かすみがうら市の漁師
霞ケ浦と天然ウナギの魅力を伝えたいと、霞ケ浦のウナギ漁師「麦わら村長」こと外山厚志さん(44)が6月初め、湖畔にあるかすみがうら市安食に飲食店をオープンする。外山さんは昨年から、実家敷地内の倉庫にウナギの漁業体験ができる体験拠点「うなぎ村」をつくり活動してきた。今回飲食店を併設する。
うなぎ村は、霞ケ浦で伝統的なウナギ漁を体験してもらったり、獲った天然ウナギの調理体験をして味わってもらう拠点。実家周辺に元々ある栗林やミカン、キウイ畑などで、収穫体験もできる。
昨年夏、調理場を増設したいとクラウドファンディングで支援を呼び掛け、329万円が集まった。今年1月から、飲食スペースを併設した調理場の増築工事を実施、5月中に完成する予定だ。ほかに、祖父が乗っていた船を修理しウナギの水槽にして、庭先に設置する計画もある。
祖父のような漁師に
外山さんの祖父も父親も霞ケ浦のウナギ漁師だった。幼い頃から祖父の船に乗せてもらい、仕掛けの竹筒を水中に沈めて引き上げウナギを獲る「竹筒漁」などを体験してきた。いつかは、尊敬する祖父のような漁師になることを夢見ていた。
現在、会社員の傍ら、実家の倉庫をうなぎ村と名付け、土日に天然ウナギのかば焼きを焼いて、釜で炊いたご飯と一緒に提供したり、仕掛けの竹筒を引き上げるウナギ漁体験会を開いたりしている。
2021年8月、霞ケ浦で1.4キロの大きなウナギを獲り、SNSやyoutubeで発信したところ大きな反応があった。「こんなに反応してくれるのだったら、ぜひ現地に来て食べてもらいたい。一緒に漁業体験もしてもらいたい」という思いから、うなぎ村づくりに取り組み始めたという。
今年4月下旬には、石岡市若宮の石岡イベント広場で開かれた野外物産イベントに出店し、霞ケ浦の天然ウナギのかば焼きなどを提供。ブーズには行列ができた。
外山さんは「利益が目的というよりも、霞ケ浦産のウナギや霞ケ浦の魅力を伝えていきたい」と話す。6月にはさらにウナギ養殖の申請をし「将来的には自分でウナギを育て、霞ケ浦ブランドとして付加価値を付けて販売できれば」と夢を語る。
かつて国内有数の産地
霞ケ浦・北浦のウナギ漁獲量は1960年ごろ400トンを超えるなど国内有数のウナギ産地だった。塩害防止のため設置した逆水門を完全閉鎖した70年代後半以降、霞ケ浦のウナギは急激に減少した。現在の漁獲量は、福島第1原発事故による天然ウナギの出荷制限が解除された2016年から19年は1~5トン、20年、21年はいずれも500キロ以下だった。獲れた天然ウナギは近隣の飲食店や近県に流通している。(榎田智司)
◆「うなぎ村」はかすみがうら市安食3006-2。開店は土日のみ。かば焼き等の料金は量り売りになる。問い合わせは電話090-5446-4173。