2023年、土浦を演劇のまちに—と旗揚げしたグループがある。「つち浦々まちなか演劇めぐり実行委員会」(久保庭尚子委員長)だ。これまでに市内の店舗や社寺など8つの会場の協力を取り付け、劇団や演者9団体などの参加を得て、土浦初の回遊型演劇イベントを10月28、29日開催することを目指す。5日からは、会場の提供ができる企業・店舗と、演劇公演に参加できる個人・グループの新規募集に乗り出す。
グループは、同市真鍋の小劇場「百景社アトリエ」などで公演を重ねてきた演劇関係者が中心となり昨年7月、市民が身近に舞台芸術を楽しむ機会を広げようと立ち上げた。
舞台芸術の魅力とともに、地域の魅力を再発見し、まちや地域文化を活性化することを目指しており、同市中央で「城藤茶店」を経営するコンサルタントの地立堂、工藤祐治さん(54)が地域側のとりまとめを担った。「最初は街頭演劇も考えたが、参加団体との調整を図るなか、今回は公演会場を確保して行うことになった。初めてのことで第2回があるかどうかも含め手探りで進めている」
コロナ禍で危機意識、演劇の可能性探る
これまでに演劇しょく堂(仲谷智邦代表)、劇団ルート6(福田琢哉代表)など、全9団体の参加が決まっている。委員長を務める久保庭尚子さん(61)は、フリーの俳優、演出家。水戸芸術館の開館時に創設された劇団ACMの1期メンバーで、現在はかすみがうら市に居住し、「城藤茶店」で朗読会を開くなど、土浦での活動を積み重ねてきた。「コロナ禍以降、演劇は難しい状況に置かれている」と危機感を募らせている。
舞台関係者など多くの人間が関わるため、一人でも感染者が出ると直前でも公演を中止にせざるを得ない。劇場は密な場所だし、演者同士がマスクを外さずに行う稽古などにも限界があった。だから「場を作っていくことの大事さを感じている。一個人、一団体だけはできないことをまちの人と結びつくことで演劇の可能性としたい」と語る。
演劇しょく堂は、コロナ禍の危機意識の中、生まれた公演形式をとる。「飲食店や映画館に行くように、誰にでも気軽に来てメニューや演目を楽しんでもらいたい」がコンセプト。複数の演者・グループが相次いで舞台に立つオムニバス形式をとる。感染拡大の影響を最小限に食い止められるスタイルという。
百景社アトリエが公演運営のバックアップに入る。会期中の共通チケット3000円(500円チケット6枚綴り、1公演500円〜2500円、税込み)、延べ500人の入場者を見込んでいる。
5日から会場、劇団を追加募集
これら公演団体を受け入れる会場は、福来軒(中央1丁目)、前野呉服店(中央2丁目)、高翁寺(中央2丁目)、東光寺(大手町)などが内定している。実行委員会ではさらに2カ所程度拡大したい意向で、5日から公募に乗り出す。おおよそ土浦駅前から真鍋3丁目の範囲のまちなかが対象で、約20人以上の観客を収容でき、開催期間(時間限定可)に貸し切りが可能なスペース。会場費は原則無料となる。募集期間は2月1日まで、2月中に仮決定し、劇団と調整し3月末に本決定となる。
同時期、公演を行う劇団・アーティスト2団体もプロ・アマ問わず募集する。開催期間に1、2回の公演を行うのが条件で、制作費用は応募団体の負担となる。応募企画の入場料収入は、会場使用やチケットにかかわる経費を除き、応募団体の収入になる予定だ。(相澤冬樹)
◆会場店舗の募集に関する問い合わせは、地立堂・城藤茶店(電話029-895-0283、メールuraura-engeki@chiryudo.com、工藤さん)、公演劇団の募集に関する問い合わせは百景社アトリエ(電話029-896-3099、メールknegishi18@gmail.com、根岸さん)まで。