水曜日, 7月 2, 2025
ホームつくば有機イチゴの成果、成熟へ 地元農場と連携 農研機構

有機イチゴの成果、成熟へ 地元農場と連携 農研機構

イチゴは生のまま食べる人が多い。観光摘み取り園でもそのまま口に入れられる。だから化学農薬や化学肥料を使わない有機イチゴが、全くといっていいほど栽培されていないのが現状と聞くと驚かされる。甘くて大きい品種の開発に国内産地がしのぎを削るイチゴ王国ニッポンだが、実は現在の栽培法では欧米諸国に輸出できない作物なのだ。有機栽培という新たなアプローチで技術開発に取り組んだ農研機構(つくば市観音台)の研究が、地元の民間農場に実装されようやく結実しようとしている。

農作業が一年中続く作物

つくば市手子生のふしちゃんファーム(伏田直弘社長)、事務所脇に立ち並ぶ幅7メートル、長さ42メートルのビニールハウスでは畝(うね)による土耕でイチゴ栽培が行われ、収穫の最盛期を迎えている。品種は「恋みのり」、ハウスに一歩足を踏み入れると暖気と甘い香りに包まれる。

従来コマツナやホウレンソウなどを手掛けていた同ファームは2021年に、イチゴの有機栽培に着手。今季はハウスを3棟から11棟に増設、計25アールの広さで本格的な生産体制を整えた。しかし昨年の猛暑の影響から12月の収穫ができず、最大の商機となるクリスマス需要を逃した。25年に入っての厳冬期には燃料代がかさむ事態にもなったが、最近の気温上昇で生育のスピードも上がってきた。

農場長の大友遼平さんは「200グラム入りのパックを毎日2000パックつくる計画だが、今の時期は3000パック出荷できている」という。出荷先は主に都内のスーパー。通常のイチゴづくりを「慣行栽培」といい、「有機栽培」と区別する。「関東には他に生産者がおらず、有機というだけで、スーパーでは慣行栽培に比べて倍近い値段がつけられる。農場の実入りは倍にはならないが」、収量、価格とも手応えのある展開となった。

イチゴの収穫は5月ごろまで続き、暖かくなるこれからは病害虫対策に気が許せない。価格、収穫量とも年々上昇しているイチゴ栽培だが農家数が減少しているのは、農作業の大変さのためだ。有機イチゴともなると、育苗や農地の太陽熱消毒などに手間がかかり、丸々1年働き詰めとなる。この間、猛暑があったり寒波が襲ったり、病害虫の発生など自然現象との闘いに明け暮れる。

有機栽培の付加価値で収益性向上を目指したいが、ここにもハードルがある。国には「有機JAS」の検査認証制度があり、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことが基本。イチゴでいえば土耕栽培が条件だし、プランター栽培に比べると労働負荷は大きい。収量向上のための二酸化炭素発生装置をハウスに設置することもできない。

既存技術を組み合わせ体系化

有機イチゴ栽培に取り組む農研機構の須賀有子上級研究員=つくば市観音台

農研機構の中日本農業研究センター有機・環境保全型栽培グループの須賀有子上級研究員らは、有機イチゴの安定生産に向けた技術体系の確立に取り組んだ。2021年から5カ年かけての技術開発で、所内に約1アールのビニールハウスを建て栽培試験を行ってきた。

農研機構の成果である病害や害虫の抑制技術、土壌消毒による土壌管理など既存の技術を組み合わせて導入し、体系化を図る。ハウスでは定植の翌年5月まで収穫できる条件で、目標収量を10アール当たり4トンに設定した。イチゴは他の作物に比べて病害虫の種類が多く、栽培期間も長いため、安定生産のためには病害虫対策が最も重要という。

ハウスの中には紫外線ランプがつるされ、照射によりうどんこ病やハダニを防除する。ハダニはイチゴの葉の裏にいるので、そこに紫外線を当てるために畝に白い光反射シートを敷いている。

害虫抑制では天敵昆虫を利用した「バンカー法」が試され、効果を上げた。ハウスの一角にあらかじめオオムギの株を植え、アブラムシの天敵である寄生バチの飼育場所とする。害虫のアブラムシがハウス内に入り込んでくると、待ち構えていた天敵による寄生で防除される仕掛けだ。

これらにより23年度は大きな病害虫被害が発生することなく24年5月末まで収穫でき、2つの品種(恋みのり、よつぼし)で目標収量を達成できた。24年度は目標を上方修正している。須賀上級研究員によれば、今後、有機育苗や有機肥料による施肥管理技術に取り組み、有機イチゴ栽培のマニュアルを作成、普及を図る考えだ。

