つくば市学園の森2丁目の準工業地域(コストコ南側)に、空調設備工事会社、朝日工業社(東京都港区、高須康有社長)のつくば技術研究所(平泉尚所長)が完成し、25日竣工式が催された。建物自体が最先端の建築設備の実験室であり、ショーケースになっている。今後、空調など建築設備の研究開発のほか、植物栽培技術やワクチン、ゲノム編集作物の研究などに取り組む。現在、千葉県習志野市にある技術研究所を移転する。
同研究所は敷地面積9300平方メートル、建物は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造2階建てで、建築面積3065平方メートル、延床面積3782平方メートル。昨年7月に着工し、完成した。

建物自体には、温度と湿度を分離制御し、捨てられていた排熱を有効活用して除湿する「低温再生デシカント空調システム」や、パイプなどで冷水を供給しサーバーなど発熱機器を効果的に排熱処理する「液冷空調システム」などが導入され、脱酸素社会の実現に向け、実験データをとる。
建物は、室内環境を維持し、大幅な省エネルギーと再生可能エネルギーで年間のエネルギー収支を実質ゼロとするZEB(=ゼブ=、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)を達成し、建築物の省エネルギー性能表示制度BELS(ベルス)の最高評価を取得している。さらに国際的な環境認証の取得に向け申請中という。

平泉所長によると現在、筑波大学と協力して人工光の植物工場におけるゲノム編集作物の生産システム開発を行っており、同研究所でも研究開発に取り組む。市内のほかの研究機関との連携も今後、考えていきたいとする。敷地面積が広いので、今後増設の計画があるが時期は未定という。
25日催された竣工式で同社の高須康有社長は「習志野の研究所建設から43年、創立100周年という記念すべき年に新たに研究所が出来たことは万感胸に迫る。狭隘(きょうあい)な事務スペースや老朽化した建物、実験設備、耐震性の課題を解消する目的で計画した。卓越した美しさと機能性を兼ね備えた意匠設計、環境への細かな配慮や工夫の結果、高い環境性評価基準を満たし、認証を取得した。建物の設計・監理を行った日建設計のお陰。この素晴らしい建物にふさわしい企業になれるよう社業に邁進したい」とあいさつした。式典には県立地推進東京統括本部の島田敏次統括本部長らが出席した。

同社は1925年、紡績会社の温湿度調整や除塵装置の施工会社として大阪市で創業。1950年代には高度経済成長による建設ブ-ムの中、産業施設や一般ビルの空調設備工事に取り組み、業容を拡大しながら、省エネ空調システム開発にも取り組んだ。1967年には東京に本社を移転。1983年に千葉県習志野市に技術研究所を建設した。(榎田智司)