月曜日, 6月 16, 2025
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「ロシア凍結資産」の行方《雑記録》61

【コラム・瀧田薫】戦争と経済とは切っても切れない関係にある。戦争当事国の経済力は、ほぼその国の戦争遂行能力と一致する。ウクライナとロシアの経済力を比較すれば、両国の軍事力の差が把握できる。実際に、GDP、軍事費、そして軍事費の対GDP比―この3項目を取り上げて比較してみる。

具体的な方法としては、ロシアによるクリミア半島侵攻の年(2014年)以前の2013年度と、ロシアがウクライナ侵攻を開始した2022年度におけるそれぞれの数字を比較する。つまり、両国の平時と戦時で数字がどう変化するかを見る。(単位は100万US$。出典はGDPはIMF、軍事費は世界銀行。なお「グローバルノート」を参照)

数字は残酷なほどロシアとウクライナの経済力の差を示している。参考までに、ウクライナの軍事費と対GDP比について、侵攻前(2021年)と侵攻後(2022年)の数字を欄外に並べてみた。すると、侵攻が始まった年のウクライナの戦費は平時の約10倍に暴騰していた。米欧の軍事専門家の当時の心境は「てのうちはみつ 叶うべしとも思えず」ということではなかったろうか。

欧米の各国政府、特に米国はウクライナの窮状を救うために一つの原則を定めた。ロシアを追い詰めれば、プーチンは核の使用をためらわず、それが第3次世界大戦につながりかねない。したがって、NATO軍がロシア軍と直接干戈(かんか)を交えることは絶対に避けねばならない。その代わりに、ウクライナに対し武器、弾薬その他の物資を大量に供与し、さらに、ロシアを経済面から攻撃することにした。

制裁は「情報とネットワーク」重視

2022年2月以降、欧米各国は、ロシアに対する経済制裁を矢継ぎ早に打ち出した。「国際的な決済ネットワーク・SWIFTからロシアを排除」「ハイテク製品のロシアへの輸出禁止」「原油や鉄鋼製品などの輸入禁止」「ロシアの資産+オリガルヒの資産凍結」などである。

制裁の中味について注目すべきは、特に米政府において「モノや製品」よりも「情報、データそしてデジタルネットワーク」が重視されたことだ。最近、「武器化した経済」といった言葉をよく耳にするが、そこにも「情報とネットワーク」重視の感覚がある。

有り体に言えば、米政府はクライナ戦争を「武器化した経済」の実験場としている。開発の最終目標は、米中間の覇権争いの舞台にハイスペックな衣装をまとった「武器化した経済」を登場させることである。6月11日、ブリュッセルの主要7カ国(G7)が取り決めた「ロシア凍結資産の活用策」は「武器化した経済」のニューモードを予感させる。(茨城キリスト教大学名誉教授)

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道路が陥没 下水道管損傷か 土浦

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テラス空間や屋根付スペースなど検討 中央公園改修へ つくば市が基本計画案

22日まで意見募集 つくば市が、つくば駅前の中央公園(つくば市吾妻、3.8ヘクタール)にテラス空間や屋根付きスペースを新設するなど同公園をリニューアルする基本計画案を策定し、市民から意見を募集している。リニューアル案は、池に面し噴水やつくばエキスポセンターのロケットを眺めることができる場所にテラス空間を整備する、芝生広場の一部に屋根付きスペースを整備する、つくば駅に隣接する南入口にロゴモニュメントを設置するーなど。 中央公園はTX開業後の2010年に、つくば駅に近接する南入口エリアが改修され、ノーベル賞受賞者の業績とメッセージに触れることができる科学モニュメント「未来への道」が整備された。今回のリニューアル案は2010年に次ぐ大規模改修になる。 整備計画案は①つくば駅に近接する南入口エリアについて、フォトスポットともなるロゴモニュメントを設置する、つくば駅からの最短ルートとして本来の園路ではない場所に通り道ができ滑りやすくなっていることから園路を再整備する、ノーベル賞受賞者のモニュメントを再配置し、休憩や待ち合わせのための座れる場をつくる。 ②芝生広場については、整備を検討している屋根付スペースは小規模な催しができるよう電源設備を検討する、芝生部分と樹木部分の間に座れる場を設置し緩やかに区切る③図書館や美術館向かいの遊歩道に面した木陰の空間については座れる場を整備する。 ④池に面した南側のエリアについては、噴水とロケットを同時に眺めることができる公園で一番のビュースポットであることからテラス空間を整備する⑤市民ギャラリーがあるレストハウスは、本館は展覧会等が開催されない日は休憩場所として開放する、本館室内から池の景色を眺められるよう窓際のパネルを可動式に変更する、隣接の別館はチャレンジショップや懇談会開催などさまざまな市民グループが使用できるレンタルスペースとし、使用されない日は休憩スペースとして開放する。 ⑥つくばエキスポセンター向かいの池東側は、低木を伐採したり最小限にして座れる空間を広くする⑦江戸時代後期の古民家を移築したさくら民家園はさらなる利活用を促進する仕組みを検討するーなど。 ほかに、サインや標識、照明はこれまで随時、修繕したり追加設置してきたためデザインがばらばらであることから、統一したデザインにする、植栽は視認性や安全性向上のため中低木は伐採し高木は保全する、トイレはだれもが使いやすいよう改修する、などが計画されている。 市民の意見を聞きながら進める リニューアルについて同市学園地区市街地振興課は、22日まで市民の意見を募集し、市民の意見を聞きながら進めていきたいとしている。 今後のスケジュールは、今年度中に基本計画を策定、2026年度に基本設計や実施設計をし、27年以降順次、工事を実施する予定だ。工事期間や事業費がいくらになるかについては、まだ計画内容が定まっていないため現時点で未定という。 科学万博の40年前に開園 中央公園は、広い水面や森をイメージする緑、明るい芝生など周辺の文化施設と調和した広がりを感じさせる空間として計画され、つくば科学万博が開催された1985年に開園した。開園から40年経ち、老朽化部分への対応のほか、時代と共に変化する市民ニーズに対応するため、24年度にリニューアルに向けた調査を実施。今年1月、リニューアルに向けた基本的な考え方を公表した上で、基本計画案をまとめたとしている。 同公園では現在3期目の五十嵐立青市長が就任してからこれまで、2018年と19年に社会実験としてバーベキュー(BBQ)とカヌー体験を実施(18年8月3日付)。18年度は事業費約900万円で8月に14日間開催し、BBQは175組925人(1日平均12.5組66人)、カヌーは355人(同平均25.3人)の利用があった。19年は事業費約660万円で8月に17日間開催し、BBQは120組635人(同平均7組37.3人)、カヌーは190 人(同平均11.1人)の利用があった。20年8月には活性化と水質浄化を目的に約3760万円で池に噴水を設置した(20年8月25日付)。(鈴木宏子) ◆中央公園リニューアル基本計画案は市ホームページで公表し、22日(日)まで市ホームページで意見を募集している。13日(金)から19日(木)午前10時から午後4時まで中央公園内レストハウス本館でオープンハウスを開催、市職員に質問したりアンケートを出すことができる。