超高齢社会に向け、健康維持に配慮した食事を摂ってもらいたいと農研機構(NARO、つくば市)の設計したミールセットが近く、売り出される。26日、お披露目されたのは「NARO Style PLUS(ナロスタイルプラス)」。特に内臓脂肪の低減が期待される献立になっている。
ミールセットは50%もち麦ごはん、おかず4種類、緑茶粉末から構成される。β-グルカンを含むもち麦「キラリモチ」、カテキン豊富なお茶「べにふうき」など機能性成分を盛り込んで10メニューを用意した。
機能性表示食品制度の始まった2015年から、農研機構はその科学的根拠を確認する研究を推進してきた。陣頭指揮に当たったのが食品研究部門の山本万里エグゼクティブリサーチャーで、機能性成分を多く含む農産物を使用した弁当メニューの「NARO Style」を設計。18年からは肥満傾向にある被験者を対象にヒト介入試験を行い、平日の日中1食を一定期間継続して食べることで、内臓脂肪面積の減少が認められたと報告した。特に女性がもち⻨ごはんを摂取すると、他の機能性農産物より顕著に内臓脂肪が低下した結果が得られたという。
今回の「- PLUS」は製造、販売にフローウィング(本社・兵庫県姫路市)の参画を得て、量産体制を整えた。献立は、おかずを弁当の3種類から4種類に増やした。酢鶏などをメーンに豆類を素材とした副菜を追加している。管理栄養士によれば、10メニュー平均で1食当たり584キロカロリー、たんぱく質28グラム、脂質17グラムと栄養バランスを整えた。食塩相当量は1.35グラム、通常販売されているお弁当の約2.5グラムと比べ大幅な低塩分を実現した。
ミールセットは現在、三重県亀山市で市民100人に8週間継続して食べてもらう社会実証試験に提供されている。ここでも医療負担の増大が懸念される超高齢社会に向け、生活習慣病対策、特に内臓脂肪を増加させない摂食を通じた健康維持がテーマになっている。
フローウィングは、1日20万食を提供する体制を整備中。家庭などへ配達する個食パック、社員食堂や施設など配膳で利用する業務用の2つのパッケージを用意し、それぞれ冷凍食品、冷凍湯せんパックとして3月にも売り出す。
小売価格は、おかずパックが546円(税別)から。もち麦ごはん、緑茶粉末を加えたセット価格は1食880円程度からになりそうだが、フローウィング田中勝久社長は「価格優先だと安かろう悪かろうとなる恐れがある。栄養と量を落とすことのないよう価格設定をしていきたい」としている。
Amazon、yahooなどのほか、調剤薬局や介護施設などを通じた新たな流通チャンネルへも展開していく構えだ。(相澤冬樹)