水墨画のような光の重なりと奥行き 小倉康男さん写真展「和紙に写し込む」

自作がラベルに使われたワインボトルを手にする小倉さん=つくば市豊里の杜・ギャラリー夢工房

シャガの新芽をとらえた「一筆」

【池田充雄】つくば市豊里の杜のギャラリー夢工房で小倉康男さんの写真展「和紙に写し込む」が開かれている。展示作品は20点。モノクロが中心で、うち16点は和紙にプリントした。

ピントの浅いレンズを使い、ボケを生かして撮るのが小倉さんのスタイル。3年ほど前に和紙に出会い、表現にいっそうの広がりが出た。「やわらかさが違う。普通の焼き方では出ないものが出て面白い」と小倉さん。

作品の一つ「一筆」は、10センチほどに伸びたシャガの新芽をクローズアップでとらえたもの。何本も立ち上がった細い葉の、そのほとんどを白く光の中に溶かし込み、1本だけを際立たせた。タイトル通り、一筆でスッと掃いたような仕上がりは、抽象デザインのようでもある。

2点ある「いわがらみ」は、まったく対照的。1点は、葉の中央では葉脈までも繊細に解像し、外側へ行くに従ってやわらかくボケが広がっている。もう1点は、にじませた濃墨を思わせる深いぼかし。ピントはもはやどこにも合っておらず、深い霧の向こうに置かれたようなたたずまいがある。

小倉さんの職業は表装師。仕事を通じて横山大観の真筆などにも接した。そこから水墨画の、墨の濃淡だけで光の具合や空間の奥行きまでも描くさまに魅せられ、写真に取り入れてみようと思い、それが今の作風の始まりになった。

仕事のため決まった休みが取れず、自然と身の回りの風物へ目が向くようになった。特に、奥さんが育てた庭の山野草は大切な被写体だ。「鉢を少しでも動かすとバレてしまう」とスリルもある。このスタイルを貫いたおかげで、病を得てからも撮り続けられている。

身に付けた技術を生かし、額装にも一工夫。マット(作品を縁取る台紙)には、和紙を手でもんで細かいしわや折り目を付け、スプレーで着色。塗料の乗り方やしわの具合により、一つひとつに異なる表情が見られる。75歳、筑西市在住。

◆会期は7月3日(火)まで、午前10時30分~午後5時30分(最終日は3時まで)、つくば市豊里の杜2-2-5ギャラリー夢工房(電話090・4676・9623)。入場無料

中央の繊細さとボケが対照的な「いわがらみ」