金曜日, 5月 17, 2024
ホームスポーツ能登の高校生に元気を 筑波大バドミントン部が練習会 OBが呼び掛け 

能登の高校生に元気を 筑波大バドミントン部が練習会 OBが呼び掛け 

筑波大学(つくば市天王台)バドミントン部の部員らが3月30、31日の2日間、能登半島地震で被災した高校生を対象に、石川県金沢市の県立工業高校体育館でバドミントン練習会を開催した。同大バドミントン部OBで、被災地の珠洲市で高校教員として勤務する清水亮輔さん(27)が「被災した子どもたちにバドミントを練習できる機会をつくれないか」と呼び掛けたことがきっかけになった。

清水さんは石川県出身。「震災後、部活動がしたいという生徒がいる中で、体育館が自由に使えないのが現状」という。清水さんによると、能登地区の生徒たちは、現在オンライン授業を活用するなど、学習機会を最低限確保できている一方、部活動に関しては、地震による体育館損壊の影響で、一部のスペースしか利用することができない。バドミントン部の生徒を含め、部活動は週に1回程度。ライフラインである水道はいまだ復旧しておらず、普段通りの生活が取り戻せない状況下で、生徒は自身の進路や大会に向けた練習に向き合っている。

清水さんの呼び掛けをきっかけに、石川県高体連バドミントン専門部、同県バドミントン協会と、筑波大バドミントン部が協働し、開催に至った。清水さんを中心に、能登地区周辺の高校に声を掛け、能登半島の県立輪島高校、七尾高校、飯田高校などのバドミントン部に所属する1〜3年生の生徒が参加した。当日はバスを利用して同校体育館に集まり、両日で延べ150人が練習に励んだ。

筑波大から派遣された部員有志は新入生も含めて12人。部員らで考えた練習メニューをもとに、バドミントンコート6面分ほどの広さの体育館で、男女シングルス、ダブルスなど種目別に分かれて練習を指導した。

練習会に参加した能登地区の高校生と筑波大生(同)

清水さんは、同大バドミントン部に対して「ただ単に活動の場所を提供することだけでなく、参加した高校生が今まで以上にバドミントンに熱中できるよう接してもらうことを期待していた」と語り、「学生のおかげで、実際に参加した高校生の生き生きとした表情や、笑顔で楽しむ様子を見ることができた。制限がある中での生活だが、気が紛れたのではないか。石川のために時間を割いてもらってとても感謝している」と話した。

同大部員らの交通費や宿泊費などの開催費用は「がんばろう能登プロジェクト寄付金」と題して同部が寄付を呼び掛けた。約3週間で個人や法人などからおよそ75万円が集まり、練習会では、参加した高校生に対し、メーカーや有志らによるバドミントン練習用具の提供も行われた。

同大体育系助教でバドミントン部顧問の吹田真士総監督は「高校生には、バドミントンに取り組む瞬間だけは、日常を忘れて夢中になってもらえるよう心掛けて接した。この活動が、高校生たちの背中を押す一歩になれば」と話した。

同大大学院1年で部員の服部嶺さん(22)は石川県出身。バドミントンを通して地元に貢献したいという思いで参加した。「参加した生徒から『震災後初めてラケットを握った』『週1回1時間程度の練習しかできない』などと聞き、バドミントンが練習できる環境が整っていない現状を目の当たりにした」と述べ、「大変な時でも必死に1日を生きようとしている高校生の姿を見て、とても勇気づけられた。今後も地元やバドミントン界のためにできることを考えていきたい」と話した。

同大体育専門学群2年で部員の岡村祐輝さん(20)は、小学生の頃から南海トラフ地震に備えた訓練を経験してきたことで、被災地への支援活動に興味を持ち参加した。「金沢で出会えた高校生や、自分たちが活動するための寄付金など、周囲の助けや縁を感じられた2日間だった。自分たちに何ができるかを常に考えながら活動した」と話した。

参加した高校生からは「地震で週に1回しか練習ができていないため、こういった練習はとても良い機会になった」「自分に足りなかった部分がたくさんあったけれど、筑波大学の先輩たちが丁寧にアドバイスしてくれたおかげで、たくさん吸収できた」という声が寄せられた。一方「校舎の体育館が使えないため、自主練習ができない」という声や、「学校で練習ができない」「体育館が使えるか不安」など、地震の被害を受け、練習施設不足に関する悩みも寄せられたという。

吹田総監督は「自分たちに何ができるのかを考えながら、継続して行動し続けることで、周りに良い影響を与えていきたい。将来的には、高校生だけでなく、小中学生を巻き込んだ活動や、石川県以外の被災地とも連携し、支援の幅を広げていければ」と話した。

清水さんも今後について「自分たちにできることには限界があるが、高校生のためにも、競技力の高い筑波大学の学生の力を借りて、練習会をまた実現させたい」と話している。(上田侑子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

