木曜日, 12月 25, 2025
ホームつくば冬のプールを河童が占拠! 石塚隆則さん つくばの公園で作品展

冬のプールを河童が占拠! 石塚隆則さん つくばの公園で作品展

「見えない気配」を表現

誰もいない冬のプールを、約20体の河童が占拠したー。

つくば市二の宮の二の宮公園で7日から、横浜市在住の現代美術家・石塚隆則さん(54)による屋外作品展「河童(かっぱ)開放区 石塚隆則 野外彫刻展覧会」(ART PARK2025実行委員会主催)が開催されている。公園内の市民プールを舞台に、肌や髪の色もさまざまな、現代的な衣装に身を包む河童をモチーフにした彫刻作品、約20体が展示されている。公園に隣接するマンション1階の「ギャラリーネオ/センシュウ」では、石塚さんによる彫刻、焼き物、墨絵など約50点が展示されている。

「普段から近くにあるけれど、見えていないものは多い。冬のプールもそう。そこは河童の開放区かもしれない。人々から忘れられた場所に、河童がすんでいてもいいですよね」と石塚さんは言う。

プールサイドに展示される約20体の河童

今回の企画は、実行委員会の代表で、ギャラリーネオ/センシュウを営む友田穣太郎さんが石塚さんに声を掛け実現した。二の宮公園を舞台にした実行委による屋外企画は、2023年に続き2回目となる。友田さんは「公園という公共の場所でアートイベントを開催することで、多くの人が美術に触れ、関わるきっかけを増やしたいと思い企画した。美術作品からは、作家が訴えるメッセージや創造性など、目に見えないものを感じることができる。石塚さんの作品を通じて、感じてほしい」と呼び掛ける。

動物は一番の隣人

石塚さんはこれまで一貫して、擬人化したさまざまな動物による絵画や彫刻作品によって、気配など社会にある目に見えない物事を表現し、国内外で作品を発表してきた。どこか憎めない、親しみやすい雰囲気のある作品が特徴的だ。2022年に千葉県で展示したシリーズ作「光射す公園」では、模型の公園の中で思い思いに過ごす彫刻の小動物を用いて、コロナ禍で使用禁止になるなど社会から「異物」化された公園を表現した。東日本大震災の際には、被災地で撮影された一枚の写真に心を打たれ、被災者らが肩を寄せ合い火を囲む姿を、布を用いた擬人化した動物で作品にした。

ギャラリーネオ/センシュウの展示風景

幼い頃から、動物を描くことが好きだった。「動物は、自分と繋がる一番の隣人」だと話す。暮らすのは横浜市。幼少の頃は自然が身近な場所だった。当時からタヌキやイタチ、リスなどの動物が身近にいた。宅地開発が進み工業団地が近所にできた現在も、暮らしの中で多くの動物を見掛ける。「昔より、今の方がむしろ増えている」。里山がなくなり、山から出てきているのではと、想像する。環境の変化に適応し生き抜く動物たちに、「頼もしさを感じる。あるがまま、ただ、そこにいるということを教えてくれる」と話す。

「まれびと」がきっかけつくる

今回の作品制作は、準備を含めて1年を要した。その間に、牛久沼のほとりに暮らし河童をテーマに数多くの絵画作品を残した画家の小川芋銭の足跡もたどってきた。石塚さんは、芋銭が河童を通じて描き続けたのが、「人と自然、現実と幻想の境界にひそむ『気配』」だったのではないか」と話す。

公園のプールが使われるのは、夏の数カ月。その期間が過ぎると使われなくなる。多くの人が集まる公園の中に「空白ができる」。誰からも顧みられることのない都市の空白に現れるのが今回の河童たちだ。

石塚さんが所有する小川芋銭に関する資料も展示されている

自身の手による河童たちを石塚さんは、民俗学者の折口信夫が提唱した概念で、異界からやってきて幸運をもたらす神や精霊などを表す「まれびと」に重ね合わせる。「私たちは、そういった見慣れない存在を『異物』として弾いてしまうことがある。今ニュースになる、外国の方に対する状況もそれに重なる。しかし『まれびと』は、定住している人たちのもとに他所からやってきて、町を活性化させたり、新しいものを生みだしたりするきっかけを作る、大切な存在」だと話す。

今回の展示では、プールの他に、二の宮公園のシンボルとなる時計台の上に、周囲を見渡す河童も1体、展示している。「普段使っているプールや公園がどう変わったのか、地域の子どもたちに観察してもらい、感じた何かを持ち帰ってもらえたら。どんなことでもいいと思う。大人になって振り返った時に『子どもの時、ここにいっぱい河童がいたんだよ』など、自分の子どもに語ってもらえたら。将来の伝説のようになったとしたら、面白いですよね」と笑みを浮かべる。(柴田大輔)

◆アートパークつくば2025「河童開放区 石塚隆則 野外彫刻展覧会」は11月7日(金)から11月30日(日)、つくば市二の宮1-15、二の宮公園屋外プールと、同市千現1-23-4-101ギャラリーネオ/センシュウの2カ所で開催。屋外展示及び同ギャラリーの開館は金・土・日曜、祝日のみ(月~木は休館)。開館時間は正午から午後5時まで。入場無料。問い合わせはギャラリーネオ/センシュウのメール(sen.jotarotomoda@gmail.com)へ。

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