火曜日, 4月 15, 2025
プロモーション
ホームつくばつくばセンタービルの改修について 藤岡洋保 東工大名誉教授

つくばセンタービルの改修について 藤岡洋保 東工大名誉教授

藤岡洋保・東京工業大学名誉教授  

【寄稿・藤岡洋保】私は近代建築史の研究者で、長年にわたり近現代の歴史的建造物の保存を支援しつつ、その意義を考えてきた。

つくば市が計画した、「つくばセンタービル」(1983年竣工)の広場へのエスカレーター設置に対して、一部の市民が反対運動を組織し、人流のデータなどをもとに設置の必要がないことを指摘しつつ、それが実施されれば世界的建築家・磯崎新の作品の価値を損なうことになることをシンポジウムなどで訴え、市がそれを撤回したというニュースを最近耳にした。

この運動の前と後で、広場には何も変化が起きなかったことになるので一見ささやかなできごとだが、心ある市民の行動によってオリジナルの価値が守られたことは記憶されるべきだと思う。そして、この運動が、フェアなやり方で速やかに進められたことも注目される。建築の専門家ではない人たちが、広場をも含めた同ビルのデザインの価値を認識し、それを守ったことにも敬意を表したいし、その活動には研究学園都市ならではの民度の高さを感じる。

太平洋戦争後の名建築の保存・活用は、1990年代からはじまったといってよい。文化庁もそこに文化財的価値を認め、竣工後50年以上経った建物の有形文化財登録や重要文化財指定を進めている。かつて古社寺中心だった文化財指定の対象が広がったということであり、近現代の建物を生かしたユニークな環境形成が進められているということでもある。その近現代の建物の多くは、古建築よりも大規模で不特定多数の人が出入りするので、耐震性の確保や設備の更新、バリアフリーなどに対応しつつ、活用を図ることが求められる。

つくばセンタービル外観=撮影/藤岡洋保東京工業大学名誉教授

それに関連して、今回の計画で不思議なのは、そもそもなぜエスカレーターの設置が必要とされたのか、誰がそれを提唱したのかが、公表された資料を見てもわからないことである。バリアフリー対応については、広場のすぐそばにあるエレベーターが使えるので、設置費や維持費をかけてまで、エスカレーターを新設する理由が見えてこない。

ちなみに、この「センタービル」の建築的価値は、1970年代後半から80年代にかけての「ポストモダニズム」の、日本における代表例であることに認められる。より具体的には、「独創性」に価値を見る近代特有の思想を、過去の名建築の形を引用することで批判しつつ、「建築の新しさ」が「形の発明」にではなく、「既存の形やモチーフの新しい解釈や組み合わせ」にあることを示した点や、本体から独立したキュービックな階段室に錯視を導入して「非日常性」を演出した点に、ポストモダニズムらしさが認められるということである。

錯視が導入された、つくばセンタービル内ホテル日航つくばの階段室内部=撮影/藤岡洋保東京工業大学名誉教授

それはまた、ゾーニングや、人車分離とセットになった幅広の直線道路で整然と区画された街が、人の心や活動を刺激する場になり得るのかという磯崎の問いをも含んでいたともいえよう。彼は、つくばの都市計画を支えた近代合理主義に代えて、「非日常」をここに導入して街の活性化を訴えようとしたと考えられるのである。

この点からも、ミケランジェロ設計のローマのカンピドリオ広場(1588年頃)を変形しながら引用した、「非日常の場」である「センタービル」の広場に、エスカレーターという、日常的な装置を設置すると、その設計趣旨を台無しにしかねないことが了解できる。つくば市が計画を撤回したのは賢明だったといえる。

カンピドリオ広場=撮影/藤岡洋保・東京工業大学名誉教授

なお、この建物の改修に際してプロポーザル・コンペが行われたが、その時の予条件や審査経過の情報があまり開示されていないらしい。公金が使われる事業では情報開示が求められるはずだし、審査員の氏名やその一人ひとりの採点表まで公表する自治体があることを知れば、「センタービル改修」に対するつくば市の情報公開の仕方には不透明さが感じられる。

また私には、このコンペに応募した建築関係者の気持ちが理解できない。磯崎の傑作の価値を損なう可能性が高いコンペに参加するのはためらわれるはずだから、あえてそれに挑むのは、彼のデザインに対する敬意が希薄で、それを超えられるという自信(?)に満ちた建築家だけになり、「センタービル」の価値を損なう提案が通る可能性が高いことになる。

今後のこの建物内部のリニューアルが、磯崎の設計趣旨への敬意を払いながら進められることを望みたい。(東京工業大学名誉教授・工学博士/近代建築史)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

