金曜日, 4月 18, 2025
ホームコラム国連・安保理 改革が必要に 《雑記録》35

国連・安保理 改革が必要に 《雑記録》35

【コラム・瀧田薫】国連安全保障理事会(安保理)・常任理事国であるロシアがウクライナに侵攻した。明らかに国連憲章違反である。しかし、安保理はこれをとがめることができなかった。安保理の機能不全、この問題は今に始まったことではない。過去、何度も改革の必要が指摘されてきたが、常任理事国側の抵抗にあって実現していない。

イラク戦争時、米国が主導して安保理決議に基づく多国籍軍を編成した事例があったが、今回の対象国はイラクではなく、安保理常任理事国のロシアである。そこで、安保理決議を経ずに米軍主導の多国籍軍を編成する策も検討されたが、バイデン米大統領が第3次世界大戦の可能性を否定できないとして回避した経緯がある。

ところで、4月26日、国連総会に安保理改革案が提案された。その内容は、「安保理で常任理事国が拒否権を行使した場合、総会において拒否の理由について説明する責任を負わせる」というものだ。リヒテンシュタインが主導して起草し、米英仏のほか日本やドイツ、ウクライナなど、国連加盟国193カ国中80カ国以上が共同提案国に名を連ねた。

一方、ロシアや中国はこれに加わらなかった。総会での採択では、提案に対する投票を求める声は上がらず、総会の総意として採択され成案となった。決議の具体的内容は、常任理事国が拒否権を行使した場合、国連総会議長に対し、総会を招集し、拒否権を行使した国に説明を求めること、同時に安保理に状況報告文を提出するよう呼びかけることを義務付けるというものであった。

残念なことに、総会に出席して理由を説明するか否かは、拒否権を発動した国の判断に委ねられるという不徹底なものであり、実効のあるものとは到底思えない。

常任理事国が他国に武力侵攻するとは!

これに対して、今後の安保理改革の手掛かりになりそうな動きもあった。非常任理事国のノルウェーは「安保理におけるロシア非難決議に際して、ロシアは棄権すべきだった」と発言し、その論拠が国連憲章第27条にあることを示した。実は、第27条には「紛争当事国は投票を棄権しなければならない」との規定がある。これを素直に読めば、今回のロシアに該当するはずであった。ただし、これまで、この第27条が発動された事例はない。

もともと、安保理において、常任理事国が武力をもって他国に侵攻すること自体が想定されていなかった。今回のロシアによる武力侵攻はその例外が実際に発生したということであり、その意味で、安保理の機能不全、ひいては国連の制度疲労が極限に達したということになる。

これまで、日本政府はドイツ政府と連携して、「常任理事国の枠の拡大」を主張し続けてきたが実現していない。今回、ノルウェーの提案を積極的に支持するとともに、「準常任理事国」を創設する選択肢を議論の俎上(そじょう)に乗せるなど、積極的に動くべきであろう。国連憲章に通底する憲法を保持する国として、日本ほど国連を立て直す役割にふさわしい国はない。(茨城キリスト教大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

6年間で280件、誤った発信者名で通知 つくば市

福祉事務所長と市長業務の区別誤る つくば市は17日、認可外保育施設に対する指導監督事務と生活保護に関する事務について、法令や市の規則に定められた福祉事務所長が行うべき業務と、市長が行うべき業務の区別を誤り、2019年度から24年度まで6年間で計280件について、誤った発信者名で通知を出していたと発表した。 市社会福祉課によると、認可外保育施設の指導監督については、毎年1回行っている指導監査などの立ち入り調査や調査結果の通知を、23年度は63カ所に対し128件、24年度は54カ所に対し108件、計236件の通知文の発信者名を、つくば市長名で出すべきところ、市福祉事務所長名で発送していた。 児童福祉法に関わる認可外保育施設の指導監督事務については、権限が知事から市に移譲され、さらに市長から市福祉事務所長に委任された。その後22年度末に市の規則が改正されて市福祉事務所長への委任が削除されたことから、つくば市長名で通知を出すべきところ、市福祉事務所長名のままで発送していた。 一方、生活保護行政に関わる事務については、2019年度から24年度までの6年間で計44件の通知文について誤った発信者名で通知していた。具体的には①遺留金品の処分について、金融機関に対し23年度と24年度に計3件、市福祉事務所長名で通知すべきところ市長名で通知を出していた ②医療扶助や介護扶助の損害賠償請求に関しては、保険会社に対し20年度から24年度までの5年間で計5件、市長名で通知を出すべきところ福祉事務所長名で出していた ➂扶養義務者への費用の徴収に関しては、受給者に対し19年度から23年度まで5年間で計36件、市長名で通知文を出すべきところ、市福祉事務所名で出していたという。 生活保護法に関わる生活保護の行政事務については、市の規則により、市長から福祉事務所長に委任されている事務と委任されていない事務があるにもかかわらず、一部の通知文で誤った発信者名で通知していた。 今年4月、社会福祉課内の職員から指摘があり、過去にさかのぼって調査したところ、誤りが分かった。市の規則について、当時の管理職を含む職員の認識不足が原因という。 今後の対応として市は、市ホームページに関係機関に対するお詫びと、通知文の内容は無効でない旨を掲載すると共に、関係機関と関係者に順次、説明と謝罪を行うとしている。 再発防止策として、根拠法令と市の規則を再度確認し、管理職を含む課内職員全員で適切な運用を徹底していくとしている。 福祉事務所は、社会福祉法に規定された福祉に関する事務所で、福祉6法に定められた事務を行う社会福祉行政機関。市役所とは別の行政機関になるが、市役所内にあり、市社会福祉課など市の関係部署の職員で構成されている。福祉事務所長は市福祉部長が務めている。

