《邑から日本を見る》31 英原発凍結と経団連会長発言の真意

飯野農夫也氏の版画「憩い」

【コラム・先﨑千尋】日立製作所は17日、「英国で進めてきた原子力発電所の新設計画を凍結する」と発表した。総事業費が3兆円規模と巨額で、採算が取れるメドが立たないからだ。これにより、安倍政権が成長戦略の柱として進めてきた「原発輸出」はゼロになる。

政府の原発輸出は2000年代、地球温暖化対策として原発が注目された時に打ち出された。他の製品輸出と違い原発は兆円単位と巨額で、東京電力福島第1原発の事故後、国内での新設が見込めなくなり、輸出に活路を求めた。政府は、技術の維持のためにも輸出が必要だとしてきた。

しかし、国内の原発メーカーである日立、東芝、三菱重工業が政府の後押しを受け、リトアニア、トルコ、ベトナム、台湾、アメリカで進めてきた計画は、すべて凍結や中止に追い込まれた。東芝は、アメリカの原発計画で多額の損失を計上し、本体の経営が存亡の危機にさらされた。日立も、今回の凍結で3000億円の損失を計上するという。これ以上深入りすれば、東芝の二の舞になることを懸念したと思われる。日立の東原敏昭社長は記者会見で「これ以上の投資は民間として限界だ」と述べている。

この日立の決定について、新聞各紙は「原子力政策総崩れ」(東京)、「原発輸出固執した政権 計画総崩れ」(朝日)、「日本 原発輸出手詰まり」(毎日)などと報じている。それなのに政府は「安全運転や東京電力福島第1原発事故の収束を実現するためにも、人材、技術、産業基盤の維持、強化は必要」(菅官房長官)、「政府が原発を輸出する方針に変更はない」(世耕経産相)などと強がりを言っている。

1旬で発言が180度変わった!

それより前の今月4日、日立製作所の会長でもある中西宏明経団連会長は「東日本大震災から8年が経とうとしているが、東日本の原発は再稼働していない。国民が反対するものは作れない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立などの設備納入業者が無理に作ることは民主国家ではない」と述べた。原発の経済合理性が失われる中、原発を推進するには国民の同意が必要だと、当たり前のことを述べた。

その中西会長が15日の記者会見で「再稼働をどんどんやるべきだ。ただ、自治体がイエスと言わない。それで動かせない。『自治体の説得は電力会社の責任』では片付かない。(公開で)討論しなければならない」と話している。年初の発言とは全く違う。1カ月も経たないのに180度違う経団連会長としての中西会長の発言を、どう理解すればいいのか。

中西会長の一連の発言は政府へのしっぺ返しだとする見方もあるが、私は「日立の英国での凍結は儲からないから中断した。政府が原発の輸出は国策だと言うからそれに乗った。原発を止める気はないが、再稼働に対して自治体や住民がうるさく言っている。大いに議論して住民を納得させて前に進めろ」というのが真意ではないかと推測する。引き続き、政府と中西会長の発言、動向に注目していきたい。(元瓜連町長)