つくば市平塚の「にれ工房」で家屋のリフォームや家具制作業を営む代表の山崎誠治さん(66)が、コロナ禍で苦しむ地域の芸術家を支援している。
山崎さんはコロナ禍で多くの画家や工芸作家、音楽家らが活動の場を失い苦しむ様子を間近で見てきた。コンサートが中止になり、教えていた教室や、作品を販売していたマルシェが次々中止になった。そこで山崎さんが始めたのが、活動の場を失った芸術家へのサポートだ。
音楽家には自宅のスペースを提供し、つくば市による芸術家振興事業の「オンライン文化芸術奨励事業」に向けた動画制作や、来場者数を絞って感染防止対策をしながらの「プチライブ」を企画した。もの作りの場として作家に教室を提供もしている。

「若い芸術家にとって活動できなくなることが一番辛い。コロナが明けた時に必ずチャンスが来る。だから、前を向こうと励ましました」
音楽祭などを長年開催
山崎さんは、つくばエクスプレス開通前年の2004年に千葉県から転居し「にれ工房」を開業した。仕事の傍ら、芸術を通して人が集まり楽しめる場づくりとして、研究学園での屋外イベント「トワイライト音楽祭」や、小さな子を持つ母親のためのコンサート「ママコン」の開催などを長年続けてきた。

つくばには、筑波大学芸術学群で学ぶ学生や、県内外で活躍する音楽家や作家など、芸術活動を生業とする市民が多数暮らしている。地元にも活動の場を作り、地域の人との橋渡しができればと考えてきた。しかし、コロナ禍で人が集まるイベント開催が難しくなった。「このままではダメ。新しいことを始めよう」と思った。
ケーブルテレビと計画
今後は地元ケーブルテレビとの企画で、にれ工房で収録した音楽家の演奏をテレビで放送する「つくば音楽祭」を計画している。毎回収録には少数だが観客も入れる予定だという。
また、市社会福祉協議会ボランティアセンターのメンバーとして始めた「ちいかつ(小さな地域の活動)」では、地域の先輩たちとの交流を通して、芸術・文化活動に悩みを持つ人がヒントを得てもらえるような場作りを始めた。「つくばは、芸術の街として大きな可能性がある」という。
「こんな時期だからこそ、ピンチをチャンスに変え力を発揮することで、若い芸術家たちが自信を持ち笑顔で活動し続けられるよう、伴走できたらと思っています」(柴田大輔)