【コラム・坂本栄】つくば市の「高エネ研南側未利用地土地利用方針」を読んで、「牽強付会(けんきょうふかい)」という四字熟語が浮かびました。「自分の都合がいいように強引に理屈をこじつけること」という意味です。市はこの未利用地を民間に一括売却する方針を打ち出し、市民に意見を求めましたが、強引に大方の市民は賛成とこじつけたからです。

運動公園用地 強引に民間一括売却へ

つくば市長の五十嵐さんにとって、高エネ研南側未利用地(総合運動公園用地)問題をどう片付けるかは最大の課題です。そこで、市民の声を聴いて市政を進めるという「五十嵐スタイル」に沿って、民間一括売却案を市民がどう思っているか、パブリックコメントの手法を使って意見を聴取しました。

その内容が議会に配られた「…土地利用方針」に出ています。その概要や市議と市側の質疑応答については、記事「『反対は一部』と民間一括売却 パブコメ受け最終方針…」(1月11日掲載)をご覧ください。

意見を寄せた77人のうち、A:明確に賛成した人が2、B:賛成も反対もせず別の利用法を提案した人が57、C:明確に反対した人が6、D:反対して別の利用法を提案した人が7、E:その他が5人―と分類されています。市は、Bの57人は反対ではないから基本的に賛成とこじつけて解釈、「民間一括売却は支持された」と結論付けたそうです。

何が何でも民間一括売却を押し通そうと、パブコメを曲解する「牽強付会」の見本のような整理の仕方です。常識的には、賛成(A)2人、反対(C+D)13人、対案(B)57人―と分類。対案提出者は賛成ではないのだから、反対多数(B+C+D=70)と集約すべきでしょう。

市民の声を知るには住民投票が一番

「クロ」を「シロ」と仕分けした市も、鋭い市議から「その分類はおかしい」と指摘され、まずいと思ったのか、記事「民間一括売却『明確に賛成』は2.5%…」(1月12日掲載)にあるように、対案提出者(B)57人を賛成に分類することを取り止めたそうです。

それでも、民間一括売却は強行するそうですから、思考経路はどうなっているのでしょうか? 何のためのパブコメだったのでしょうか? 市民の声を大事にする市政を捨て、市民の声を軽視することにしたのでしょうか?

市の最初のパブコメ分類は問題ですが、それに応じた方々が市民の代弁者であることは間違いありません。でも、少ないサンプルで市民の声を計るのは正しくありません。そこで提案です。市民の声を広く聴くため、市長発意による住民投票(総合運動公園の是非で実施)か、サンプル数が多い無作為抽出調査(土浦市との合併の是非で実施)をやったらどうでしょうか?

五十嵐さんは、市民発意(署名活動)による住民投票で、前市長の総合運動公園計画を撤回に追い込んだ活動家です。そのスタイルを貫くには、どちらかの方法で民間一括売却に賛成か反対か聴くのが一番です。(経済ジャーナリスト)

<参考> パブコメの対案と市の対応

▽対案:防災施設、公園・緑地、道の駅、学校、カフェ・レストラン、キャンプ場、再エネ施設、研究所、テーマパーク、商業施設、陸上競技場など。

▽対応:「提案は(土地を買う)事業者が地域に資する施設を敷地内の一部に配置する上での参考資料になる」と、事業者に取り入れを要望。