【コラム・先﨑千尋】那珂市歴史民俗資料館で企画展「サツマイモの神様 白土松吉展」が開かれている(11月30日まで)。茨城県内で「サツマイモの神様」と呼ばれてきた白土松吉(以下松吉)が戦前に活動していた那珂市から名誉市民の称号が贈られたことは、コラム179「サツマイモの神様白土松吉が名誉市民に」でお伝えした。
同資料館が今回、松吉展を企画したのは、戦前、県内でサツマイモ増産や灌漑(かんがい)事業などで活躍した松吉のことが市内だけでなく農業関係者からも忘れられており、名誉市民になったことを契機に、埋もれていた松吉の業績を顕彰し、多くの人に知ってもらおうという趣旨からだ。
展示は、松吉の生い立ちから亡くなるまでの一生を軸に、「松吉とサツマイモ」「甘藷(かんしょ)農法の発明」「白土甘藷研究所の設立」「小場江堰(おばえぜき)の改修」などから構成されており、年表やサツマイモの模型、増収法の具体的資料、統計、受賞した黄綬褒章、生家やサツマイモの収穫作業姿、墓地、祭られている「ほしいも神社」の写真などから成る。
松吉は那珂郡農会技手としての業務をこなす中、サツマイモの千貫(3750キロ)取りに挑戦し、夏はサツマイモ畑に寝るなど寝食を忘れて研究を重ね、約30年かけて、とうとう千貫取りの技術を確立した。当時のサツマイモの反収は300キロ程度だったから、松吉は周りから「ほらふき松っつあん」と呼ばれていた。
現在の農林統計でも2024年の全国平均の反収は2500キロ(600貫)だから、松吉の技術はすばらしいものだった。白土式甘藷栽培法とは、保温によるイモの苗床の考案。良い苗を作る(長さ1尺以上、12節以上)。肥料は植える前に施肥。高畝(うね)。苗のブランコ植えなど。
茨城の干し芋産出額は100億円
会場では、松吉の普段着(農作業姿)の写真に合わせて、その人となりが紹介されている。「頭脳明晰(めいせき)。深いサツマイモ愛。真っ黒な手。お酒が大好き。歯は一本もなし。大臣でも知事でも君づけ(忖度なし)。若者より体力あり。おしゃれに無頓着。いつも裸足(はだし)」など。
企画展を担当した同館の玉井千尋さんは「調べていくと、松吉は地味で偉ぶらない、人間味がある身近な人だと思った。いもづる式にいろいろなことが分かった。松吉は自分の時間すべてをサツマイモに費やした。干し芋みたいにかめばかむほど味が出てきて、うまみが分かってくる。この展示を多くの人に見てもらいたい」と語っている。
私はこの企画展に合わせて、11月9日午前10時から同市瓜連の総合センターラポールで「白土松吉の業績とサツマイモ干し芋のこれから」というタイトルで講演を行った。
今、焼き芋や干し芋は、健康食、自然食ブームの人気者となっている。焼き芋はスーパーやドラッグストアなどでも販売しており、大会や博覧会などが各地で開かれている。また、茨城県の干し芋は産出額で約100億円。全国の99%を占めている。干し芋焼酎や干し芋の缶詰、残渣(ざんさ)利用の菓子類など、さまざまな商品も開発されている。
私は講演の中で、松吉の志を受け継ぎ、さらなる試みが那珂市やひたちなか市などで展開されるように、行政や農協、生産者、流通業者が工夫し、努力してもらいたい、と述べた。(元瓜連町長)






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