木曜日, 9月 10, 2026
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どう発信しどう対処? 一部誤情報と共にSNSで拡散 中学校の不審者情報

つくば

つくば市内の中学校が作成した不審者情報が、一部誤情報と共にSNSに投稿され拡散した。教育委員会事務局の同市教育局は、保護者の間に不安を引き起こしているなどとして不審者情報を一部修正し再度、保護者に通知した。SNS時代に、どう発信し、どのように対処すべきなのだろうか。

不審者情報は、11月5日、同市内で、女子中学生が自転車で登校途中、年齢20~30代くらいの外国人風の男性3人が乗る車が停車しているのを確認、そのうち2人が降りてきて女子中学生に近寄り、車が自転車に横付けされたが、近くを通りがかった人が中学生に声を掛け、男性らは車に乗ってその場を立ち去ったーなどの内容。この情報は、スマートフォンアプリを使ったデジタル連絡ツールで翌6日、周辺の各学校から保護者に文字情報で伝えられた。

同月18日、今回の不審者情報が匿名でSNSに投稿された。「誘拐未遂事件が発生」と一部事実でない投稿文が書かれ、中学校が作成した「不審者情報連絡票」の画像が添えられた。連絡票は、学校や市教育局など関係部署間でやりとりするための内部文書だった。連絡票に書かれた情報は、6日に保護者に伝えられた文字情報と同じ。

外国人差別のコメントも

SNSでは「外国人による女子中学生誘拐未遂事件」という誤情報の形で拡散した。投稿に対し、外国人に対する差別や偏見とみられるコメントも書き込まれた。SNSでの拡散後、市教育局には保護者や市民から数件、問い合わせがあった。

こうした事態を受けて同市教育局学び推進課は2日後の20日付で、今回の不審者情報の正確な経緯と児童生徒の安全確保の対応について、改めて保護者に通知した。SNSで拡散された内容の一部に誤りがあること、保護者の間に不安を引き起こしていることを「深く憂慮している」と表明した上で、連絡票に書かれた不審者情報の表現が「いろいろな捉え方をされてしまっている」として、表現を一部修正した。

修正箇所は、連絡票の不審者情報が男性3人を「外国籍」と断定していたのに対し、「外国人風」と修正した。男性らが車で立ち去った経緯を連絡票は「車に乗って逃げ、(生徒は)事なきを得た」と表現していたが「車に乗ってその場を去った。生徒は無事だった」に改めた。

同課の小野尚文 学校教育政策監はSNSで拡散した不審者情報連絡票の画像について「内容自体は外に出してもいい情報だが、公文書なので画像になって拡散されたことはまずい。問題意識をもっている」とし「各学校に公文書の扱いについてもう一度指導を徹底したい」としている。内部資料の画像をだれがどこで撮影し投稿したかは分からないという。

学校が不審者情報を発信する必要性については「不審者情報の発信は子どもの安全を守るためで、二次被害を防ぎ、近隣の学校にも注意喚起するため連絡は迅速に行わなければならない」とし「学校や家庭で、知らない人から声を掛けられるなどがあったら、小さい子なら防犯ブザーを鳴らしたり110番の家に駆け込むといった対応方法を教え、子どもが危ない目に遭わない、安全な行動をとれるような指導につなげている」とした。

保護者「怖い気持ちはある」

今回の不審者情報を学校からのデジタル連絡ツールで確認したという市内に住む高校1年と小学6年の姉妹の母親(39)は「まず、怖いと思った」と語り、SNS上で事実と異なる「外国人による女子中学生誘拐未遂事件」として拡散されていることについて「すべての外国人が悪いわけではないので、よくないこと」と言う一方「実際に外国人風の男性に子どもが声を掛けられることはあるので、怖い気持ちはある」と語った。

