【コラム・坂本栄】新聞もテレビも本サイトも新型コロナ禍一色です。4月の本欄は『大型コロナ病床をつくば市に』の是非」(4月20日掲載)、「善政? つくば市のコロナ対応」(4月6日掲載)でしたが、今回もつくば市のコロナ対応の話にします。
4月2回のコラムでは、コロナとの攻防を戦争状態に例え、撃退のためには二つの基本作戦が必要であると述べました。「コロナを運ぶ人の移動を抑える」「コロナを運ぶ人が群れない」です。政府の緊急事態宣言も各自治体の対コロナ策も、こういった考え方を軸に組み立てられています。
対コロナ戦の基本を踏まえ、6日のコラムでは、市が2~3月に打ち出した「小中学生の自習のための登校を容認する」善政は「人を群れさせない」という基本に合わない、「市内で宿泊・飲食する人にはおカネを補助する」善政は「人の移動を抑える」という基本を理解していない、と指摘しました。
似たような声があったのでしょうか? 市は4月3日に「自習登校容認」の取り止めを発表、20日には「宿泊飲食者補助」を「宿屋飲食店補助」に組み替えると発表しました。対コロナ戦線の拡大にともない、「群れさせない」「移動を抑える」という目標と、蔓延阻止の手段がかみ合って来たようです。
緊急対策の仕組みに心配な点も
以上は、対コロナ戦の戦略と戦術についての整理です。以下、市が4月20日に議会に説明した緊急経済対策の内容を点検します。対策の詳細は「テイクアウト飲食店に一律10万円 つくば市が1億6000万の緊急経済対策」(4月21日掲載)をご覧ください。
このセット対策は、①テイクアウト推進支援給付事業、②緊急支援給付事業、③市内事業者応援チケット事業、④市内宿泊事業者支援給付事業―から成っています。規模と効果がわかりやすい①②④(直接支援型)については、紙幅の関係もありパスします。
「?」が付いたのは、③です。その仕組みは、市町村で発行されたプレミアム商品券の業種限定・業者救済型と言ってよいでしょう。つまり、文化興業、運転代行、飲食経営など5業種に絞り、コロナ禍による売り上げ減で資金繰りが苦しくなっている事業者を助けるために、将来のサービス提供が約束されたチケットを、市内外の応援者(将来のサービス利用者)に前倒しで買ってもらう、という内容です。
市が2割の補助金を出しますので、応援者は本来価値よりも安くモノやサービスが買えます。事業者も応援者も「めでたしめでたし」ですが、事業者がコロナ禍に耐えられず店を閉めてしまうと、チケットは無価値になるのでは? 事業者が自らチケットを購入し、支払分と補助金を受け取りドロンしたら?―といった、心配な点もあります。
市の関与に安心して、応援者が先払いに応じ、市内の事業者を支援する―。洗練された仕掛けです。でも、クラウドファンディング(寄付感覚もあるリスク承知の投資)とチケット(モノやサービスが約束された商品券)の性格を併せ持つことから、混乱も予想されます。担当課によれば、無価値化に備え保険を掛け、潜在ドロン業者は排するとのこと。制度設計は複雑になりそうです。(経済ジャーナリスト、戦史研究者)