金曜日, 9月 11, 2026
ホームつくばがん患者や家族らが自由に集える「がんカフェ」開設 つくば市

がん患者や家族らが自由に集える「がんカフェ」開設 つくば市

9月にライトアップやイベント

がん患者や家族、支援者らが自由に集えるがんカフェ「レモンテラス」が今年4月、つくば駅近くの同市吾妻、中央公園レストハウス(市民ギャラリー隣り)で始まった。つくば市から委託を受けて運営するのは、市内で小児がん当事者や家族を支援する市民団体「ヒスターズナウ」(照井美穂代表)。世界小児がん啓発月間の9月、照井さんが働き掛け、中央公園前のつくばエキスポセンターに設置されている実物大H2ロケットのほか、つくば市役所、水戸芸術館がシンボルカラーの金色の光にライトアップされる。中央公園水の広場では9月5日、ヒスターズナウによる啓発イベントも開かれる。

ヒスターズナウは、次男をがんで亡くした照井さんを中心に2021年5月に発足した。レモネードの売り上げを小児がんの治療研究費に寄付する「レモネードスタンド」や、入院する子どもに付き添う家族への食料提供、院内売店で使えるクーポン券の発行といった「院内家族サポート」、啓発イベントなどに取り組んでいる(22年6月10日付25年2月1日付)。

がんカフェは2024年から約2年間、市の補助事業として同市二の宮のレンタルカフェ「ひふみ杏つくるひとcafe」のスペースを借り、週2日のペースで開いてきた。今年4月から市の委託事業となり、中央公園に移った。毎週月曜と金曜の午前11時から午後3時まで開く。延べ床面積は約40平方メートルで、テーブルが四つといす、本棚などが設置されている。予約は不要で出入りも自由だ。市の委託費は年間約70万円。8月28日現在、延べ280人余りが利用した。

カフェの中には自由に読めるがんに関連する書籍がある

気軽に立ち寄れる場所

利用者は、病院から紹介される患者や家族も多く、小児がん治療中の幼い子どもから60代ほどまで幅広い。特に多いのは40代、50代の働き盛り世代。中高生が来ることもある。親ががんを患い入院中、家のことを自分がしなければと頑張っていても、病気の親本人にも、友人にも不安を見せづらい。そんな中高生ががんカフェに来て「怖かった」と気持ちを口にすることもあるという。

利用者の一人で、がんを患う夫をもつ市外に住む女性は「話を対面で聞いてもらえる、いつでも来られる場所を探していた。ここに来ると明るい気持ちになれる。必要以上に話さなくても、互いの気持ちを分かり合えるという安心感がある」と話す。女性は病気の夫を支えてきた末に、自分の方が「抜け殻になった」ように感じ、電話相談などを利用していた。しかし次第に、対面で誰かに話したいという思いが強くなった。「初めて来た時、夫の手術までの道のりや、自分の心が砕けてしまったように感じたことを、そこで出会った人が長い時間をかけて聞いてくれた。その後も通うようになり支えになっている」という。

総合案内所のように

建物はガラス張りで四方から光が差し込む。入りにくさを感じないように、外から中の様子が見える建物の特徴を生かし、あえてカーテンを閉めず、入り口の扉も開けたままにしている。室内には、がん治療に関するイベント案内や専門書、子ども向けの絵本などを置き、資料は外から見える窓際に並べる。「資料だけ見せてもらっていいですか」と入ってくる人もいる。そこで、予防について知りたいのか、治療中の情報が必要なのか、患者会などのつながりを求めているのかを聞き、その人に合った情報を案内する。「実は自分ががんで」「家族が治療中で」と打ち明ける人もいる。

窓際に資料が並ぶ

定期的にヨガや編み物、「がんと運動」をテーマにしたセミナーなども開き、訪れる人同士が交流できるきっかけをつくる。「ここを、がんに関する『総合案内所』のような場所にしたい。それぞれに合った場所や支援につながる『入り口』になることができれば」と照井さんは話す。

