【コラム・中尾隆友】茨城大学で『人生を豊かにする働き方・生き方』という寄付講座を2年連続で行った。この講座は2014年に東京大学で行った村上憲郎氏との対談が下敷きになっているのだが、これから社会人になる学生たちに言いたかったのは、主に次の2つのことだ。
- 仕事の成否は「9割の戦略を持った努力」と「1割の運」で決まる。ただし、一生懸命に努力して、初めて運が呼び込める。努力しない者には、決して運は訪れない。
- 若いうちに自らの視野を大きく広げてもらい、人生ができるだけ豊かになる働き方を模索していってもらいたい。
しかし、学生たちのレポートをみてわかったのは、もっとも関心が高かったのが冒頭で余談として話した内容であったということだ。
すなわち、私が起業してからずっと実践してきた効率的な働き方についてだ。列挙すると以下の通りだ。
- 会社の近くに住んで、通勤になるべく時間をかけない。
- 頭の働きが鈍らないために、朝食は取らない。
- 頭の働きを良くするために、コーヒーを飲んで仕事を始める。
- 午前中の早い時間帯に集中して、頭を使う仕事をする。
伊藤忠が常態化した朝型勤務
人間は朝の早い時間帯に頭が一番働くから、午前中に集中して仕事をすることが効率的だ。しかし、首都圏や大都市圏に住む会社員の多くは、この頭が働くゴールデンタイムに満員電車で出勤するという、非常に効率が悪い働き方をしているのだ。
この問題に一石を投じたのが、伊藤忠商事だ。同社は2013年から早朝(午前5~8時)に勤務する社員に対してインセンティブを付与し、朝型勤務を常態化させた。その結果、同社は商社の中でトップの生産性を誇るようになった。
効率よく働くことは、自分のスキルを高めるとともに、生活の質をも高めることができる。茨城大学の学生たちが私の朝のルーティンに強い興味を持ったことは、その効果を詳しく説明しなくても、その重要性を感じ取ったからなのだろう。
そういった意味では、彼らの将来は明るいといえるし、できれば茨城経済の担い手として活躍してもらいたいところだ。(経営アドバイザー)