【コラム・坂本栄】本ニュースサイトが1月27日の毎日新聞(4頁オピニオン・メディア欄)で取り上げられました。全国紙の全国欄で話題になったのは朝日新聞(2019年7月13日33頁メディアタイムズ欄)に続いて2回目になります。ネットを使って非営利のNPOが地域ニュースを発信する本サイトの運営モデルが注目されています。
地域メディアの生き残りモデル
詳しくは毎日紙を読んでいただくとして、記事は紙面の半分を占める大きな扱いでした。見出しは「地域報道を担う NPOメディア=厳しい新聞業界 日米の動き=」です。「大学と連携、オンライン」で地域ニュースを伝える茨城県つくばのNEWSつくばと、「データ分析し、調査報道」をしている加州サンディエゴの「アイニューソース」が紹介されています。
「インターネットの普及や広告収入の落ち込みなどで、新聞業界は厳しい時代を迎えている」なか、長野宏美記者は、地域紙の元記者が大学キャンパス内にNPOメディアを立ち上げたという共通性に注目、本サイトと米メディアの活動を伝えています。私と鈴木宏子デスク兼記者が取材を受けました。
半年前の朝日紙は「地域紙 生き残りへの選択」という見出しでした。「ネットで復活 権力監視」をするNEWSつくばと、「発想(を)転換 政治(記事)は排除」する上越タイムス(新潟県)の比較です。記事のポイントについては「NEWSつくばに全国紙が注目」(2019年8月5日掲載)をご覧ください。
要は、朝日は地域紙の生き残り策の違いに、毎日は共通性に、それぞれ注目しているわけです。小さな取材組織の取り組みが大手紙に取材される―面白い時代になったものです。
非営利・ネットはひとつの「解」
本サイトは常陽新聞の「残党記者」が立ち上げたメディアですが、1月25日、茨城大学生による「新聞廃刊のインパクト―常陽新聞がなくなり市民が失ったもの」という題のシンポジウムが開かれました。この研究発表・討論会には私も招かれ、地域紙の苦労とネットメディアの可能性について話しました。
研究や討論内容については、本サイトの記事「茨大生が土浦シンポで問いかけ」(1月26日掲載)にまとめられています。前半で毎日と朝日の記事を紹介したついでに、以下、全国紙と茨大生の質問への回答の要点を記しておきます。
地域紙の盛衰はその地方の盛衰に左右されます。常陽紙の主マーケットであった土浦は、モータリゼーションによって商都としての役割が低下、地域紙を支える力を失いました。代替マーケットとして新都つくばがありましたが、多くの市民の目は首都に向かい、地域への関心はあまり強くありませんでした。
こういった地域の変容と特性以上に、インターネットという新メディア(情報伝達ツール)の登場が決定的でした。印刷機に頼るペーパーと使い勝手が格段に優れたネットでは勝負になりません。つまり、商業ベースの新聞は市場の変化と技術の進歩に振り回されたということです。
でも、地域の健全な発展のために、メディアが持つ社会的機能(税金使途監視、生活情報提供)は必要です。非営利(組織の運営方法)、ネット(使用する伝達ツール)、行政監視(編集方針のひとつ)を組み合わせた本サイトは、地域メディアの「解」モデルになることを模索しています。(NEWSつくば理事長)
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