一連の研究成果を実装する圃場が同ファームという位置づけで、農研機構の研究員が訪問し、病害虫や生育、また生産コストや収益など経営面の調査を行っている。

そもそも「恋みのり」は農研機構九州沖縄農業研究センターで育成されたイチゴ(2018年品種登録)。比較的大粒で形、着色、艶など果実の揃いが良いので、選別やパック詰めの調製作業を軽減できるという特長がある。皮が硬めで傷みにくく、日保ちするため広域流通にも向いている。同ファームでは、有機JAS認証も取得。有機であることが必須となる将来の輸出戦略も視野に入れている。(相澤冬樹)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

昨夏の主力残るもチームを再編 霞ケ浦 高橋祐二監督【高校野球展望’25】㊤

第107回高校野球選手権茨城大会が5日開幕する。今年も、強豪の霞ケ浦、土浦日大、常総学院の名監督3人にインタビューした。第一弾は昨夏の茨城大会を制し、甲子園で念願の初勝利を挙げた霞ケ浦高校の高橋祐二監督。注目の指揮官に、新チームの仕上がりや今シーズンへの手応えを語ってもらった。 OBが活躍 ー昨年甲子園で初めて1勝を挙げました。それも相手は名門の智辯和歌山です。この結果、チームや学校、周辺の地域にどのような変化がありましたか。 高橋 中学チームから今までにない数の問い合わせがあります。智辯和歌山に勝つってことはそれだけすごいことなんだと、それくらいのインパクトだったのだろうと思います。 ープロ野球でOBが目覚ましく活躍しています。 高橋 千葉ロッテマリーンズの木村優人が5月にプロ初勝利を挙げ、先日は阪神との交流戦で高校時代にたどり着けなかった甲子園球場で先発を任されました。また、広島東洋カープの遠藤敦志は球速が最速151キロまで上がったそうです。つい先日1軍に呼ばれたものの雨で流れました。また近いうちにチャンスがあるのではないかと思っています。先輩の活躍が後輩たちの刺激になっています。 無駄失点が多い ー今年のチームの強みをお願いします。 高橋 去年の甲子園メンバーが、ピッチャー、キャッチャー、ショート、センター、レフトと、5人残っています。秋は準優勝になって関東大会に進出しました。一冬越えてその他の選手の成長もあり、ポジションをチェンジするなどチームをつくってきました。 しかしまだ私が求めるレベルまで達していません。特にディフェンス面は正直いって不安な部分が大きいです。無駄な点数を与えない守りの野球がうちの信条なのですが、今年は無駄失点が多い。作戦面でも、勝てるチームの時は監督の意図を選手がよく理解してくれているのですが、今年のチームはちぐはぐなことがあります。大会までには私の考えを浸透させたいと思います。 ー打撃陣の鍵を握る選手は? 高橋 荒木洸史朗と大石健斗を上位に据えていて、この2人が得点に絡んでいけたらと思っていますが、チーム全体として調子が上向きとは言えません。昨年もこの時期に調子が上がってきませんでしたが、かなり練習で追い込んで大会を迎え、勝ち上がるたびに奮発して頑張ってくれて甲子園の切符を手にすることができました。今年も同じように、大会を通して調子が上がってきてくれたらと思います。 2番手に伸びてもらうこと必須条件 ーエース左腕の市村才樹選手はどうですか? 高橋 市村は体重が増えてスピードもアップしましたが、スピードを追い求めて全体のバランスを崩して思うようにいかない時がありました。まさに春の県大会で明秀学園日立に痛打されました。 その後、やはりスピードではなく、本来の持ち味であるボールのキレを意識するようになり、崩していたバランスが整ってきました。最近では県外の強豪校とオープン戦をやってもまとまった投球ができています。 ー2番手投手に名前が挙がるのは? 高橋 右腕の稲山幸汰です。昨年うちが甲子園に行けたのは、調子が悪いときも2番手として使い続けていた眞仲が、県大会から甲子園にかけて覚醒して救世主になったことが大きな理由の一つです。今年うちが勝ち上がるためには、稲山にもっともっと伸びてもらうことが必須条件です。眞仲のような覚醒を期待して送り出したいと思います。 新キャプテン誕生 ー秋と春の戦いから、夏に向けて何か変えたことなどありましたら教えてください。 高橋 春を終え合宿を行う中でスタッフと相談し、夏には新しいキャプテンで臨むことになり、昨年の甲子園を経験した鹿又嵩翔をキャプテンに指名しました。まだキャプテン就任から2~3週間しか経っていないのですが、彼の持ち味を発揮してチームをうまく回してくれていると感じます。 ー近年、東北地方出身の選手が多いですが、理由は? 高橋 コーチでOBの白川拓海先生が仙台大学出身で、東北地方の野球指導者とつながりがあって、ありがたいことにうちを薦めてくれることがあります。最近では秋田県や山形県出身の選手がうちの門を叩いてくれています。 一つも気が抜けない ー今年の茨城の勢力図はどのように見ていますか? 高橋 春に優勝した常総学院が頭一つ抜けた存在だと思います。 ー組み合わせの所感をお聞かせください。 高橋 Aシードのつくば秀英はもちろん、Cシードの土浦日大にDシードの守谷に加え、ノーシードの鹿島学園や日立一、下妻一、水戸商など、上位常連校がひしめく、一つも気が抜けない厳しいゾーンです。投手陣には頑張ってもらって、打線の奮起を期待するしかありません。 甲子園で二度、三度と ー最後に、応援してくれるファンや地元の方々へメッセージをお願いします。 高橋 皆様に支えていただき、去年甲子園で初めて校歌を歌うことができました。日本全国の霞ケ浦高校の卒業生2万9000人に、少しでも勇気と元気を与えられたことと、やっぱり応援してくれている地域の方や、霞ケ浦高校のファンの方に、少しでも恩返しができたかなと思っています。 今年も甲子園で一度と言わず、二度、三度と勝って、全国に霞ケ浦高校の校歌を届けたいと思っています。まずは茨城大会で優勝できるよう精一杯戦います。 【取材後記】昨年は良い意味で開き直って大会を迎えた霞ケ浦高校が見事に茨城大会を制し、甲子園で歴史的な1勝を挙げた。一方で、今年は指揮官の言葉からもわかるように、ディフェンス面や戦術の浸透といった点で、チームづくりに難しさを抱えている様子がうかがえる。しかし、昨年もこの時期にはチームの調子が万全とは言えなかった。そこから大会を通して一体感を深め、結果として覚醒した姿は記憶に新しい。今年も夏本番でどのような進化を遂げるのか、引き続き注目していきたい。(伊達康)

