【コラム・室生勝】高齢者の集まりや朝のラジオ体操で顔なじみの近所の後期高齢者の中で、ひとり暮らしが3人、夫婦世帯が7組いる。彼らから時々、保健医療や介護の相談を受けている。そのうちのひとり暮らしの1人が要介護1、2組の夫婦世帯はそれぞれが要介護1と要支援2の夫婦である。

要介護1の3人からは、初めて介護サービスを利用する時に相談を受けた。勧めたのは訪問看護ステーションであった。それぞれの担当ケアマネジャー(介護支援専門員)のケアプランは、通所介護や訪問介護(ホームヘルパー)からなっていた。多くのケアマネジャーはデイサービス(通所介護)かデイケア(通所リハビリ)の通所サービスを、まず勧める。

送迎バスによるデイサービスとデイケアをご存じだと思う。訪問介護にはヘルパーが提供するサービスに掃除・洗濯・調理・買い物といった家事などの「生活援助」と、食事・排せつ・入浴の介助といった「身体介護」がある。

ケアマネジャーが通所サービス(デイサービス、デイケア)をまず勧めるのは、要介護者本人がサービス提供施設に出かけている間、介護者は休養できることと、要介護者が施設で入浴サービスを受けるので、自宅で入浴する必要が無くなり、介護者の負担が減るからである。

訪問介護はヘルパーという他人が自宅に入るので、本人も家族も抵抗感がある。大げさに言えばプライバシーをさらけ出すことになるからだ。まず、通所サービスに慣れてもらって、次に訪問介護や訪問リハビリ、短期入所、訪問看護等を勧めることが通常である。

訪問介護の生活援助を受けられる条件は、要支援1以上の認定を受け、原則として同居の家族がいないことである。ただし、特例の1つの「同居する家族がいても同居の家族も、要介護または要支援認定を受けている」に3組の夫婦は該当していたので問題はなかった。

後期高齢者を支える強い味方

後期高齢者になると、長年の持病、例えば高血圧や骨粗しょう症が引き金になって起こる併発症が起きやすい。高血圧と加齢による動脈硬化で、脳梗塞や心筋梗塞が併発しやすい。つまずいて転んだり、動脈硬化による立ちくらみで転倒し、骨粗しょう症があるため大腿(だいたい)骨頸部(けいぶ)骨折や脊椎の圧迫骨折で入院する場合が多い。経過よく退院できても、自宅でのリハビリを怠ると寝たきりになりやすい。

早朝や夜間に、本人自身や家族が持病の悪化や併発症の兆しに気づき、かかりつけ医に電話しようとも思っても、診察時間外で遠慮してしまう。後期高齢者の場合は、検査や治療が遅れてしまうと、取り返しがつかないときがある。

訪問看護を利用しておれば、事前に予防や起きたときの対応を指導してくれる。しかし、それでも緊急な場合には「緊急時訪問看護」というサービスがあり、電話連絡で夜間でも来てくれるし、電話相談ですむ場合もある。訪問看護ステーションは後期高齢者の在宅ケアを支えてくれる強い味方である。(高齢者サロン主宰)