孤独だった

照井さんが、がんカフェを始めた背景には自身の経験がある。2020年、がんを罹った次男の治療に付き添った。休職し、病院に泊まり込んで看病する中、思いを相談できる支援機関と出会えず、孤独だった。「大人も子どもも関係なく、経験を分かち合い、がんと向き合っている人たちが同じ空間に集える場所を街の中につくりたかった」と振り返る。

病院などで専門家に相談することと、当事者や家族同士で話すことには、それぞれ異なる役割があると照井さんは話す。「必要な時に、専門家、当事者、家族、地域の人など、いろいろな関わり方を選べることが大切」。「2人に1人ががんになる」と言われる一方、がんになった人から「周りにがんの人がいない」と聞くこともある。照井さんは、実際には病気について周囲に言えない人が一定数おり、それが孤立につながっているのではないかと考える。

「がんと向き合うのは当事者だけではない。家族、友人、職場の同僚、医療者など多くの人が関わる。がんの人だけを特別な場所に囲い込むのではなく、地域の中で自分の生活の場を変えずに過ごし、言いたい時には言える環境をつくりたい」。ある日、自分や家族に病気が分かった時、「あそこに行けば話を聞いてもらえるかもしれない」と思い出してもらえる場所にしたいと話す。

小児がんの子どもたちにエール

世界小児がん啓発月間のライトアップは、小児がんに関わる学会や支援機関などが推進する毎年9月の啓発キャンペーンの一環で、世界各地の名所やシンボルを金色にライトアップしたり、金色のリボンを掲げたりして、がんにかかる子どもたちへの支援を表明する。つくば市役所は1日から15日まで、エキスポセンターは5日、水戸芸術館は9日に点灯する予定だ。ヒスターズナウによる5日の啓発イベントは午後4時から、竹を使った手製ランタン制作のワークショップと、小児がん支援への寄付を目的としたレモネードスタンドを開催。完成したランタンを広場に並べ、日没後、金色にライトアップされた実物大H2ロケットとともに点灯する。

照井さんは「9月は小児がんの啓発月間。今、がんと向き合い頑張っている子どもたちがいることを知ってもらい、みんなでエールを送りたい。会場に来ることでも、SNSで知ることでもいいので、より多くの方に関心を持ってもらえたらうれしい」と話す。(柴田大輔)

◆小児がん応援企画「ゴールドリボンライトアップ2026インつくば」は、9月5日(土)午後4時から7時まで、つくば中央公園水の広場で、手製ランタン制作ワークショップ、レモネードスタンド、メッセージの展示などを行う。参加費無料。ヒスターズナウの活動は公式ホームページへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

別館宴会場「昴」を大改修 ホテル日航つくば

ホテル日航つくば(つくば市吾妻1丁目)は別館大宴会場「昴(すばる)」の大改修を進めていたが、このほど工事が完了、10日、報道機関などへの内覧会を開いた。天井照明装置、影像音響装置、床カーペットなどが一新され、「幅広い用途に対応できる宴会場として生まれ変わった」(古澤聡総支配人)。改修費は約3億円という。 同ホテルは、1985年開催のつくば科学万博に合わせ、1983年「筑波第一ホテル」として開業。別館は1990年に完成した。その後、ホテルオークラ(本社東京都港区)が運営を引き継ぎ、2001年「オークラフロンティアホテルつくば」に名称を変更。さらに経営権もオークラが継承、同社による日本航空系ホテル買収から10年後の2020年、現ホテル名になった。 筑波山稜線、桜川水面をイメージ 改修は大きく分けると3分野。天井照明は蛍光灯からLEDに換え、明るさを従来の3倍にし、スポット照明に動作性を持たせた。プロジェクターは後方壁面に備え付け(これまではフロアーに設置)、壁面スクリーンも電動操作(同手動操作)にし、音響器機には音質劣化抑制システムを導入した。カーペットは、紫峰・筑波山の稜線、市内を流れる桜川の水面などをイメージできるデザインのものに張り替えた。 古澤総支配人は「3分割可能な大宴会場は約700平方メートルの広さがあり、県南にある宴会場としては最大級。式典、宴会、結婚式などの快適性だけでなく、各種の会議に対応できるよう、照明器具や会議装置の機能性もアップした」と話す。 新装で増収目指す 同社の2025年度の売上高は18億2000万円。今年度は20億円を見込む。収入の半分を占める宿泊部門は外国人観光客を呼び込むことで増収を図り、宴会部門は新装会場の稼働率アップで増収を目指す。さらに、両部門の活性化を飲食部門につなげ、レストラン「セリーナ」、中国料理「桃李」、「常陸牛 山水」などの利用者増も狙う。(坂本栄)

