趣味で、今は、土浦の自然を守る会の植物講師・後藤直和さんにいただいた菜種と、ふきのとうが食べたくて植えた蕗(ふき)が、元気に育っている。

庭の落ち葉は、袋に入れて大事に1年中、菜園やチョウの育成に使っている。昨年の夏、居間からよく見える中庭の、ツバキとアジサイの木の間に、雑草がいっぱい生えてしまった。あまりの暑さに、雑草を抜く気力がなくなってしまった私は、試しに、生ゴミを雑草の上にかけて、その上を落ち葉で覆ってみた。

昨年の夏の暑さときたら格別で、異常気温。1週間たってみたら、雑草はきれいになくなって、落ち葉だけが残っている。「コレはデカシタ。ゴミ君」。私はコンポスト利用を中断して、庭の雑草退治にゴミを利用することにした。

鳥たちのご飯粒争奪戦を観察

ある日、犬のミミちゃんが急に吠え出したのに気をとられて、生ゴミに落ち葉をかけるのをすっかり忘れてしまったことがあった。次の日の朝、居間から見た中庭の風景を、私は忘れることが出来ない。

スズメが7~8羽、ムクドリが3羽、仲良く生ゴミをつついている。ゴミの中にリンゴの皮とご飯粒が残っていたのを、スズメが見つけて、争奪戦になったらしい。

鳥たちの餌(えさ)の争奪戦の面白さ、どの鳥が先に見つけて、どんなネットで合図を送るのか観察するのには、もってこいの「特等席」が居間にできてしまった。鳥仲間が木の上で遊んでいるのを見て安心するのか、メジロやウグイスも、たまに遊びに来るようになった。

「今朝はカラスが来て、ヒヨドリを1匹さらっていったよ」「カラスだけは、来て欲しくないわ。どうすればいいのかしら」

私たち夫婦も、夫婦喧嘩を一時休戦して、鳥の観察に余念がない。生ゴミの楽しい使いみち、まだまだ研究する余地があると思う。(随筆家)

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