金曜日, 7月 18, 2025
ホーム土浦【レンコン歳時記】㊦ まっすぐ育てよ 令和の種ハス

【レンコン歳時記】㊦ まっすぐ育てよ 令和の種ハス

【相澤冬樹】農産物の市場流通に品質面でお墨付きを与える県の銘柄産地制度で、レンコンは1989年にかすみがうら市(霞ケ浦地区)が初指定を受けた。以来、小美玉市、河内町、土浦市、稲敷市、阿見町の順に指定されてきた。今や若い農業者や農業後継者が好んで取り組みたがる人気作物となっており、県のレンコン産出額は2016年、153億円で全国1位、レンコンは平成の30年間を代表する品目になった。

この間、金澄(かなすみ)系統の白くふっくら、シャキシャキ感ある食味のレンコンが定着したが、産地や生産者の間で品質や収量にばらつきが出ている。特に嫌われるのが「すねあがり」と呼ばれる現象。基部から徐々に老化し、茶色に変色して商品価値をなくす。

県農業総合センター生物工学研究所(笠間市)は、2013年度から「レンコンの優良系統選抜」試験を実施しており、収集や選抜、品質評価を繰り返してきた。食味・食感や形状・収量などのほか、浅めの場所で掘れる作業性なども考慮して次世代レンコンの作出に取り組んだ。

4系統を選出

2018年には県を代表するレンコンとして、「ひたちたから」「パワー」「みらい選抜」「金澄39号」の4系統を選出した。「ひたちたから」は既登録の品種で、早期肥大性があり、収量も多い。柔らかな食感が特色。「パワー」は肉厚のため(穴が小さい)断面形状の評価が高かった。前者二つが年内の掘り取りに適した系統とされた。

「金澄39号」は、すねあがりの程度が低く、年明けの収穫に向く。甘みがあり食味評価も高い。やはり年明けの掘り取りに適した「みらい選抜」は色白で外観がいいのが特徴という。

4系統の品種は、JA水郷つくばなど県内4つのJAに引き渡され、現在はそれぞれの増殖圃(ほ)に定植された。今夏の成長による増殖を待って、優良な種ハスをさらに選抜し、来年から生産農家に供給される。名実とも「令和種」のレンコンが市場や食卓に並ぶのは来年末以降になりそうだ。

優良系統の選抜に取り組んだ生工研の堀井学主任研究員によれば、「不適切な種ハスは確実に取り除きたいので青年部とかレンコン部会の作付けを見にいったり、相談に乗ったりしたりしているが、見極めには苦心している」そう。まっすぐで子ハスのそろったものを選ぶよう指導しているという。

ちなみに、4つの系統とも花の色は白が基調の「爪紅」になる。咲いた花の色で識別するのは難しく、湖岸のハス田が色とりどりの花で飾られることはないそうだ。(終わり)

種ハスの掘り取り作業(同)

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キリストとガンマン《映画探偵団》90

【コラム・冠木新市】1960年代後半から1970年代にかけて、『アポロンの地獄』(1967)、『テオレマ』(1968)、『豚小屋』(1969)、『王女メディア』(1969)など、荒々しくも美しい映像で映画青年をとりこにしたイタリア映画の監督ピエル・パオロ・パゾリーニがいる。私も魅了された一人だったが、いつしか語られることもなくなり、レンタルビデオ屋にも作品が置かれておらず、テレビでの放映もなかった。 ところが2000年代に入り、NHKで長篇第3作『奇跡の丘』(1964)が放送された。見逃していた作品なので録画して見た。出演者に全員素人を起用し、イエス・キリストの誕生から死後の復活までを描くドキュメンタリータッチの白黒作品である。その荒々しい迫力に圧倒され、パゾリーニ作品では私の一番のお気に入りとなった。 荒涼とした景色のなか、キリストが我々観客に向かってする説法姿はまるで政治家の演説みたいで、エネルギッシュな場面が連続し納得させられる。 キリストが奇跡を起こすシ一ンなども、顔に腫れ物のできた男が清めてくださいとキリストに訴えると、『清められた』の一言で腫れ物は消えている。短く3カットで描かれる。バックには黒人霊歌のような歌声が流れるが、非常にあっさりしていて、ありがたいとの余韻に浸る間がない。つまり宗教映画の感じがしないのだ。 さらに、キリストの弟子たちのキャスティングは個性の強い悪役を思わせる顔で占められている。逆に、王様や聖職者や貴族たちは上品な顔の出演者をそろえている。極めつけは、かれんな美少女サロメがヘロデ王の前で舞いを披露し、王様が褒美に何が欲しいかと尋ねると、ヨハネの首が欲しいという場面である。見た目の美しさとは裏腹の残虐な発言がショッキングだ。 C・イ一ストウッド西部劇の見方 『奇跡の丘』は西部劇とどことなく雰囲気が似ている。1964年10月にイタリアで公開された。その1カ月前には、セレジオ・レオ一ネ監督、クリント・イ一ストウッド主演のマカロニウエスタン『荒野の用心棒』が公開された。荒野を旅するキリストはイタリア製西部劇の旅する主人公と重なるものがある。 マカロニウエスタンで世界的なスターとなったクリント・イ一ストウッドが、アメリカに戻り監督主演を務めた最初の西部劇は『荒野のストレンジャ一』(1973)だ。原題は『放浪者』である。街の全員から見捨てられ、悪党たちに殺された保安官が幽霊になって現れ、その街に復讐する話であるが、見た目は生身の人間なので実に奇妙な様子に映る。 また、同じく監督主演を務めた『ペイルライダー』(1985)も牧師のガンマンだが、こちらも一度死んでいて、7人の悪党保安官と闘う話である。この2本はキリストのイメージが込められており、表裏一体の作品となっている。そういえば、『荒野の用心棒』(原題「一握りのドルのために」)の最初のタイトルは『マグニフィセント・ストレンジャ一』(素晴らしいよそ者)だった。 私が見てきたクリント・イ一ストウッドの西部劇ヒ一ローは、キリストがモデルだったのかもしれない。 現在、参議院選挙の真っ最中だ。各候補の演説を聞いていると、『奇跡の丘』のキリストやサロメの姿が彷彿(ほうふつ)とさせられる。当選してからも民衆のために働いて欲しいものだと切に願う。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)