15 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest


最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

15 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




Advertisement
spot_img

最近のコメント

最新記事

ユニバーサルデザイン《デザインを考える》19

【コラム・三橋俊雄】デザインの定義に「社会の全ての人々の基本的尊厳を認める状況を促進、育成せねばならない(フランス・ヘンドリックス、1983)」とあります。つまり、デザインとは、より多くの人々が人間らしい生活を送るために役に立つ専門領域でなければならないということです。 そこで今回は「ユニバーサルデザイン」についてお話します。ユニバーサルデザインとは「すべての人々のためのデザイン」を意味します。例えば、年齢や障害の有無にかかわらず、初めから、できるだけ多くの人々が利用できるように、モノや環境をデザインすることです。 公園の水飲み場や公衆電話の高さが、大人用と子どもや車椅子用の2通りになっていることがありますが、それはユニバーサルデザインです。また、駅のホームにエスカレーターが設置されたり、公園や博物館などの出入口が階段とスロープでできている場合、それもユニバーサルデザインの配慮と言っていいでしょう。 コラム2(2023年11月21日掲載)で紹介した、脳性小児まひ児T君のための足動式意思伝達装置のデザインもその一環です。また、京都では、さまざまな障害を持つ方のためのユニバーサルデザインを検討してきました。 動物園のユニバーサルデザイン 2015年度までに京都市動物園が大規模な改装を計画し、「動物園のユニバーサルデザインコンペ」が行われました。そこには「すべての人に優しい動物園」がうたわれていました。そこで、視覚障害者にとって満足できる動物園とは何かについて、全盲の学生のT氏とゼミ学生のY氏と私で考えることにしました。  まず、T氏が1人暮らしをしている実態を把握し、その後、実際に動物園に行って、T氏がほしい情報は何かを検討しました。その結果、彼が知りたい動物園での情報は「説明文的情報」ではなく、目の前にいる動物たちの〈動き〉〈息づかい・鳴き声・臭い〉〈大きさ・重さ〉〈その動物たちが暮らしている環境〉などでした。 すなわち、T氏が動物園を楽しむためには、視覚に代わる触覚・聴覚・臭覚などを通して、動物たちと対峙(たいじ)している「臨場感」をどのように味わうかということでした。 例えば、キリンの「息づかい・臭い・発声音・皮膚の触感・大きさ」など、猿の「素早い動き・ポーズ・群れの動向」など、ライオンやゴリラの「くせ・迫力感」など、私たちが動物園で無意識に感じている「感動」を、T氏にどのように伝えていけばいいのか、それこそ「ユニバーサルデザイン」がなすべき課題であると感じました。上のイラストは提案の一部です。 私たちがこのプロジェクトを通して、もう一つ気づいたことがあります。私たち晴眼者(せいがんしゃ)のほとんどが、動物園に行って動物たちを「見た(理解した)」つもりになっていて、実は、動物たちが私たちに発している「大切なメッセージ」を見落としているのではないか、私たちこそ「BLIND MAN(視覚障害者)」なのではないかということでした。(ソーシャルデザイナー)

