脱炭素先行地域をPR
つくば駅前のつくばセンター広場で21日まで3日間開催されているイベント「つくばクラフトビアフェスト2024」の会場で、最新技術を使い、水素を金属結晶のすき間にためて運ぶ「水素吸蔵合金配送システム」による水素発電と、最短1日で生ごみを分解する「スマートコンポスト」による生ごみ全量堆肥化の実証実験が実施されている。
つくば駅周辺地域が昨年、2030年度までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「脱炭素先行地域」に選定された(23年12月12日付)ことから、市民に脱炭素先行地域を知ってもらおうと、企業からの提案を受けて、市が約270万円で取り組んでいる。
水素吸蔵合金配送システムは、都市ガスや天然ガス、液化石油ガスなどを原料に製造した高純度の水素を、ナノ化鉄チタン合金のタンクに高密度でためて、イベント会場に運び、会場でタンクの圧力を調整して水素を放出し、燃料電池で発電する仕組み。ビアフェスト出店店舗53店のうち、北側に出店している7店のテント7張りで3日間使用される照明やビールサーバーなどの電気を水素発電でまかなう。出力は2キロワット、3日間で計24キロの二酸化炭素排出を削減できる見通しという。
脱炭素化先行地域の取り組みとして市は、水素発電の導入を事業の一つに掲げている。今回、製造した水素は化石燃料がベースだが、将来は再生可能エネルギーなどを使って発電に伴う二酸化炭素排出実質ゼロを目指す。
今回のイベントで水素発電による電気の供給を受ける7店舗の一つで、静岡市から出店しているビール醸造所「ホースヘッドラブズ(HORSEHEAD LABS)」取締役の市瀬健一郎さん(36)は「(水素発電だと)知らずに電気を使っていた。不具合もなく、水素発電だと思いもしなかった。そういう技術があるなら広めていってほしいと思う」などと話していた。
生ごみの堆肥化は、縦約1.5メートル、横約1メートル、奥行き約90センチのコンポストに、イベントで発生した生ごみを投入し、全量を堆肥化する仕組み。特別に開発された微生物群が生ごみを分解して最大98%まで減らし、最短1日で堆肥にする。上部には太陽光パネルが設置され、生ごみ投入量、分解量、分解率などのデータをパソコンなどで同時確認できる。市ではイベント終了後も約1カ月間ほどつくばセンタービル内のバックヤードに設置し、飲食店などで発生する生ごみを堆肥化して、センター広場のプランターなどで堆肥を利用する予定だ。
市環境政策課の渡辺俊吾課長は「こういうイベントを通して脱炭素先行地域を皆さんに知っていただき、一緒に(脱炭素社会を)つくっていければ」と話している。今回の実証実験が成功すれば、秋にセンター広場で開催されるイベントでも実施したいとしている。
◆「つくばクラフトビアフェスト2024」は19日(金)から21日(日)までの3日間、つくばセンター広場で開催。主催はつくばクラフトビアフェスト実行委員会。各地のビール醸造所や飲食店約50店が出店し300種類以上のクラフトビールを楽しむことが出来る。環境負荷を低減するため会場ではほかに、繰り返し使えるリユースカップ、リサイクル可能な容器やフォーク、スプーンなどを導入している。開催時間は20日(土)が午後10時まで(ラストオーダーは9時まで)、21日は午前11時~午後6時(同5時)まで。