【相澤冬樹】全国・原木しいたけサミットが29日、つくば市内のホテルで始まった。全国で原木シイタケの生産に関わる農業者や関係者が、同サミット実行委員会(飯泉孝司会長)を組織して開く初めての会合。20道県の生産者はじめ、流通関係者ら約220人が集まって、原木シイタケの置かれた現状と未来図について議論した。
全国から生産者ら200人以上参集
コナラやクヌギをホダ木に菌を植えて栽培する原木シイタケ。オガクズなどを培地にハウス栽培する菌床シイタケと区別する。会合冒頭の「サミット宣言」で表明されたように、近年は生産者の減少や消費の低迷などにより、生産量は減少が続いているという。加えて2011年の原発事故以降、東日本の被災地では依然出荷制限・自粛の規制が解けず、風評被害にも苦しんでいる。
それは、一産業の消長のみならず、里山保全、ひいては循環型社会の構築にも影響を及ぼすとの危機感から、実行委員会は行政・消費者にも連携を呼びかけ、2日間の日程で開催した。当初150人規模の想定だったが、200人を超す参加者が集まった。
会場のホテルグランド東雲(つくば市小野崎)には大井川和彦県知事、五十嵐立青つくば市長はじめ衆参議員らが来賓に駆けつけ、原発事故の影響に苦しむ産地の窮状に理解を示した。そのうえで、産業基盤整備や後継者育成、輸出拡大に向けた取り組みに支援を惜しまないとあいさつした。
サミットでは基調講演、パネルディスカッション、分科会で議論した。パネル討議で、大会会長を務めた飯泉孝司東日本原木しいたけ協会代表理事は、つくば市周辺の5人の生産者は震災前、福島県下に合わせて1200ヘクタールの山林を手当し、20年かけて順繰りにホダ木を伐り出す計画でいたが、原発事故で産地を他県に求めざるを得なくなった事例を紹介した。これは山林資源の管理も放置するという意味で、森林の荒廃に直結する。「原木シイタケは里山管理のカギだった」という立場だ。
大分県から参加の阿部良秀日本椎茸農協会長理事も、国東半島宇佐地域の「世界農業遺産」認定に、干しシイタケ産業が果たした役割が大きかったと述べた。消費者はシイタケの購入を通じ地域の持続可能性に寄与してきた。今後の振興は「出口戦略に尽きる」として、食品機能性を絞りこんで健康志向に応えることなどが海外展開を図っていくうえでも大切とした。
「サミット宣言」は、若手・後継者団体の「森のゆかり」長浜隆行代表が読みあげた。「生産者及び関係者は、伝統ある原木シイタケ栽培の技術を受け継ぎ、時代の変化に対応した先進的な経営を取り入れ、日本の豊かな森林資源の有効活用と環境の保全を図り、中山間地の林業者、流通業者、消費者の皆様方すべてに資するように、原木シイタケの発展をめざす」とアピールした。
サミットは2日目の30日、同市中野のなかのきのこ園に会場を移し、原木シイタケ栽培の現地を視察、植菌ロボットの展示、創作シイタケ料理の昼食会などを行い散会する。