今年10月のつくば市長選・市議選で、市が市北部の一部地域で実施するとして当初予算を計上した、投票箱をワゴン車に積んで自宅前まで行く「オンデマンド型移動期日前投票」について、市選挙管理委員会(南文男委員長)が「一部地域で実施することは公平性の観点から時期尚早」だとの見解を示したのに対し(5月30日付)、インターネット投票などスーパーシティ国家戦略特区に関する取り組みを担当する松本玲子副市長と市政策イノベーション部は3日開かれた市選管で、今度は、自力での歩行が難しい要介護3と4の高齢者などを対象に市全域でオンデマンド型移動期日前投票を実施する計画に改め、再提案した。これに対し市選管は同日、再び「(10月の実施は)時期尚早」だとする結論を出し、現時点でオンデマンド投票を実施するのか否か、見通せない状況となっている。
市選管の南委員長は「全市に広げるなら、本当に(オンデマンド投票を)望んでいる人がどれくらいいるのか、(市が全額助成するタクシー券を利用した)福祉タクシーで救われるのか、数字が把握できていない。オンデマンドを全市で実施するにはまだまだ解決しなくてはならない課題が山積しており、もう少し(他地区で)実証実験を重ねて、課題を解決できてから」だとしている。
一方、市全域での実施を再提案した市科学技術戦略課の中山秀之課長は取材に対し「(時期尚早だという)理由を確認してないので、それに対応していけるよう検討したい」としている。
新たな提案は、車いすのままワゴン車内に入り投票できる福祉車両2台が、市全域の希望者宅を1日8件程度巡回し、計100人程度を対象に実施するというもの。必要な場合はヘルバーが自宅から福祉車両まで連れていくなどする。
これに対し市選管の委員からは「全市の申込者宅を現地調査し(投票したい日時の)希望を聞くということだが、かなりの労力が必要になる。できるのか」「(新たに計画している)タクシー助成を使って、福祉タクシーや介護タクシーを利用して期日前投票所に行くことはできないのか」「雨が降って車いすでの移動に時間がかかったり、(近所の人などが)時間ぎりぎりに投票に来て、時間オーバーした場合、次の投票所(申込者の自宅)に間に合うのか」「(9月の自民党総裁選後の衆院解散・総選挙の見方がある中)国政選挙と同時になった場合は想定しているか」などの質問が出た。
市科学技術戦略課の中山課長は「(時間オーバーした場合は)予備の車両で次の投票所に向かう」、国政選挙との同時選挙の想定については「同時になった場合は(国政選挙などの)投票箱を別の車両に持ち込む」などと回答した。
一方選管の各委員からは「オンデマンド投票をいくら重ねてもインターネット投票にはつながらないのではないか」「オンデマンド投票は、インターネット投票がスタートだが、何でここまで、次から次へと手法を変えて執着するのか、理由が分からない」「これから先(ネット投票の実現まで)どれくらいかかるか見通せない中、どうして固執するのか理由を知りたい」「結論に合わせて、無理につくっているように思える」などの意見も出た。
オンデマンド型移動期日前投票は、市がインターネット投票導入につながるステップだと位置付け、今秋の選挙で実施するとしている。(鈴木宏子)