男女ダブルホーム戦は1勝1敗 つくばFC

サッカークラブ、つくばFCの男女各トップチームによるダブルホームゲームが13日、つくば市山木のセキショウチャレンジスタジアムで開催された。女子のつくばFCレディースは山梨学院大学(本拠地・山梨県甲府市)に1-0で勝利し、男子のジョイフル本田つくばFCは南葛SC(本拠地・東京都葛飾区)に2-3で敗れた。 開幕戦、1点を守りきる 女子 女子は開幕戦となった。2024シーズンまで日本女子サッカーリーグのなでしこリーグ2部に所属していたが、入れ替え戦に敗退し地域リーグの関東女子サッカーリーグ1部に降格。今シーズンはなでしこリーグ復帰を賭ける。 第31回関東女子サッカーリーグ1部 前期第1節(4月13日、セキショウチャレンジスタジアム)つくばFCレディース 1-0 山梨学院大学前半1-0後半0-0 女子、チーム最多の3本のシュートを放ったFW石黒璃乙(青いユニフォーム) 試合は、先制の1点を最後まで守りきった。得点の場面は前半35分、MF穂谷颯季のアシストからFW諸富愛莉がミドルシュートで決めた。「穂谷からいい落としが来たので、とりあえず打ってみようと思っていい感じに入った」と諸富。志賀みう監督は「諸富はシュート力があるので、遠くからでもゴールを狙えと指示してある。GKが前へ出ているのを見てループ気味に打った、いいシュートだった」と話した。 前半は追い風に乗って相手を自陣に封じ込め、被シュートをわずか1本に抑えたつくばだったが、後半は山梨学院大が持ち前のスピードを発揮し、勢いに乗り始めた。「前からガツガツ来るところや切り替えの速さなど、相手のいいところが出た。自分たちは前の迫力が出ず押し込まれ、セカンドを拾われた」と、つくばの高橋萌々香主将の反省。「苦しい状況でも守れるのが強いチーム。大きく展開されても最後までボールにチャレンジし、最後は伊東美和が止めてくれた」と志賀監督。 後半、山梨学院大の放ったシュートは8本にも及んだが、これらをことごとく抑えてみせたのがGKの伊東。「押し込まれてもディフェンスがゴール前でしっかり体を張っていいシュートを打たせず、自分が止めやすいところに飛んでくれた」と守備陣の働きを称えた。初戦を勝利で終えて高橋主将は「今後も難しい展開は多くなると思うが、守りきるところと点を取るところを切り替えて勝ちにつなげたい」と意気込んだ。 男子は要所を締められず 第59回関東サッカーリーグ1部 第2節(4月13日、セキショウチャレンジスタジアム)ジョイフル本田つくばFC 2-3 南葛SC前半0-0後半2-3 関東サッカーリーグ1部の男子は開幕第2戦目となった。試合は、前半は互いに相手に大きなチャンスをつくらせず引き締まった展開だったが、後半開始直後の2分に南葛に先制を許した。混戦から右サイドを佐々木達也に崩され、横パスを中央の加藤政哉に合わされた。 その後は南葛が勢いを増すが、つくばは選手交代などでしのぎ、35分に待望の同点ゴール。右サイドの稲田竜也のクロスを中央の大亀海世が落とし、ボランチの大山晟那が前へ飛び込んで右足シュートで突き刺した。「FWの動きにつられて前が空いたところへ、大亀がマイナスのボールを出してくれたので、抑え気味に流し込んだ」と大山の振り返り。 しかし同点に追い付いたのもつかの間、36分と38分にたて続けに失点。36分は途中出場の大前元紀に頭で決められ、38分は1点目と同じ佐々木-加藤のコンビで決められた。 40分にはつくばが反撃。左サイドバック篠塚愛樹からの縦のフィードにMF岡島温希が追い付き、エンドライン際からマイナスのクロス。これをゴール前でFW堀下勇輝が相手ディフェンスを背負いながら反転シュートを放った。「岡島からいいクロスが来るのは分かっていた。GKの位置は間接視野で見えていたので、ボールを収めて足を振ることだけを考えた」と堀下。その後もつくばは果敢に攻めるが、南葛が今野泰幸の投入などで逃げ切った。 つくばの菅谷将人主将は「同点にして流れをつかみかけ、逆転に向けて前へ出ようとしたが、ボールに執着しすぎてスペースや大事な場所にポジションを取れず、相手にとって攻めやすい環境をつくってしまった」と反省点。亘崇詞監督は「失点後や得点後の戦い方が浸透してなく準備不足だった。自分たちの攻撃の良さや迫力をもっと出したい」と次節を見据えた。 次節もダブルホームゲーム 次節は20日、またもセキショウチャレンジスタジアムでのダブルホームゲームで、男子は正午から東京ユナイテッドFC(本拠地・東京都文京区)と、女子は午後4時30分から神奈川大学(本拠地・神奈川県横浜市)と対戦する。(池田充雄)

全国で「令和の百姓一揆」《邑から日本を見る》181

【コラム・先﨑千尋】「農家切実 首都騒然 トラクター30台行進 洪水のように進む離農」。4月2日付の『東京新聞』は、衝撃的な見出しで、3月30日の東京での「令和の百姓一揆」の模様を伝えた。「すべての国民が安心して国産の食料を手にするために日本の食と農を守ろう」と、全国各地からコメ生産者や酪農家などが東京・青山に集まり、集会を開き、沿道参加者を含めて4500人が、買物客などでにぎわう表参道を通って代々木公園までデモ行進した。 トラクターは別ルートで、渋谷駅前コース。この日の百姓一揆は、東京のほか、那覇市、福岡市、札幌市など14カ所で、トラクター300台が出て、沿道の人たちに農家の声を直接訴えた。 百姓一揆の実行委員長を務めた山形県の専業農家・菅野芳秀さんは「日本の農業は崩壊寸前だ。ムラから農民が消え、ムラそのものがなくなろうとしている。だが、都会の消費者はそのことを知らないでいる。農業が滅んで本当に困るのはその消費者だ。まだかろうじて農民が残っている今、国民とともに農を滅ぼそうとしている政治を変えていかなければならない。今日はそのための集会だ。農村では『農じまい』という言葉が交わされている。そうならないようにしていきたい。このことには保守も革新もない」と呼び掛け、元農水大臣の山田正彦さんは「日本の農と食を守るために、欧米並みの戸別所得保障をわが国でも実現させよう」と訴えた。 私は近くのコメ専業農家2人とこの集会に参加した。2人はトラクターを瓜連(那珂市)から運び、デモのしんがりを務めた。会場には集会の1時間前に着いた。舞台の前はカメラが林立。韓国のテレビ局も主催者にインタビューしている。むしろ旗、「小〇」(こまる)と書かれたのぼり旗やプラカードなど、参加者は工夫をこらしている。県北の大子町からは、特産のこんにゃくのぬいぐるみを着た生産者も参加し、「コメとこんにゃくを食べよう」と訴えていた。 周囲では農じまいも 私は茨城県の参加者とデモ行進に加わった。沿道からは、手を振る人、拍手をする人、スマホで撮る人など、好意的な人が多かった。瓜連から参加した浅川泉さん、秋山東栄さんは「思っていたよりも参加者が多かった。生産者だけでなく消費者の人も多く集まり、コメだけでなく農業をどうするのかについて、共感を持って参加していたのに驚き、すごいなと思った。沿道では『頑張って』と多くの人から声を掛けてもらい、励みになった」と話している。 「令和の百姓一揆」の解散後、明治記念館で活動や今後の方針を話し合う「寄り合い」が開かれ、今後も継続的に運動を続けていくことを決めた。 私がこの一揆に参加して強く印象に残ったのは、菅野さんの「農じまい」という言葉だった。私が住んでいる周りでも、純農村なのに農じまいが進んでいる。14世帯ある組内で農家らしいのはわずかに2軒だけ。空き家もある。現在はコメが値上がりしているが、それでも時給10円では誰も作ろうとはしない。「令和の米騒動」と言われていても騒動は起きていない。消費者と言われている方々、食べるものがなくなったらどうしますか。(元瓜連町長)

