【コラム・坂本栄】つくば市の行政ウォッチは結構笑えます。街並み、研究機関、教育機関、そこで仕事をしている方、住んでいる方の先進性と対照的に、行政・議会が田舎丸出しだからです。

前回(1月21日掲載)と前々回(1月7日掲載)、市のスポーツ施設の指定管理者選定問題を取り上げましたが、その後、市は議会の意向を受け入れ、一度決めた管理者を選び直すプロセスで、市外の業者を事実上排除する新選定基準を採用しました。市長の五十嵐さん、「市外の者 参入禁止」の高札を立てたわけです。 

詳細は本サイトの記事「【ウェルネスパーク問題】再公募 応募資格を地元に限定 募集期間わずか10日」(1月24日掲載)をご覧ください。

ポイントは、先に東京の業者が選ばれた際の選定基準では、応募事業者の資格は「市内に拠点となる事務所を置く」であったのに、議会の意を汲(く)んだ新基準では「市内に本店を置き継続して2年以上経過している」になった、ということです。

この基準ですと、東京の業者は再エントリーできません。前回2位あるいは3位だった市内の業者に何が何でも管理者を任せようと、市外業者の排除を狙った手順と言えるでしょう。市は議会に屈し、地元企業優先・市外企業排除の入札基準を採用したことになります。

これまでのコラムでも指摘しましたように、こういった地元保護は、納税者に余計な負担を負わせ(応々にして高い買い物につながる)、地元の業者を甘やかす(過保護により競争力が育たない)ことになります。もちろん、サービスの質の問題もあります。

さらに、先進的で開放的な研究学園市のイメージを傷つけます。「整然とした街並み」「多くの研究機関」「高レベルの国立大」「意識の高い市民」と、「垢(あか)抜けない行政・議会」 のミスマッチングは悲しいものがあります。 

ウェルネスパーク問題 学園都市の田舎政治

私は高校まで土浦市に住んでいました。そのころ、今のつくばセンター地区とその周辺は山林か田畑でしたから、足を運んだ記憶はありません。林の中にポツンと建つ館野測候所(現気象庁高層気象台)見学は覚えていますが、現つくば地区への遠足といえば筑波山が定番でした。

つくば科学博のころは、米国から帰ったばかりで、東京で経済記者をしておりました。帰省の折に車で現つくばセンター地区を走り、その都市構造に「これは日本でない」と感激したものです。そのころ、取材のかたわら、県知事の竹内藤男さん、後任の橋本昌さんに頼まれ、三井不動産の江戸英雄さんらと、科学博跡地分譲(買い手企業探し)を手伝ったこともありました。

私のつくばの記憶=縦軸=には、このような田舎と都市が混在しています。でも、現切断面=横軸=に田舎と都市が混じるのは困ったものです。都市化が進むTX研究学園駅エリアの一角にデンと構える「村役場」―笑って済ませられるでしょうか?(経済ジャーナリスト)