愚痴が問題解決を遠ざける《続・気軽にSOS》162

【コラム・浅井和幸】私が代表理事をしている一般社団法人「LANS」という居住支援組織があります。住宅確保要配慮者=ざっくり表現するとアパートを借りづらい人=を支援する法人です。暴力から避難してきた人、障害者、高齢者、生活困窮者、仕事が続けられず社員寮を出なければならない人、車上生活を止め部屋を探している人などをサポートします。 6月現在、茨城県内では11カ所の法人が県から指定されています。全国では800カ所を超えていると思います。LANSは県第1号指定法人で、7月から8期目を迎えます。自治体や福祉事業者、病院や警察、不動産屋などから依頼を受けたりして、居住支援をしています。現在では10名ほどの要員が支援に当たっています。 支援には必要な知識もあり、勉強しながら進めなければなりません。分からないことがあって当たり前ですし、その時にならないと分からないこともあります。その場合、何らかの支障が出て支援できなくなるので、そこでやっと知らないことを知ります。例えば、インターネットを使った住まいの検索方法、生活保護や障害福祉の手続きなどです。 支援に行き詰まれば(できればその前の行き詰まりそうと感じたとき)、浅井に報告や相談をしてほしいと伝えています。それでも、なかなか相談に来ることが少ないので、こちらから聞いてみて支障が見つかることも多々あります。支援員の皆さんは素直で、ちょっとしたことでも相談したいと考えてはいるようですが、なかなか相談に来ません。浅井が忙しいと思い遠慮しているのでしょうか? 皆で愚痴に共感し慰める どこで相談が止まっているのか、気づいた点がありました。それは、支援に何かしらの支障が出てきたとき、支援員同士で支援について愚痴を言い、それを共感の気持ちで受け止め、慰めることで話が止まっていることでした。例えば、法律的な問題とか、福祉のシステム的な問題とか、就労するための年齢的な問題とか、〇〇市には部屋の空きがないという不動産屋の話を鵜呑みにして…。 そこで気持ちがすっきりして、解決方法を考えることなく、支援に当たる。気持ちが楽になっているから支障への感受性が鈍くなる。今起きていることは仕方がないと思い、相談から遠ざかるという悪循環が起きていました。 LANSでは月1回、全体会議を開きます。そのとき、支援員に上記のことを挙げ、「愚痴を言って気持ちが楽になっているのではないか。愚痴が出たタイミングが、浅井やこの会議で報告するタイミングだ」と伝えました。一般の生活では愚痴を言うことも大切です。しかし、それで問題解決から遠ざかっているかも知れない―と考えてみるとよいですよ。(精神保健福祉士)