投票時間1時間繰り上げ午後6時まで つくば市選管

つくば市は9日、今後実施される選挙について、投票日当日の投票時間を、これまでの午後7時までから1時間繰り上げて午後6時までとすると発表した。1日開いた市選挙管理委員会(野尻等委員長)で決めた。12月4日告示、13日投開票の県議選から実施される。 繰り上げの理由は、期日前投票を利用する投票者が増加していること、当日投票者の9割が午後6時までに投票を済ませていることなど。市選管事務局によると、昨年9月の知事選での同市の期日前投票の投票率は39%、今年2月の衆院選は54%だった。投票所立会人の従事時間が長時間に及んでいることを懸念する意見も出されたという。 投票日当日の投票開始時間に変更はなく、午前7時から。期日前投票の投票時間も変更はなく、市役所投票所の場合、午前8時30分から午後8時まで。 投票時間が繰り上がるのに伴い、12月の県議選の開票作業は、これまで午後8時20分から開始していたものを、午後8時からに20分繰り上げる予定だという。 公選法は午後8時まで 一方、公職選挙法は投票時間を午前7時から午後8時までと定め、特別の事情があり投票に支障をきたさない場合に限り、4時間以内の範囲内で繰り上げなどを認めている。 つくば市では2012年から、投票時間を法定の午後8時までから1時間繰り上げて午後7時までとしてきた。 県選管によると、今年2月の衆院選では、県内44市町村中、38市町村が午後6時で当日の投票を締め切り、つくば市を含め5市町が午後7時までとしていた。公選法の規定通り県内で唯一、午後8時までだった牛久市は今年度から、当日の投票時間を2時間繰り上げ、午後6時までとすると発表している。12月の県議選の各市町村の投票時間について、県選管はこれから調査する予定だとしている。(鈴木宏子) 【訂正 10日午後1時10分】3段落目、市役所投票所の期日前投票の開始時間は午前9時ではなく8時30分からの誤りでした。