運賃値上げを申請 TX 開業以来初 来年3月から

小児運賃と通学定期は値下げ つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道は11日、来年3月に向けて全体で12.2%の運賃値上げを国交相に申請したと発表した。値上げ申請は、消費税の変更による申請を除き開業以来初。 一方、少子化が進行する中、子育て世代が沿線に定着することが重要だとして、SuicaやPASMOなど交通系ICカードによる小学生の小児普通乗車券と、小中高校生や大学生の通学定期は据え置きまたは値下げする。 値上げ率は、定期券以外が8.2%、通勤定期が20.2%。一方、通学定期は15.3%の値下げとなる。 普通券は、ICカードの場合、初乗りが現在の168円から180円に7.1%値上げ。最長距離のつくば駅から秋葉原駅までは現在の1205円から1280円に6.2%値上げする。切符の場合、初乗りは現在の170円から180円に5.9%値上げ、つくば駅から秋葉原駅までは現在の1210円から1280円に5.8%値上げする。 一方、小児運賃は、ICカードの場合、13キロまでは据え置き、14キロ以降は200円均一とする。つくば駅から乗車する場合、みどりの駅までは据え置き、みらい平駅以降は200円均一とする。切符の場合は大人の半額となり、つくば駅から秋葉原駅までは610円が640円になる。 定期券は、通勤定期は現在は平均割引率が40.6%なのに対し、値上げ後の割引率は37.4%と縮小して値上げする。つくば駅から秋葉原駅までの場合の通勤定期は1カ月当たり、現在の4万3300円から4万7500円に9.7%値上げになる。 一方、生徒や学生の通学定期は子育て世代の負担軽減のため、平均割引率を現在の60.4%から70.0%に大きくして、値下げする。つくば駅から秋葉原駅まで通学定期の場合、1カ月当たり現在の2万8870円から2万3040円と20%値下げになる。加えて小児の通学定期は19キロ以降は1カ月当たり5000円均一とする。つくば駅から乗車する場合、守谷駅以降の小学生の通学定期は一律5000円となる。 3カ月と6カ月の定期の割引率は、通勤定期、通学定期いずれも割引率を縮小し、3カ月は5%から2%に、6カ月は10%から4%にする。割引率を縮小したとしても通学定期は全区間値下げになるという。 開業20年、大規模更新が急務 TXは2005年8月の開業以来、乗客数は順調に増加し、19年度は、06年度の2倍の約1億4310万人になった。20年度はコロナ禍の影響で19年度の70%の1億45万人に落ち込んだが、その後徐々に回復し23年度は19年度の97%の1億3868万人になった。 利用者数の増加に伴いこれまで、6両編成の車両を当初の30本から現在41本に増やしたり、秋葉原駅の出入口の増設などを実施してきた。今年8月は開業から20年を迎え、経年劣化した車両や架線、軌道など鉄道施設の大規模更新や、混雑対策のため車両を6両編成から8両編成にする長編成化、総合基地の増強などが急務になっているとする。加えて、TXの建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対する債務残高が23年度末時点で約4357億円残っており、今後も約20年間、毎年約200億円の返済を行っていく必要があるとして、昨今の物価高騰に対応しつつ、将来にわたって持続可能な経営を行うため値上げを申請したとしている。