コスプレーヤーの高校生ら 動画制作しつくばの古民家をPR

江戸時代後期に建築されたとされるつくば市栗原の古民家、下邑(しもむら)家住宅で、コスプレーヤーなどの愛好家グループ「下邑しぇあすたじお」(藤島正朗代表)が古民家をPRするプロモーションビデオ(PV)を今年4月に完成させた。下邑家住宅では母屋や庭などを含め屋敷全体を撮影用に貸し出している。グループは貸し切りプランを利用し「刀剣乱舞」という人気のゲーム作品をモチーフにPVを制作した。現在X(旧ツイッター)で公開している。 下邑家住宅は、県道土浦大曽根線沿いの長屋門が連なる栗原地区にある。後継者の郷悠司さん(31)らが年に2回マルシェなどを開催するなど、古民家の保存活用方法について模索を続けている(23年5月31日付)。 撮影は4月6日に実施された。コスプレーヤー8人と、イベント参加者10人が加わり、1分42秒の短い動画にまとめられた。Xでの閲覧数は5月15日時点で8000件を超えるなど予想を超える反響を呼んでいる。 PV制作は、コスプレーヤーで千葉県柏市在住の高校3年生、綾茶葉(あやちゃば)さん(17)が発案した。農業を中心に地域活性化を目指すつくば市の合同会社「ワニナルプロジェクト」(4月18日付)のイベント担当で、市内在住の藤島正朗さんから下邑家住宅を教えられ、撮影に使う機会があれば、古民家の魅力が多くの人にもっと伝わるのではないかと「下邑しぇあすたじお」を発足させた。 メンバ―は17歳から34歳の高校生、大学生、会社員らで、コスプレーヤー、映像スタッフなどで構成する。下邑家住宅などつくばの素晴らしいロケ地を拡散し認知度を向上させること目的としている。4月に同住宅で撮影イベントを開催した。今後はつくば市を中心に自然豊かな場所でコスプレ撮影をするイベントを継続的に開催していきたいと綾茶葉さんは言う。 綾茶葉さんは元々アニメ好き。SNS等でアニメキャラクターにふんしたコスプレ写真を見ているうちに自分でも表現したいと思い、コスプレの世界に入った。今回のPVでも刀剣乱舞のキャラクターである加州清光にふんして出演している。 刀剣乱舞はゲームとして制作され、アニメ、舞台、歌舞伎などにもなった人気作品。綾茶葉さんは下邑家住宅について、刀剣乱舞の世界観にぴったりで、関東で撮影にぴったりな場所はここしかないと思ったそうだ。 下邑家住宅の郷悠司さん(31)はPVについて「うちの家のポイントを押さえてあり、自分で撮りきれない部分まで入っていたのでとても良かった。またコスプレーヤーの演技を見ることが出来てとてもうれしかった」と感想を述べた。 綾茶葉さんは「つくば市は愛好家にとって環境が良い、地域を創生させることによって、ロケーションビジネスとしても成功させたい」と話す。 今後は下邑家住宅だけでなく同市上郷の金村別雷神社(かなむらわけいかずちじんじゃ)での撮影も予定している。11月上旬には下邑家住宅でイベントを開く予定という。(榎田智司) ◆PVはXの「下邑しぇあすたじお」で見ることが出来る。

「死が遠ざかった」今の時代《看取り医者は見た!》19

【コラム・平野国美】今、週刊誌の表紙を見ると、「飲んではいけない薬」とか「老後の問題」といった医療介護関係の話題が必ず出ています。特に、毎週月曜日に発売される2つの週刊誌はこれらが必須の記事になっています。昭和や平成のころは、こういった記事はほとんどなく、「新橋の居酒屋情報」とか「買ってはいけないマンション」といった記事が多かったのですが…。 私も、『看取りの医者』(2009年、小学館)を出版した後、よくそういった内容の記事依頼を受けました。あるとき、「こんなに毎週、病気や死ぬ話ばかり出していて、いいの?」と編集者に尋ねたことがあります。 答えは「読者層が昭和、平成から変わらないようで、60~70代がメーンなのです。彼らが現役のときは、飲み屋や旅行、家や車の購入方法が関心事でしたが、今の最大の関心は病気や死ですから、そういった話を盛り込まないと売れません。グラビアも、現代の女優やアイドルではだめで、昭和のスターを出さないと…」でした。 「顔に白い布」を見ていた日常 今は「多死社会」と言われる時代ですが、この分野は誰にも未知の世界です。それゆえに、恐怖を感じるのでしょう。 親との同居が当たり前だった大家族時代には、祖父や祖母、もっと言えば曽祖父が同居しており、腰が曲がり、寝たきりとなり、顔に白い布がかかる日を日常の生活で見ていました。その過程に家族として寄り添うことで、現実として受け止めていました。しかし、核家族化の今の時代、病人や高齢者が同居しておらず、リアリティが消失しているのです。 今年の春は気象予報が立てにくく、桜の開花予想が大きく外れました。桜の名所で満開を期待してきた外国人旅行客が「満開かと思ってきたら、もう葉もなく、枯れ枝ではないか」と話していました。そこの桜はまだ蕾さえ小さく、開花前なのですが、日本の桜を見慣れていない彼らには、花どころか葉さえ散ったように見えたのでしょう。 ドラマの中の死だけでは現実味がなく、心に痛みが伴わぬものです。普段から現実を見ることが大切だと思います。昔の地域共同体では共同で葬式を出していました。近所の家での看取りを通し、死を感じることができた時代でした。死は私にも恐怖ですが、仕事ですから私には日常です。自分の親の死に際にしても、周囲に鈍感と思われるほど淡々としていました。自分の人格を疑われるのではないかと思ったほどです。(訪問診療医師)