「砂の器」の父と子の旅《映画探偵団》87

【コラム・冠木新市】脚本家、橋本忍が橋本プロダクションをつくり、その第1回作品に選んだのが「砂の器」(1974年)だった。すでに脚本は十数年前にできていた。 当初、ハンセン病の父と子を描いた松本清張の原作は非常に入り組んでおり、橋本忍は頭を抱えたそうだ。だが原作にある「その道中どんなことがあったか、それは親子のこじきにしかわからない」との「父と子の旅」の1節に注目し、そこから脚本を構成、共同脚本の山田洋次と仕上げた。松竹で製作予定だったが、内容が暗いためか中止となってしまう。 橋本忍の父親が病の床につき故郷に戻った時、父親の床に2冊の台本が置かれていた。「お前の書いたホンの中でまァまァなのはこの二つや」と「切腹」と「砂の器」をあげ「けど、わしはこの砂のなんとかのほうが好きや」と言い、さらに興行師の経験もあった父親は「この外題(砂の器)は、やりさえすりゃ当たる」との遺言を残している。 その後、橋本忍は各映画会社に企画を持ち込むが、様々な理由を付け皆断ってきた。遂には他の仕事の依頼を受けても、「砂の器」をつくらなければ仕事はやらないとまでに。とうとう独立プロダクションを設立し「砂の器」を自主制作することにした。 すると橋本忍は、映画監督の黒澤明から電話で呼び出された。脚本を読み、冒頭の容疑者捜索シ一ンは意味がなく無駄だし、犯人の愛人が血痕の付着した服を切り刻んで電車からまく証拠隠滅シ一ンがおかしいと指摘を受けた。橋本忍もその欠点には気づいてはいたが、しかし最後まで削除改訂することはしなかった。橋本忍はクライマックスの父と子の旅にすべてをかけていた。 「砂の器」の後半がすごい。①警察庁での捜査会議の席上、今西刑事(丹波哲郎)が殺人事件の背景を語るシ一ン②犯人の作曲家、和賀英良(加藤剛)のピアノコンサートのシ一ン③お遍路姿の病人(加藤嘉)と7、8歳の男の子(春田和秀)の旅路のシ一ン。この3つのシ一ンが同時並行で描かれるからだ。 橋本忍の父親は、捜査会議(義太夫語り)とコンサート(三味線弾き)とお遍路親子(人形)が、人形浄瑠璃の仕掛けだと見抜いていた。 丹波哲郎、加藤剛、加藤嘉、春田少年の演技と全編に流れるピアノとオ一ケストラの音楽には誰もが泣かされるはずである。 父と子の旅のシ一ンは、今西刑事の想像であり、作曲家でピアニスト和賀英良の回想でもある。だから主軸は、父と子の旅の場面だ。セリフはなく、音楽のみで表現される。 私がいつも泣かされるのは、少年が山道から小学校の校庭で体育の授業風景をじっと見つめる場面だ。父親は旅をせかすが、少年は動かない。少年の授業を受けたい思いが痛いほど伝わってくる。『砂の器』の父と子の旅の場面は、戦後の貧しかった日本の社会を象徴するものといえる。 私の父は「砂の器」が公開された年に亡くなった。久し振りに「砂の器」を見直した。サイコドン  ハ  トコヤンサノセ。(脚本家)

