【コラム・坂本栄】本欄では土浦市立博物館の郷土史「論争拒否」を何度か取り上げてきましたが、今度は、元中学生の保護者が在学中のいじめについて再調査を求めたのに土浦市教育委員会が断ったという、いじめ「調査拒否」が明らかになりました。市役所のこういった門前払い対応、いずれも文化教育行政を所管する教育委員会が担当する案件です。
「調査を行う予定はありません」
いじめ問題については、記事「いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める 土浦の中学校」(9月3日掲載)をご覧ください。
中学在学中に車いすの息子さんが何度もいじめを受け、その都度、保護者が教育委に対応を求めたにもかかわらず、いじめが止むことなく続いたというケースです。そして、何度も相談に来る保護者を教育委は「クレーマー」(文句を言う人)と思ったのか、市長名で調査打ち切りを通告してきたそうです。
そこには「〇〇様からいただいているご意見につきましては、既に、教育委員会からメール、電話、対面等で、ご回答及びご説明をさせていただいておりますので、改めて回答する事項はありません。また、ご要望いただきました、いじめ防止対策推進法第30条2項の地方公共団体の長による調査については、検討の結果、同調査を行う予定はありません」(2022年6月15日付)と書かれています。
現在、息子さんは障害者対応が整った私立高校に通っているそうです。従って、教育委の再調査拒否は現在進行中の問題ではありませんが、中学在学中の教育委の対応をうかがうと、今でも同様なことが続いているのではないかと気になります。また市長回答を読むと、163「土浦博物館の論争拒絶 市民研究者が猛反発」(7月31日掲載)で取り上げた事例と似ているのが気になります。
「博物館は一切回答致しません」
博物館に論争を挑む郷土史研究者(元市職員の高齢者)に論争拒否を通告した文書には「… 以上の内容をもちまして、博物館としての最終的な回答とさせていただきます。本件に関して、これ以上のご質問はご容赦ください。本件につきまして、今後は口頭・文書などのいかなる形式においても、博物館は一切回答致しませんので予めご承知おきください」(2023年1月30日付)と書かれています。
博物館の歴史解釈に疑問を持ち文書での回答を求める研究者を門前払いにする、教育委の生徒いじめ対応に疑問を抱いて再調査を求める保護者を門前払いする、単なる偶然なのか市役所の体質なのか分かりませんが、教育委の冷たい対応には類似性を感じます。いずれも専属弁護士の助言に基づいているようですから、市政=守勢といえます。
郷土史研究者は8月30日、市民の相談を受け付ける窓口(広報広聴課)に、博物館の歴史解釈の間違いを指摘する文書を提出するとともに、市民研究者を「クレーマー」扱いする博物館の対応を改めさせるよう申し入れたそうです。
教育委のチェックは市議会の仕事
博物館と教育委の対応を見ていると、行政部門に問題の解決を期待するのは無理かもしれません。議会の文教厚生委員会(委員長=矢口勝雄、副委員長=田中義法、委員=吉田千鶴子、鈴木一彦、勝田達也、福田勝夫、平岡房子、根本法子の各氏)の出番ではないでしょうか。議会が議会の仕事(市政のチェック)を怠れば、市議は市民のチェックを受けるでしょう。(経済ジャーナリスト)