ハクレンの大量遡上始まる 桜川 つくば 松塚の堰 

15日朝、桜川 松塚の堰(つくば市松塚)に、ハクレンが大量に遡上したのを桜川漁業協同組合(鈴木清次組合長)が確認した。朝は水面が真っ黒になるほどだった。大量遡上が確認されたのは今年初めて。夕方には、朝より数は半分ほど減ったものの多くのハクレンが見られ、背びれを水面にのぞかせて泳ぐ様子に、川辺で農作業をしていた近隣住民も驚いていた。 ハクレンジャンプと言われる集団跳躍行動はまだ見られず、何匹かが堰を上ろうとジャンプする様子が観察された。堰を上りきれず浅瀬にジャンプし、岸に打ち上げられたハクレンも5、6匹見られた。 年々遡上する数が増加 桜川漁協の鈴木組合長によると、ハクレンが桜川に大量に遡上し始めたのは3年前からで、年々遡上する数が増えている。「おとといの13日、雨が降ったので桜川が増水し産卵のために上ってきた。今日は松塚の堰はそれほど水が多くない。松塚の堰を上ったハクレンは(さらに上流の)田土部堰(たどべぜき)が閉まっているのでこれ以上は行けず、ここにとどまったり戻ったりしながらジャンプしている。前は利根川のハクレンジャンプが有名だったが、最近は桜川でも見られるようになった」と話す。 20時間で稚魚になり霞ケ浦へ ハクレンは、1匹のメスに数匹のオスが寄り添って産卵と受精が行われる。受精した卵は下流に流されながら、20時間ほどでふ化して稚魚になるという。鈴木組合長は「3年前には霞ケ浦のワカサギ漁の網にハクレンの稚魚が大量に入り、ハクレンとワカサギをより分けるのが大変だったという話を聞いている」と話し、「去年も今年もワカサギはあまり獲れないと聞く。このままではハクレンばっかりになってしまう」と懸念する。 ハクレンは中国原産の外来魚で、成魚の体長が100センチ、重さが10キロほどになる大型魚。アオコなどの植物プランクトンを餌としている。産卵期が5月から7月で、この時期に集団跳躍をする習性がある。産卵は、産卵日の前日や前々日が雨天で、川の水量が増加した早朝から行われる傾向があるという。 昨年5月には田土部堰でハクレンの大量酸欠死が発見され(23年5月27日付)、6月初めには台風の影響による増水で大量の死骸が霞ケ浦に流される事態が発生した(23年6月2日付)。(田中めぐみ) https://youtu.be/mEdw6IGQxy4

県内の生産は低位推移 消費は緩やかに回復【筑波総研リポート】

筑波銀行グループの筑波総研が15日まとめた「茨城県経済の現状と展望」によると、2月の鉱工業指数(2020年=100、季節調整済み)は106.9と、前月比3.5%上昇したものの、低位の水準で推移している。中国経済の減速などを要因に、自動車や建設機械、半導体関連の生産が減少しており、生産活動には弱さが見られるという。 3月の大型家電店販売は大幅増 個人消費は一部に弱さが見られるものの、全体としては緩やかに回復している。3月の販売額を分野別に見ると、百貨店・スーパーは前年同月比5.2%、家電大型専門店は同23.0%、ドラッグストアは同5.6%、ホームセンターは同5.7%の各プラス。コンビニエンスストアは同0.2%マイナスだった。 筑波総研の担当者は「県内のサービス業の声を聞くと、物価上昇で節約志向がうかがえる一方で、宿泊や小売りは良くなっており、個人消費は緩やかに回復している」という。 空港国内旅客はコロナ前水準に 茨城空港の3月の国内旅客数(定期便)は6万650人になり、コロナ禍前の水準に戻っている。しかし、国際線旅客数(定期便)は2081人と回復が遅れている。「台北便は昨年から運行を再開したが、上海便は5月末まで運休、西安便も10月下旬まで運休が続く」ことがその背景。 コロナ禍でクルーズ船の寄港がほぼストップしていたが、県の誘致戦略もあり、今年度は国内船・外国船とも寄港数が増えそうだ。筑波総研が作成した寄港一覧によると、11隻が予定されている。(岩田大志)