金曜日, 2月 6, 2026
ホームつくば土浦の旧村部に住む 先端企業会長の権右衛門さん【キーパーソン】

土浦の旧村部に住む 先端企業会長の権右衛門さん【キーパーソン】

研究機関向けの電子顕微鏡や計測機器では世界有数の日本電子(JEOL)。その会長兼取締役会議長、栗原権右衛門さんの自宅は土浦市の旧村部にある。お盆休みに時間を取ってもらい、同社の製品や土浦・つくば地区との関わりについて聞いた。築170年の古民家(当主は代々権右衛門を名乗る)は栗林などで囲まれ、涼しい風が通る。

JEOLは一般向けの商品を作っている会社ではないので、どんな会社なのかあまり知られていない。しかし、国や民間の研究機関には必須の理科学・計測機器を製造していることもあり、研究者で知らない人はいない。代表的なものは高性能の電子顕微鏡だが、最近は高度な半導体製造装置も手掛け、この分野では世界トップクラス。

ノーベル賞学者にも解析装置を納入

最新の電子顕微鏡としては、タンパク質などの生体試料を凍らせたまま観察できる『クライオ(CRYO)顕微鏡』がある。その機能などは、本サイトの「創薬研究に産学拠点 筑波大 クライオ電子顕微鏡お披露目」(3月16日掲載)に詳しい。筑波大、東京大、大阪大、東北大、九州大などの有力大学のほか、国の主要な研究機関で使われている。気になる価格だが、1セット数億円するという。

「JEOLの看板は電子顕微鏡だが、営業担当の駆け出しのころ、私は有機化学構造を解析する『核磁気共鳴装置(NMR)』を売っていた。ノーベル賞をもらった野依良治先生(2001年化学賞)や大村智先生(2015年生物学賞)にも購入いただいた」「野依先生がある会合で『日本の化学が世界の上位にあるのは、日本には優れたNMRメーカーがあるからだ』と言われたときは、うれしかった。その会社はJEOLを指すからだ」

学園都市・筑波支店の重要度は高い

JEOLは国内に9支店、海外に23オフィスを配している。筑波支店(つくば市東新井)の場所は「とんかつとんQつくば本店」の東隣。「私も4年ほど支店長として研究機関営業をやった。営業活動と機器保守のため、今は30人ほどの所帯。取扱高は9支店の真ん中ぐらいだが、レベルの高い研究者とのお付き合いもあり、支店としての重要度は高い」

権右衛門さんが土浦生まれということもあり、JEOLは地域の学校に電子顕微鏡を持ち込み、生徒に使ってもらっている。本サイトの「電子顕微鏡でミクロの世界を体験 土浦一高で科学実験講座」(2021年12月4日掲載)で紹介した理科支援は、土浦一高では3回目。土浦市内の都和小学校や中村小学校でも体験教室を開いた。

ちなみに、理科支援用の『走査電子顕微鏡』でも1000万円ぐらいするというから、小中高が理科教室に常備するのは難しい。

今の稼ぎ頭は高度な半導体製造装置

JOELの製品案内冊子には、計測機器、産業機器、医療機器が記載されているが、今一番の稼ぎ頭は、産業機器の一つ、半導体製造装置。「半導体はシリコンウェハーに回路を焼き付けて作る。そのネガフィルムに当たるものを製造する『電子ビーム描画装置』では世界市場をほぼ独占している。九州・熊本に工場を建設中のTSMC(台湾積体電路製造)、米国のインテル、韓国のサムソンから、矢の催促を受けている」

ロジックIC(論理素子)製造にはこの装置が必要で、経済安全保障の観点からも注目されている。「政府も気になるらしく、関係省庁や与党の関係議員から、いろいろ声が掛かる」という。

【くりはら・ごんえもん】1948年、土浦市小山崎生まれ。土浦一高、明治大商学部各卒。1971年、日本電子(本社・東京都昭島市)入社。筑波支店長などを経て、2008~2019年、社長。2019年~2022年6月、会長兼最高経営責任者。現在は会長兼取締役会議長。自宅は「ペリー来航の前年に焼け、建て直した」という生家。蔵にあった小田家15代・氏治の150回忌(1750年ごろ)文書には権右衛門の名がある。

【インタビュー後記】権右衛門さんが面白いのは、技術出身でなく営業出身であること。現役のころ、自動車、航空機・武器、造船・海洋機器などの産業を担当したが、トップは一様に技術者の出身。ある高名な社長に「もっと勉強してから来い」と怒られたことも。このインタビューは話がわかりやすくて助かった。(経済ジャーナリスト・坂本栄)

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ふるさとのない時代《くずかごの唄》154

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消費期限切れ食品を冷凍自販機で販売 つくばまちなかデザイン