ワイン用ブドウの収穫が最盛期 筑波山麓

筑波山麓で8月末からワイン用ブドウの収穫が始まり、最盛期を迎えている。収穫作業は9月末まで続く。つくば市は2017年に「つくばワイン・フルーツ酒特区」に認定され、現在市内には四つのワイナリーがある。 筑波山麓には、筑波大出身で、ワイナリー「ビーズニーズヴィンヤーズ」(同市神郡)を経営する今村ことよさん(53)のブドウ畑が広がる。今村さんは2015年から栽培を始めた。現在、山麓の沼田地区と臼井地区の2カ所に計約1.5ヘクタールあり、白ブドウのシャルドネ、黒ブドウのシラーなど10品種を栽培している。今村さんは今年6トンの収穫を目指している。 ブドウの栽培からワインの醸造まで今村さんが一人で担っているが、収穫作業は人手が必要になる。初日の8月30日にはSNSの呼び掛けで、ワイン作りを学びたいと、つくば市内や東京都、千葉県などから、50歳代の男女6人が集まり、ボランティアで収穫を手伝った。 ボランティアの6人はこの日、沼田地区のブドウ畑でジュースとして利用するメルローなどの品種を収穫した。今村さんから指導を受けながら、剪定(せんてい)ばさみを用いて、ていねいに収穫していった。千葉県習志野市から参加した公務員、角田圭吾さん(54)は「各地域のブドウ畑でボランティアとして収穫作業に参加している。今村さんの指示は的確で細かくありがたい」と語り、都内から参加した50代の男性は「つくばでワインが出来るのに驚いた。山麓の景色の良いところで作業できるのはうれしい」と話していた。 収穫作業と併せて、今村さんのワイナリーでは9月4日から、今シーズンのワインの仕込みが始まった。八千代町と埼玉県入間市の2軒のブドウ農家も加わり、それぞれ収穫したブドウを持ち込み、ブドウの品種や状態に合わせて、機械でブドウの茎や軸を取り除いたり、圧力をかけてブドウを絞る作業などを実施した。 この日持ち込まれたブドウは、今村さんが700キロ、八千代町のブドウ農家が700キロ、入間の農家が220キロの合計1620キロ。仕込み作業で出た搾りかすは、今村さんが肥料として利用する。2軒のブドウはそれぞれ、今村さんが受託しワインを醸造する。 今村さんは「今年はここ数年に比べて気温が低く、ブドウの色づきも良く、昨年よりも良いブドウが収穫出来そうだと期待している。収穫や仕込みの作業がまだまだ続くが、良いワインになるようにがんばっていきたい」と話している。(榎田智司)

「禍根を残す」「立つ鳥跡を濁す」《ハチドリ暮らし》65

【コラム・山口京子】どうやって始末をつけるのか? どう片づけを考えるのか? 個人であれ、社会であれ、「禍根を残さず」とか「立つ鳥跡を濁さず」という言葉は死語になってしまったのでしょうか? 科学技術が軍事利用、商業利用されるにつけ、「禍根を残す」「跡を濁す」ケースが増えているように思えます。 今、近代西洋科学には、自然を人間の都合で改変してしかるべし―という姿勢があるような気がしてなりません。科学を利用する人間の欲望のなせる業なのでしょうか。科学技術の成果が商品化され、社会がどんどん複雑化しているのに対し、人間の思考は単純化していると感じます。次第にお手上げ状態で生きるのではないか―そんな不安がよぎります。 人間のすることは自然にかなわないと分かった東日本大震災。福島原発事故のその後について、なぜ詳しい報道がされないのでしょうか? 緊急事態宣言が解除されたとは聞きません。福島の第一・第二原発の廃炉処理はどうなっているのか? 廃炉のロードマップ、時間・費用・技術など、素人には分かりません。それでも、廃炉の費用は税金から支出されるのでしょう。 経済破綻を戦争でウヤムヤに? パキスタンやアフガニスタンで医療活動に従事した中村哲さんの本に、こんな言葉がありました。「(国連難民帰還の)机上のプランは事情を知らぬものには説得力があったが、我々にはまるで粗悪なカリカチュアとしてしか映らなかった」と。それは彼の地を見続けた医師の声ですが、廃炉にも当てはまるのではないでしょうか。 事態がどうなっていくのか…。あれだけの大きな被害があり、今も将来も続いていくのに、責任はだれも取っていないような…。日本列島は地震の活動期に入ったと言われます。その上に、いくつの原子力発電所が建っているのか…。いつ大きな地震が来てもおかしくない今、それらを稼働させることは悪夢でしかないのでは? 各国ともども軍事費が膨張していくとなれば、未来はどうなるのでしょう? 国家は経済破綻を戦争でウヤムヤにするかもという声を聞きます。将来世代に重い負担が課せられていくでしょう。大きな負担と危険が隣り合わせの暮らしを押しつけることは、許されないはずなのに…。(消費生活アドバイザー)