原因は下水道管の老朽化と硫化水素 土浦 道路陥没事故

土浦市西真鍋町で6月12日発生した道路陥没事故(6月14日付、17日付)で、同市は7月1日、陥没の原因は、埋設されていた下水道管の老朽化と、下水から発生した硫化水素の影響だと断定し発表した。硫化水素の影響で鉄筋コンクリート製の下水道管の腐食が早まって損傷し、管の上の部分の土砂が損傷箇所の下水道管に流入し、地中に空洞が生まれたためという。 市下水道課によると、損傷した下水管は6月28日に補修工事が完了した。一方、道路の通行止め解除がいつになるかは現時点で未定という。 硫化水素が発生し下水道管が損傷したことが原因の道路陥没事故は、今年1月、埼玉県八潮市でも発生し、トラックを運転していた74歳の男性が死亡している。 損傷した土浦市の下水道管は、44年前の1981年に敷設された。老朽化に加え、現場から約1.6キロ離れた塚田ポンプ場から圧力をかけて送水し、水がはきだされる下流だったことから硫化水素が発生しやすかったとみられている。 下水道管は直径60センチで、地面から4.4メートル下に埋設されている。道路は長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没し、約33立方メートルの土砂が流出した。 道路陥没箇所の下水道管は2カ所に損傷があり、修復工事では、損傷が大きかったマンホールに近い西側について下水道管を長さ1.5メートルにわたって交換した。東側は幅約40センチの損傷部分を修復した。 現在、土を埋め戻す作業中で、今後、路面にアスファルトを敷設する。さらに陥没箇所の安全や周辺の安全を確認した上で、通行止めを解除する予定という。 今後の対策については、市が定期的に実施している道路管理パトロールの際に、古いマンホールについてはふたを開け、目視で土砂などがたまっていないかを点検するとしている。

軽井沢高原文庫館長の大藤敏行さん《ふるほんや見聞記》6

【コラム・岡田富朗】大藤敏行さん(62)は埼玉県の出身。筑波大学を卒業後、1985年、長野県軽井沢町に開館した軽井沢高原文庫の学芸員に着任しました。同文庫は、作家の中村真一郎さんを中心に、堀多恵子さん(堀辰雄夫人)、室生朝子さん(室生犀星長女)、『新潮』元編集長の谷田昌平さんらに力添えを得て、初代館長に大妻女子大学教授だった池内輝雄さんを迎え、スタートした施設です。 1992年に大藤さんは同館の副館長に、1996年には深沢紅子野の花美術館の館長に就任しました。そして2023年には、池内輝雄氏、中村真一郎氏、加賀乙彦氏らが歴任してきた軽井沢高原文庫の館長に就任されました。 大藤さんは30年ほど前から一般向けの文学散歩なども継続的に行っています。2023年には、軽井沢町制施行100年および堀辰雄来軽100年を記念して、堀辰雄文学記念館で「堀辰雄と歩く軽井沢」が開催されました。これに関連する緑陰講座では講師として招かれ、「堀辰雄と軽井沢」と題し、『不器用な天使』から『大和路・信濃路』までの数多くの作品の初版本を紹介するとともに、堀辰雄が所有していた蓄音機を使用して『ブランデンブルク協奏曲』を鑑賞するなど、貴重な体験ができる講座が開催されました。 2024年には、田端文士村記念館で、「室生犀星・芥川龍之介・堀辰雄の交友と文学~軽井沢を中心に~」と題した講演会の講師も務めました。この講演では、田端で親交を深めた室生犀星、芥川龍之介、堀辰雄の3人が、1925ごろ軽井沢で共に過ごし、交友を深めた話や、彼らの友情と創作について講演されました。 生誕100年 辻邦生展-軽井沢と物語の美- 軽井沢高原文庫では今年、「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美―」が開催されます。人間精神の高貴さを物語性の中で追求した作家・辻邦生(1925~1999)は、今年生誕100年を迎えます。『安土往還記』『嵯峨野明月記』『背教者ユリアヌス』『春の戴冠』『西行花伝』などの歴史小説は今も多くの読者に愛されています。山荘のあった軽井沢の地で、自筆原稿、創作メモ、スケッチ、書簡、蔵書、遺愛の品などの多彩な資料約250点を通して、辻邦生の生涯と仕事を知ることができます。 今回の展示で特別協力してくださる学習院大学史料館(霞会館記念学習院ミュージアム)では、辻邦生より寄贈された自筆原稿、創作ノート、書簡など、多数の資料が収蔵されています。学習院大学史料館の協力により、辻邦生ゆかりの地で生誕100年を記念した展示が行われます。各館それぞれのテーマに合わせて、学習院大学史料館の資料が出品される予定です。(ブックセンター・キャンパス店主) 軽井沢高原文庫「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美-」展:7月19日(土)~10月13日(月・祝)