《霞ケ浦 折々の眺望》1 霞ケ浦の魅力を発信しよう


沼澤篤さん

【コラム・沼澤篤】昨年も都道府県魅力度ランクで茨城県は最下位だった。県民はこの結果に慣れ、気にしない人が多い。一方、県民の所得額や県の経済力ではベストテン入りしている。農畜産業分野では常に上位。温暖で暮らしやすい、世界有数の科学都市がある、優れたスポーツ選手を輩出している、等々の事実が県民に余裕を与えているようだ。

魅力度調査方法の客観性に課題があるのではとも思う。しかし、茨城県民の郷土愛では、他県民に比較して不足するようだ。

その県の魅力度は、県民が郷土について熱く語る志の高さに比例するのではないか。観光地、名産品、景観、郷土の偉人、県民性などを語る時の、生き生きした表情に我々は引かれ、その県を訪問したいと思う。果たして、茨城県民は郷土の魅力を積極的に語ってきただろうか。県民が茨城県の魅力を発信する力が弱い。全国で唯一、県域テレビ局がない。

例えば、日本第2の湖、霞ケ浦の魅力を誇り高く語れる人がどれほどいるか。私は霞ケ浦の環境問題に取り組む市民活動に加わって30年が過ぎた。最初のころは、霞ケ浦への県民の関心の薄さに当惑した。ここ数年は、霞ケ浦環境科学センターの「霞ケ浦学講座」の講師を務め、「霞ケ浦の全体像を体系的に把握する」という目標を提示している。

毎回出席する熱心な受講者もおられる。問題は一般県民が霞ケ浦をよく知らないことである。昨年10月には第17回世界湖沼会議が当地で開催され、会期中は茨城新聞などで連日報道された。しかし、年末の「読者が選ぶ県内10大ニュース」に入らなかった。慨嘆せざるを得ない。

りんりんロード 地域活性化の新しい動き

滋賀県民は琵琶湖を誇りにしている。「湖国」「マザーレイク」とも呼ぶ。琵琶湖を愛する心が、水質、景観、信仰などの文化を守る行動に直結している。琵琶湖を汚す排水を出す事業者は警察に摘発され、条例による罰則が適用される。

琵琶湖では、延暦寺、石山寺、浮御堂、竹生島など、湖と信仰の伝統文化が今も息づいていることが評価され、日本遺産に登録された。日本発祥の国際会議である世界湖沼会議は琵琶湖から始まり、世界各地で引き継がれている。本県は滋賀県に多くを学んできたが、湖への姿勢は今も相当の較差(かくさ)がある。

しかし、悲観したものではない。筑波山地域ジオパークに霞ケ浦も指定され、各種啓発事業が行われている。つくば霞ケ浦りんりんロードは日本一長い自転車道として注目され、地域活性化への新しい動きが出てきた。先の世界湖沼会議では5カ所のサテライト会場が盛況だった。今年の「いきいき茨城ゆめ国体」ではセーリング競技の会場になる。

従来、自然保護や環境問題に取り組む市民が活動してきたが、霞ケ浦を主題にした絵画、音楽、写真、映画、文芸、歴史、民俗などの文化的な分野にいそしむ人々が少しずつ出てきており、期待したい。霞ケ浦が県民の誇りになり、その素晴らしさを発信すれば、魅力度ランクもアップするに違いない。(霞ヶ浦市民協会研究顧問)

【ぬまざわ・あつし】山形大学理学部生物学科卒。千葉大学大学院、東京大学大学院修了、理学博士。医薬品会社研究員、自然公園職員などを経て、1989年より霞ケ浦の市民活動に参加。霞ケ浦情報センター主任研究員、茨城大学農学部非常勤講師、同教育学部特任教授、霞ケ浦環境科学センター嘱託職員などを歴任。現在、(一社)霞ヶ浦市民協会・研究顧問。67歳。山形県出身、土浦市在住。