《吾妻カガミ》44 クレオ問題は「地方政治」の好教材

キャンパスの講義棟

【コラム・坂本栄】前回コラム=11月5日=では「クレオ問題」の総括(問題点の指摘とメディアの役割)をしましたが、その展開と結末が「地方政治」講義のよい教材になると思い、今回もこの問題を取り上げます。したがって末尾のカッコ内は、経済ジャーナリスト兼NEWSつくば理事長ではなく、大学講師になります。

市民意識と議員判断にズレ

事例研究の1は、市民の意識調査と議員の投票行動とのズレです。市はアンケート調査を2度行い、市がクレオ再生にコミットした方がよいかどうか、市民の考えを聞きました。その結果は、「市の関与」「市の計画」に賛成の市民が80%超だったと報告されました。

ところが市は、数度の議会全員協議会で「市の関与」「市の計画」「賛成多数」について説明したにもかかわらず(多分、非公式に説得工作をしたにもかかわらず)、「市の計画」について議員の50%超が反対する(議案が否決される)と読み、関連予算案提出を諦めました。

市民の反対は20%以下なのに、議員の反対は50%以上というわけです。このズレは何なのでしょうか。学生には、①市の調査に問題があった(だから議員は信用しなかった)②議員が市民世論を無視した(次の選挙を意識してリアルな判断をした)―これらの片方か両方が考えられると講義します。

さらに「議員=政治家は、平均的あるいは全体的な世論よりも、自分の支援グループ、支援エリア、もっと言えば、議員の何らかの利害を優先するもの」とも補足します。

問題意識を持ち施策を吟味

事例研究の2は、市当局が立案する施策の妥当性についてです。講義では「選挙権がある皆さんは、問題意識を持ってその内容を吟味、おかしな点があれば声を上げなさい」と政治参加を勧めます。

市のクレオ計画のポイントは、市の中心街区にマンションが建つのは好ましくないと判断、建設を阻止するために市が介入する―という組み立てでした。まちづくり会社=第3セクター方式については、成功と失敗の例を挙げ、公と民の関係はどうあるべきか学生に考えさせましょう。(往々にして公はリスクに鈍感とコメントすべきか…)

旧市街区(つくば駅周辺は旧市街区、研究学園駅周辺を新市街区と定義)にマンションが建つことの是非。これは分かりやすく、面白いテーマです。学生にとっては、格好の頭の体操になると思います。

私は議論に1つの視点を提供します。都市は、交通インフラの変化や当初デザインの劣化によって、その役割が変化します。街間競争の相手が出現すればなおさらです。ですから、一時代の姿の思い出(ノスタルジー)に耽(ふけ)ると対応を間違えます、と。「さあ、皆さん、どんどん、意見を出してください」。(大学兼任講師)