受け取る側も冷静に 筑波大 秋山助教

筑波大学人文社会系の秋山肇助教

今回の問題について、国籍や移民問題、国際社会などをテーマに研究する筑波大学人文社会系の秋山肇助教に話を聞いた。

公文書の画像が拡散を担保

―外国人風男性の不審者情報がSNSで投稿されたことについてどう思われますか。

秋山 まず大きな問題点として、最初の「不審者情報連絡票」の画像がどういうプロセスで外部に出たかということがある。そもそも内部文書がSNSにアップされたこと自体が問題だ。SNSに「誘拐未遂事件発生」と投稿されたが、「不審者情報連絡票」とされる画像からは事実と確認できないにもかかわらず、「誘拐未遂事件」がSNS上で独り歩きするのを担保してしまったのが、公文書である連絡票だったと思う。

投稿者の文字情報だけだったら『これって本当?』って思う人がいたかもしれない。連絡票の中身を読めば誘拐未遂事件でないことはわかるはずだが、画像の文章まで読まない人もいる。SNSの投稿文だけを読んで「誘拐未遂事件が起きた」と受け取ってしまう人もいる。

そのため「不審者情報連絡票」とされる画像が投稿されることで、外国人による女子中学生誘拐未遂事件が起きたという話が独り歩きしてしまった。尾びれ背びれが付いて、本当に起きているのか分からないことがSNSで広がる怖さはある。

2点目として、つくば市教育局が一部表現を変えて11月20日に保護者宛に二度目の発信をしたことについては、市教育局が、SNSで拡散した内容の一部に誤解を生む表現があったとして「連絡票」に書かれた不審者情報の表現を書き直している。SNSで投稿されている「連絡票」には「外国籍の男性」と書かれているが、本当に外国籍なのかどうかは、本来パスポートなどを確認しなければわからないため正確ではないと思われる。ただ、その場で緊急で不審者情報を聞き取って内部文書を書く場合は、内容が必ずしも正確でないこともある。しかし保護者などの外部に情報を出す時、内部文書と同じ記載で良かったのかというのがもう一つの論点としてあると思う。

人は負の感情に強く反応

―SNSの投稿に対するコメントで、「外国人が怖い」といったコメントがありました。外国人差別ではないでしょうか。

秋山 子どもを守る立場にある子育て世代などが、心配事が生じた時に「外国人」に不安を覚えるのは仕方のない一面もあるだろう。子育てをしている状況では、子どもは弱い存在だという前提があるので、親からすると子どもを守らないといけない。子育てをしている状況は余裕がない状況ともいえる。人はリスクがあることから逃げたいもの。子どもを守らないといけないと考える親からすると、外国人にリスクがあると考えたら近づかないというのは、本人にとっては合理的ともいえる。「怖い人」は本来、日本人にも外国人にもいるが、「外国人が怖い」と思っている人に、それが外国人差別だと伝えても理解されるのは難しいかもしれない。しかし社会全体への影響を考えると望ましくないだろう。

人は負の感情に強く反応し、「怖い」という気持ちに強く反応してしまうことも認識しておくことが大切だ。「外国人が怖い」というネガティブな感情がある人に「差別すべきではない」といった「べき論」は効果的とはいえない。強い負の感情が拡散しやすいのはSNSの特徴でもある。

―では「外国人が怖い」という人にはどう対応すればいいのしょうか。

秋山 次の論点になるのは、子どもたちを守るために何が必要なのかということ。外国人でも怖いことをする人はいるが、日本人であっても怖いことをする人はいる。ただ、どういう人が怖いことをするかは現実的に明らかにするのは困難なので、「外国人が怖い」というラベルを貼るのは、恐怖から逃れようとすると合理的かもしれない。そんな中で、外国人が怖いと思っている人に「差別だ」と言ってしまうと、こうした人たちは恐怖からの逃げ場がなくなってしまう。ただ「外国人が怖い」という言葉の「外国人」には、犯罪を犯さない外国人も含まれている。それでいいのか、きちんと考える必要がある。

ではどうすればいいのかということになるが、情報を出す側が誤解のない情報を提供すること、情報を受け取る側が情報をうのみにせずにその正確性を考えることが大切だ。情報を受け取る側は、外国人かどうかに限らず、「怖い」という情報には尾びれ背びれが付くことがあると認識した上で、情報に接する際は「本当は違うかもしれない」という視点を持つことが必要だ。だから、情報を出す側も慎重であるべきだが、受け取る側も、これはどういう情報なのか、冷静に考えなくてはいけない。(伊藤悦子、鈴木宏子)

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