筑波大と日本国際学園大の学生3人がデザイン スイーツ店がプリン販売

筑波大学(つくば市天王台)と日本国際学園大学(同市吾妻)の学生3人がデザインした商品パッケージラベルが、つくば市桜と守谷市けやき台に計2店舗あるチーズケーキ工房&(アンジー)のプリン3種類のパッケージデザインに採用され、販売されている。 プリンは、茨城県を代表する新たなご当地グルメを決める「シン・いばらきメシ総選挙2024」のスイーツ部門で守谷市代表として出場し、上位10位のファイナリストに選ばれた「ご褒美 いばとろリッチプリン」(税込み626円)と、同店がつくばの学生など向けにお手頃価格帯のスイーツとして新たに開発した姉妹品の「ブルーベリーとろ生チーズぷりん」(同302円)と「濃厚お芋のブリュレプリン」(410円)の3種類。 筑波大芸術学群2年の吉田有希さん(19)と、同大同学群3年の吉野侑良さん(20)、日本国際学園大経営情報学部3年の田麦梨々花さん(20)がそれぞれパッケージラベルをデザインした。吉田さんのデザインは「いばとろ」の文字を、ひらがなを使わず、アルファベットや数字、句読点を用いてユニークに表現している。吉野さんは「ブルーベリープリン」の文字を、実家の祖父が庭先で栽培しているブルーベリーの木をイメージしてデザインした。田麦さんは素材が一目で分かるよう、お芋のイラストを入れ、さらに濃厚さが伝わるようにソースのデザインにもこだわった。 パッケージラベルにはデザインした学生の名前がそれぞれ記載されている。3人には、賞金と副賞のプリンが贈られた。3人は「大変光栄で、うれしい」などと話す。 同店オーナーで県南、県西を中心に飲食店を展開する「いのいち」(本社つくば市天久保)の市村剛社長(49)と、筑波大出身で同市天久保で筑波大生向けにリサイクル品を販売したり家電のリースサービスなどを提供する店「つくばローカルコミュニティ」を経営する山根和仁代表(49)が、デザインコンペを企画し実施した。 両大学の学生約50人から応募があり、同店のスタッフらが審査し選考した。日本国際学園大はデザインの授業の一環で取り組んだ。同大からはほかに、商品化はされなかったが、経営情報学部4年の笹尾栄太さんのデザインが社長賞に選ばれた。 いのいちは22年前につくば市内で居酒屋を創業した。飲食店事業を拡大する中、市村社長によると、たくさんの筑波大生がグループ店でアルバイトをしてくれたことから、恩返しできないかとつくばの大学生を対象にデザインコンペを開催した。今回新たに販売するブルーベリーとお芋の2種類のプリンは、大学生が帰省する際などに、ちょっとした手土産になるつくばのスイーツにしたいと開発したという。 山根代表は「地域の企業とつくばの学生が協力して新しい商品やサービスをつくり、地域を盛り上げることができれば」とし「今後も地域の企業のニーズに応えてコンペを開催していきたい」と話す。(鈴木宏子)

豊里ゆかりの森のスペースキャビン《ご近所スケッチ》16

【コラム・川浪せつ子】つくば市の「豊里ゆかりの森」(同市遠東)の中にある「スペースキャビン」。つくば科学万国博覧会のとき、宿泊施設として造られました。1985年オープンなので、建ったのは40年前です。今でも宿泊に使われています。年数が経ったため、現在11棟あるものを修理し、数棟に減らす予定だそうです。自然の中のこの場所の風景にマッチしています。 園内には、キャンプ場、バーベキュー場、アスレティック施設、テニスコート、宿泊施設「あかまつ」、昆虫館、工芸館などがあります。スケッチに行ったとき、平日にもかかわらず、年配の方から子供まで、たくさんの方が来訪されていました。 昨年からは美術館も開館。日本のトップクラスの画家さんの展覧会が、今までに3回も開催されました。それも無料で! 4回目の展覧会も期待しています。 ゆかりの森の入り口手前に、私の30数年来の友人が「野市場」という農産物販売所と自然体験活動のクラブハウスを造りました。農作物などの販売のほか、ネイチャークラブ20数年のキャリアが詰め込まれた店主さんの野外活動の拠点にもなっています。 お店の本格的な始動は4月25日から。「野市場」の建物も描かせて頂きました。つくばに新しい風を吹き込んで、地域と自然を大切にして、楽しく暮らせる場所になっていくことでしょう。(イラストレーター) ◆「野市場」はこちら。「つくばネイチャークラブ」はこちら。