【鈴木宏子】つくばエクスプレス(TX)沿線開発地区の一つ、つくば市中根・金田台地区内の歴史的緑空間用地=メモ=について、開発事業者のUR都市機構が今年末までに、市に約36haを無償譲渡することがわかった。市は当面、現状の樹林地のまま管理・保全していくとしている。
21日開かれた市議会全員協議会で市が報告した。3月末までに譲渡契約書を締結する。
同地区では絶滅の危機にひんするオオタカやサシバの営巣が確認されている。市は36haの管理・保全方法について①立ち入りを制限する「オオタカ生息環境保全ゾーン」と、市民が散策できる「保全散策ゾーン」の二つに分ける②散策ゾーンは将来、散策路などを整備し隣接の国指定史跡、金田官衙遺跡などと連携して活用を検討していくとの方針を示した。
URと市が13年12月に締結した合意書などに基づいて無償譲渡する。当時は「無償も含め」譲渡するとされていた。
「地域の財産として保全を」UR委員会が市に提言
一方、オオタカなどの営巣が確認されている同地区についてURは、08年3月「中根金田台地区貴重動植物生態系調査委員会」(委員長・山形耕一茨城大名誉教授)を設置し10年間にわたって生態系調査と保全活動を実施してきた。
今回、市に無償譲渡されるのに合わせて、URはオオタカなどの保全活動を終える。URの生態系調査委員会は今年2月、譲渡先の市に対し「(同地区は)今なお貴重な動植物が多く生息・生育する自然豊かな地区」だとして「近隣外周部も含め、地域の市民と連携し、保全に取り組むことが望まれる」「当地区の自然環境の重要性を地域の財産として保全していく」べきなどとする提言書を提出している。
※メモ
歴史的緑空間用地は、同地区東側の国指定史跡、金田官衙遺跡周辺の約16haと、今回無償譲渡される北側の約36haを合わせた計約52haある。そのうち国指定史跡など約16haは市がURから47億5200万円で21年度までに順次購入する予定になっている。今回無償譲渡される約36haのうち約19haにも埋蔵文化財があるという。