クラシックギターの殿堂、ギター文化館(石岡市柴間、池田由利子館長)が開館30周年を前に、苦境に立たされている。コロナ禍から運営資金の手当てに窮し、5月いっぱいを期限にクラウドファウンディング(CF)による寄付を受け付けているが、存続にはより長期的な財源の獲得が必要として地域からの支援を呼びかけている。
ギター文化館は1992年11月に開館。歴史的スペインギターの名器コレクション18本を有し、クラシックギターのため特別に設計されたホールを持つ。土浦・つくばからは山向こうの丘陵地にぽつんと立つロケーションながら、コンサートやギター教室などを開催すると、県内や近県から観客や生徒が集まる。根強いファンに支えられて30周年を迎えようとしていた。
しかし、コロナ禍により2020年から演奏会は相次いで中止を余儀なくされ、貸しホールの展開もできなくなった。21年末になって運営母体の東京労音(事務局・東京)から「30周年を迎える11月以降は運営費の補助が難しい」と通告された。労音じたいが組織の高齢化から、運営の厳しさを抱えている。
31日まで受け付け クラウドファウンディング
文化館によれば、光熱費など年間の維持費は約700万円。存続に向け、県や石岡市に、指定管理者制度の導入などによるテコ入れを求めたが、色よい回答は得られなかったという。
このため、4月から700万円を目標にCFを開始した。プロジェクトは集まった資金だけで成立するオールイン方式で、4月中に300万円弱を集めた。池田由利子館長によれば、「CFはあくまで運営資金の獲得が目標。少なくとも1年間延命ができる。その実績をもって地域の熱意を示し、労音側にアピールしたい」構えだ。
存続に向けては、より抜本的な立て直し策が求められる。クラシック音楽に理解のある篤志家を探したり、ネーミングライツの募集を検討したりしている。ここで問題なのは、労音じたい法人格を持たない会員制の任意組織(音楽鑑賞団体)で、文化館は運営施設の一つにとどまること。寄付を受けた際の税金対策などを余計に講じなければならない。
まん延防止重点措置が解除になったことで、文化館は演奏会事業を徐々に再開している。約120席あるうち80人程度の収容での公演になる。土浦出身のギタリスト、木村大さんのコンサートやウクライナ支援のチャリティーコンサートなどを開いた。
これらの開催では、ギター教室などに通う地域ボランティアが運営を支えている。ウクライナ支援コンサートで駐車場に整理に当たっていた土浦市の杉沢百樹さん(75)はギターアンサンブルのサークルに所属している。「毎週のように来ている。公民館に比べればお金はかかるが、年金生活者の楽しみを良質な環境のなか提供してもらっている。何としても残してほしい」という。(相澤冬樹)
◆CFは「CAMPFIRE(キャンプファイア)」のサイトで31日まで受け付けている。電話0299-46-2457 【追記】4月1日から行っていたCFによる寄付受け付けは5月31日に終了。445人の支援者から総額745万3087円を集め、目標額をクリアした。支援の浄財は、サブスクリプション実施運営費(約300万円)、設備維持管理費(約100万円)、宣伝広告費(約100万円)、CF支援者へのリターン及びCAMPFIRE手数料(約200万円)などに用いられるという。