市長の海外出張めぐり
つくば市職員を名乗る人物から、市議の自宅に告発文書が郵送され、受け取った市議が自身のSNSで告発文書を発信したことをめぐって、市総務部長が4月4日「市職員は行政文書や行政情報を、上司の承諾なく、正当な理由なく、外部に提供してはならない」などとする通知を各部長らに出していたことが分かった。告発文書を受け取った酒井泉市議(新・つくば民主主義の会)は「総務部長の通知は市職員の公益通報に対する威嚇で、公益通報保護法に違反する」と指摘している。
告発文書は、つくば市長らの海外出張に高額な旅費が使われていることなどを指摘する内容で、今年1月18~25日まで8日間、五十嵐立青市長がスウェーデンとフィンランドに海外出張した際の旅行代金内訳表が同封されていた。ビジネスクラスの航空運賃や宿泊・滞在費用と、随行職員の費用など合計356万円の旅行代金が記され、添えられた手紙には「自分の私利私欲のために市の税金を使っているとしか思えません」などと書かれていた。
酒井市議は、旅行代金内訳表などの文書が間違いでないことを確認した上で、一部個人名などを隠して、2月に自身のX(旧ツイッター)で発信した。
その後4月4日、市総務部長名で各部長などに通知が出された。通知は、つくば市職員からの行政文書がSNSで発信される事例があったとし、不確実な情報と共にSNSで拡散される場合があり、地方公務員法の信用失墜行為の禁止に抵触する可能性があるので、各部長などは市職員に、安易に市民に行政文書を提供しないよう指導を徹底し、厳正な職務規律の保持に努めるよう求める内容だったとされる。
通知について、9日の市長定例会見で塚本浩行市総務部長は通知を出したことを認め、「注意喚起するために流したもの」だとしている。五十嵐市長は「市職員の公益通報には適切に対応している。(酒井市議に郵送された文書は)内容に問題が多く、公益に資するものではない」などとしている。
これに対し酒井市議は「(告発文書は)市長の海外出張の宿泊費が、市の規則に規定された上限の料金を超過するなど法令違反について指摘しており、公益通報に当たる。総務部長の通知は、市職員に通報を躊躇(ちゅうちょ)させたり、通報しないように仕向ける効果があり、職員を威嚇するもの。市長に都合の悪いことを公益通報した市職員を処罰するというのであれば大きな問題となる」などと話している。
一方、市長の海外出張については市議会2月定例会議の一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い、2365万円の市税を使っていたことを指摘している。今年1月のスウェーデンとフィンランドの市長の宿泊費については、1泊2万400円から5万4000円かかっており、市職員旅費規則に定められたヨーロッパ諸国の宿泊費規程の1泊1万8800円を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘していた。(鈴木宏子)