保健所が販売停止を指導 つくば市のまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(つくば市吾妻、内山博文社長)が設置、管理する冷凍食品自動販売機で、1月9日から14日までの間、消費期限切れの食品が販売されていたことが分かった。つくば保健所の指導を受けた同社は、該当食品の販売を17日から停止し、現在までに同自販機による全食品の販売を停止している。 同社は購入者に対し返金対応を行うとしているが、同社による事態の告知は自販機への貼り紙と、冷凍食品製造事業者を含む飲食店経営者による有志グループ「旨がっぺTSUKUBA(つくば)」のインスタグラムとフェイスブックなどに限られ、つくば市が出資する第3セクターとしての説明責任が問われる。 販売が停止された自販機は、つくば駅前のつくばセンター広場ペデストリアンデッキ上に設置されている。同社がSNSと自販機に掲示した「お知らせ」によると、販売された消費期限切れの食品は「8大アレルゲンフリー 米粉の焼き菓子おまかせ3点セット」。1月9日、12日、14日の3日間に計4点が購入されていたことが確認されている。消費期限は、購入された時で最大で1週間が過ぎていた。その他に、消費期限が最短で1日以内だった1月1日と6日に購入された2点についても返金するとしている。 コロナ禍発 同自販機が設置されたのは2023年。つくばまちなかデザインが、市内などの飲食店経営者などによる有志グループ「旨がっぺTSUKUBA」とともに立ち上げた実行委員会のプロジェクトとして設置した。同グループは、コロナ禍による外出自粛が呼び掛けられた2020年に、県内飲食店のテイクアウト情報をフェイスブックで発信していた活動を母体としている。冷凍自販機設置に際して同実行委は、PR費用などに充てるとしてクラウドファンディングを実施し、46人の支援者から56万9590円を集めた。 告知は貼り紙と飲食店グループのSNSのみ 消費期限切れ食品の販売が発覚したのは1月17日。まちなかデザインは同日、「旨がっぺTSUKUBA」のインスタグラムとフェイスブックに掲載した同社名義の「消費期限切れ商品の販売に関するお詫びとお知らせ」で、問題が起きた経緯について「弊社による商品管理不足とコミュニケーションの不調」によるなどと説明し、返金対応を行うとした。同時に、自販機に貼り紙を貼り、購入者に連絡を呼び掛けている。一方で、食品の自販機の設置者であり、商品の管理責任を負うまちなかデザイン自身の公式ホームページや、会社のSNSアカウントでは、2月2日時点で、消費者に対する説明や購入者への呼び掛けは行われていない。 社長「大きな問題は起きてない」 取材に対して同社の内山社長は、今回の経緯について、「旨がっぺTSUKUBA」のSNSに公表した文書を念頭に、「あそこに書いてあることが全て」とし、「体調が悪くなったなど、特段、消費者から問い合わせもなく、大きな問題が起きているということはない。問題等があれば、しっかり発表する」と述べ、問題発生に関する詳細な経緯の説明を避けた。 また、市民からの疑問と不安の声を受けて取材を始めたことを伝えると、「『市民の方から』と言えば、なんでも話さなければいけないのか。その方から直接問い合わせをいただければ、私どもも真摯(しんし)に対応する」と述べた。今後については「保健所の指導を受けながら、誰の責任で、どう行うべきか考えていきたい。再開については、はっきりした段階でお伝えしたい」とした。 複数業務兼ね管理行き届かず つくば保健所によると、保健所が事態を把握したのは、問題が発覚してから2日後の19日。問題となった冷凍自販機に食品を納入している業者からの通報がきっかけだった。この時点で該当食品の販売は停止されていたが、まちなかデザインから保健所への連絡はなかった。そのため保健所は同日、同社に電話連絡し、同社が保健所を訪問。保健所は食品衛生法に基づき、施設の衛生管理状況や取扱者の衛生教育などを評価する「食品衛生監視指導表」を交付し、事態改善に向けた指導を同社に対して行っている。 同保健所は「自販機の設置者であるつくばまちなかデザインが、納入された商品の管理と自販機への補充を行ってきた」と、設置だけでなく、商品管理もまちなかデザインが担っていたとした上で、問題が起きた経緯については「自販機販売の担当者が、他の複数業務を兼ねていた。人手不足の中で、商品管理が行き届かず、期限切れの商品が販売された」と原因や背景を分析する。 今後、まちなかデザインから提出される改善案を見た上で、改善措置が図られたと判断した段階で、販売再開が可能になるとしている。 今回の「消費期限切れ」について保健所は「食品表示法により、健康被害の恐れから消費期限が切れた商品を販売することはできない。期限が切れた食品は、もう食べられない状態」にあるとし、厳格な管理が必要との認識を示した。一方で、今回販売されたのが冷凍食品であることから重大な健康被害に直結しにくいとの見方を示し、より期限に猶予期間のある「賞味期限」表示が適切だった可能性にも言及した。 市がどう考えているか知りたい  今回販売された焼き菓子をこれまでたびたび購入してきたという、ブックカフェ「本と喫茶サッフォー」(同市天久保)を経営する山田亜紀子さんは「丁寧に作られていて、安心して食べられるお菓子。美味しくて、好きで食べていた」と話し、自身も食品販売に携わる立場から「食品管理は食中毒を出せば営業できなくなり、経営に直結する問題。一番気を使う部分だ」と指摘する。 さらに「自販機は市民以外も含め誰でも購入できる場所にある。本来、安全を最優先しなければならないはずなのに、食べ物をずさんに扱っている印象を受ける」と不安を口にした。さらに「こうした会社に市が税金を出資している。市としてどう考えているのか知りたい」と話した。 市と会社に説明責任ある これまで市議会でたびたび同社の経営状況や将来負担などについて質問してきた山中真弓市議は「市は、まちなかデザインに6000万円を出資し、指定管理者に指定して、自販機が設置されている場所を含むつくばセンター広場の管理を任せている。市民の税金が投入されている以上、同社は市民に対して問題を説明する責任がある」と指摘する。 その上で、「自販機が設置されている場所は市の土地であり、市職員が同社の取締役に入っている。市が無関係とは言えない」とし、「市にも、市民に対して説明する責任がある。また、まちなかデザインが食品を扱うノウハウがあるのか、確認する必要がある」と述べた。 市は保健所に委ねる姿勢 一方、つくばまちなかデザインを担当する同市学園地区市街地振興課は今回の件について「(まちなかデザインは)保健所の指導に従ってもらいたい」との認識を示すにとどまっている。(柴田大輔)