【コラム・室生勝】昨年4月、経産省が発表した「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書」の中に、「加齢に伴う要介護(要支援)者割合の推移」がある。この図によると、介護保険サービス未利用者の割合が、75~79歳:87%、80~84歳:71%、85~89歳:49%、90歳以上:23%、となっている。85歳以上になって、やっと半数がサービスを利用するという驚くべき数値である。

この理由としては、適切なサービスがない、他人の介護を拒否する、などが考えられる。家族に介護力があればよいが、高齢者のみの世帯、精神障害者を抱える高齢者世帯では、低料金か無料の市町村の介護保険以外の公的サービスを利用しても、地域住民の支えが必要になる。

そのような人たちの相談相手の多くは民生委員である。こういった公的サービスを利用しても、家族の介護負担が軽くならない場合や、病院などをうまく利用できない場合、相談されても困る。民生委員は個人情報を守る立場から相談できるのは市役所に限られ、それでも解決できる場合は少ない。その後も気になり、時々訪問して状況が悪くならないか確かめている。その度に無力感にさいなまれるという。

家族介護が困難になる前に、早く気づき対応する術(すべ)はないものか。私は民生委員たちと一緒に考えてみたいと常々思っていた。その機会が最近やって来た。

一昨年秋、私が長年ひいきにしていたレストラン・グルマンが店を閉め、筑波学院大で学生食堂とレストランを開くが、そこを利用して、介護問題を話し合うカフェを開いたらどうかと店主から相談があった。そこで、懇意にしている訪問看護ステーション「タームズ」に提案したところ引き受けてくれた。

カフェ「民生委員の話を聴こう」

タームズは1月下旬に開いたカフェの企画を「民生委員の話を聴こう」にした。方々の民生委員に声をかけて、参加した方々から苦労話と意見を聴くことができた。

民生委員は、介護保険サービスを利用している高齢者の場合は、担当ケアマネジャーと連携できる。介護認定を受けていない高齢者や介護保険サービスを利用していない高齢者の場合は、地域包括支援センターが民生委員の相談に対応してくれる。

しかし、センター職員は多忙なため、高齢者宅への同行訪問を週1回、1~2カ月と続けることはできない。対応に苦慮する高齢者の場合、民生委員ひとりでは経過観察は難しく、悩むことが多いという。

民生委員が担当する高齢者の圏域ケア会議・困難事例検討会で、ケアマネジャー、医師、看護師、介護士、理学療法士らと一緒に検討できるのは勉強になる。特に、医師や看護師の意見は参考になる。多職種の人たちと意見を交わしていると、日ごろの孤独感が消え、センターの人たちとも親しくなれるという。

持病の悪化や認知症の兆しに気づいても、かかりつけ医がいない高齢者に民生委員ひとりで医療機関受診を勧めても、応じてくれない場合が多い。同行訪問してくれる看護師かベテラン保健師がいてくれたらと、民生委員たちは願っていた。(高齢者サロン主宰)

➡室生勝氏の過去のコラムはこちら