上高津貝塚ふるさと歴史の広場
土浦市を始め県内各地の遺跡から出土した文字が記された土器などを展示し、文字に注目して遺跡の性格や社会的背景を探る企画展「文字が語るもの」が11日から、同市上高津の博物館、上高津貝塚ふるさと歴史の広場で開かれている。
文字刻まれた県内出土品約100点を一堂に
開館30周年記念として、土浦市内だけでなく、つくば、鹿嶋、石岡、水戸、古河、かすみがうら市など県内各地の遺跡の、文字が刻まれた出土品約100点を一堂に紹介する。
展示されているのは、墨で文字が記された土器、土師器(はじき)、文字が刻まれた板碑や銅製品、瓦など。県指定文化財や市指定文化財など貴重な資料もある。群馬県高崎市の特別史跡である飛鳥時代の石碑「山上碑」や国宝に指定されている福岡市史博物館所蔵の金印「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」なども写真で紹介されている。
同館学芸員の松田俊太さんは「出土品の文字から当時の土地名や社会の状況、人々の営みが推測できる」と話す。
文字から分かる当時の社会や暮らし
展示は5部構成で、出土品の文字から、役所や寺院だったことが分かる遺跡、当時の地名から地域の生業(なりわい)が推測できる遺跡など、「役所・寺院」「地名」「人物」「神・仏」「中世の祈り」の5つのテーマに分けて展示されている。
まず「役所・寺院」では、鹿嶋市の神野向(かのむかい)遺跡の、墨で文字が書かれた墨書土器「鹿島郡厨」を紹介。出土品から奈良・平安時代に鹿島郡の役所跡だったことが分かる。ほかに石岡市の常陸国分尼寺跡から出土した墨書土器「法華」など27点を展示する。常陸国分尼寺跡から出土した墨書土器には「法華」と書かかれており、平安時代の寺の名称が「法華滅罪之寺(ほっけめつざいのてら)」だったことがわかる。

「地名」では、地名に関係する墨書土器を5点展示している。霞ケ浦や筑波山、桜川と天の川に囲まれた一帯は中世、「南野牧」と呼ばれ、馬が飼育されていた。入ノ上遺跡群(土浦市沖宿)からは「青毛」と記された墨書土器が出土している。「青毛」は黒い馬を意味することから、平安時代にはすでに周辺で馬の飼育が行われていたと推測できるという。

「人物」では、書かれた文字から人物の活動が推測できる出土品を19点展示している。常陸大宮市の小野遺跡から出土した銅印「丈永私印」は、「丈部永○」という名前が彫られており、丈部永〇という人物が用いたとされる。

「神と仏」は、奈良時代から平安時代の集落から出土した、祭祀や仏教などに関連した墨書土器、木製品、素焼きの土器の土師器(はじき)など21点を展示している。寺畑遺跡(土浦市田村)から出土した墨書土器には「千手寺」と記されており、集落に寺があったと推測できる。さらに、僧侶の名が「案豊」だったと考えられる墨書土器も見つかっている。つくばエクスプレス沿線の島名・福田坪地区で発掘調査が行われた島名熊の山遺跡(つくば市)には、奈良時代に祭祀を行ったと推測できる水場跡が発見されている。水場跡からは「川」「山人」などと書かれた墨書土器が多数出土しており、集落内に川などに関わっていたとみられる特定の集団がいたと考えられるという。

「中世の祈り」では、法雲寺(土浦市高岡)や般若寺(土浦市宍塚)が所蔵する中世の文字が刻まれた石碑「板碑(いたぴ)」など4点を展示している。板碑は鎌倉時代や室町時代など中世、生前供養や追善供養に使われたとという。
松田さんは「開館30周年の企画として遺跡の文字に注目した。当時書かれた文字からどのようなことがわかるのか。皆さんにぜひ見ていただきたい」と語る。(伊藤悦子)
◆「開館30周年 第28回企画展『文字が語るもの』」は10月11日(土)~11月30日(日)まで、土浦市上高津1843 上高津貝塚ふるさと歴史の広場で開催。開館時間は午前9時~午後4時30分。休館日は月曜、月曜が祝日の場合は翌日。入館料は一般150円、高校生以下無料。11月3日(月)と13日(水)は無料。
▽記念講演会「中世の祈りのしるし-板碑・石塔の世界」を10月26日(日)午後1時30分~3時に開催する。講師は立正大学文学部准教授の本間岳人さん。
▽ワークショップ「消しゴムはんこを作ってみよう」を11月9日(日)午前10時~11時30分と午後1時30分~3時の2回開催する。講師はイータの小屋店主のかとうみのりさん。
▽ギャラリートークを10月12日(日)と11月22日(土)いずれも午後2時~2時30分まで開催する。