2日から始まった土浦市立博物館(土浦市中央、糸賀茂男館長)の夏季展示で、明治時代の古レールを転用した橋脚部材が鉄道遺物として紹介された。2025年の土浦駅開業130周年を前に、同館では初めての古レールの保存と展示になったという。
古レール転用の部材は、同市土浦市富士崎2丁目と小松ケ丘町とを結ぶ人道こ線橋、通称「二番橋」の架け替え工事に伴い発生した。NEWSつくばの取材(22年9月24日付)をきっかけに博物館が調査に入った。
二番橋は市道で、土浦駅寄りの一番橋の撤去とセットになった工事が行われ、23年12月に開通(23年12月7日付)した。着工時点では古レールについて記録調査を行う考えはなかった。通常レールの腹部には刻印が押されている。レールの種類、製造年月、製造者名などが分かる。
国鉄常磐線の前身である日本鉄道土浦線が開業した明治28(1895)~29(1895)年に建設された可能性があるとNEWSつくばが照会し、博物館は市道路建設課に調査協力を要請、解体資材の置き場で、適宜な長さに切り出された古レールから製造年などの刻印を調べた。
その結果、大小37本の古レールに刻印が見つかり、製造年が分かるのが11点あった。内訳は明治18年(1885)1点、同19年(1986)3点、同26年(1893)1点、同27年(1894)6点。発注者として日本鉄道を示す「N.T.K.」、官営鉄道を示す「I.R.J.」が確認できた。
日本鉄道発注と見られるレールには「UNION D 1886 N.T.K.」と刻印があった。ドイツのウニオン社が製造元で、製造年は1886年とわかる。明治期のものと判明したことから、博物館では鉄道遺物として保存するため2本のレールにさび止めなどの処理を行い、今回の展示に加えた。
古レールは「軍艦型」と呼ばれた旧土浦駅舎にも構造体として多数使われていたが1980年代の建て替えでは保存されず、今回が初めての資料化という。
ただ、これらの古レールがいつから二番橋に用いられたかは明らかでない。博物館の野田礼子学芸員は「常磐線の土浦-荒川沖間が複線化されたのが大正11年(1922)で、小松丘陵の切り通しもこのとき拡張され、二番橋も架け替えられた可能性があり、古レールもこの時持ち込まれたのたのではないか」という見方をしている。(相澤冬樹)
■土浦市立博物館(土浦市中央1丁目、電話:029-824-2928)夏季展示は9月29日まで。「霞ケ浦に育まれた人々のくらし」を総合テーマに、通年展開する企画の第2シーズンで、古代から近代にいたる各種資料が展示される。八幡脇遺跡(同市おおつ野)で出土した灰釉(かいゆう)陶器の短頸壺(10世紀)や土浦藩士で地理学者の山村才助の著した「西洋雑記」(19世紀)などの展示物をみることができる。入館料:一般200円(税込み)、高校生以下無料