黒字化予定も大幅減収
つくば市が出資するまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、内山博文社長)の2024年度決算(24年4月-25年3月)が9日開かれた同市議会全員協議会に報告された。24年度の最終的な当期損益は約3258万円の赤字となり、188万円の赤字だった前年度より大幅に赤字が増えた。赤字は設立以来4年連続。
内山社長は「当初は4年目に黒字化を予定していたが大幅な減収となった」とし「(つくば駅周辺でスーパーなどの商品を配送する)自動配送ロボットの受託事業(約6000万円)が24年1月に無くなってしまったため」だと説明する。同社は市中心市街地の活性化などを目的に2021年4月に設立された第3センターで、つくば駅近くのつくばセンタービル1階で貸しオフィスなどを運営する。
元市職員のナンバー2が退職
一方、元市職員で、設立以来ナンバー2として同社の経営を担っていた小林遼平専務が今年3月末で退職したことが明らかにされた。内山社長によると退職理由は「個人的なもの」という。現在専務は空席で、内山社長が常勤で経営に当たっているとしている。
今年4月から新役員に、常陽銀行の子会社でファンドを運営する投資会社、常陽キャピタルパートナーズ(水戸市)の池田重人社長が非常勤の取締役に加わった。
社債5500万円を追加発行
同社は、つくばセンタービル1階を貸しオフィスなどに改修して開業する際、社債を発行し約3億1600万円を調達して工事費にあてた。24年度は2期工事分として新たに同ビル4階の市吾妻交流センター跡地に貸しオフィスを増やす工事(約5500万円)と、1階のオフィスを間仕切りして区画を狭くするなどの工事(約1500万円)を実施した。工事費は計約7000万円で、工事費の一部として今年6月、新たに社債を追加発行して常陽キャピタルパートナーズから約5500万円を調達したことも明らかにされた。
社債の償還(返済)については、最初に発行した約3億1600万円の元本償還が24年度から始まり、24年度は500万円を償還した。25年度は2000万円の償還が求められる。さらに今年6月に追加発行した社債5500万円の償還は来春から始まるという。
3カ年の見通し示すも
議会の要請を受けて、内山社長は25年度から3カ年の事業計画目標を今回初めて議会に示した。売上高から経費などを差し引いた営業利益は、25年は1439万円、26年度は2498万円、26年度は1960万円になるとする強気の見通しが示されたが、ただし営業外費用の社債の償還などを加えると最終損益は赤字のまま。
決算報告に対し市議からは「3億1600万円借りた社債の返済は24年度は500万円だったが、25年度は2000万円、26年度2500万円、27~30年度は各3000万円、31年度は1億4600万円ある。大丈夫か」「小林専務は会社の立ち上げから尽力した。小林専務のあと、営業活動はどうするのか」などの質問が出た。内山社長は「コンサルタントなどの受託事業が順調に積み上がると思っている」「(貸しオフィスの入居などの)営業は基本的に市への問い合わせが多く、人海戦術で動いていたわけではない。私が後方支援から前面に出てマネジメントを行う。3、4年経ち現場の職員も育ってきている」などと答えた。
スーパーシティ実証実験の受注見込む
24年度決算の内訳については、全体の売上高は、前年度より約3100万円少ない1億1826万円となった。売上高から経費(販売費及び一般管理費)を差し引いた、本業で稼いだ利益である営業利益は約2358万円の赤字で、24年分の社債の元本や利息の支払いなど営業外費用を含めると、通常事業の収支である24年度の経常損益は3258万円の赤字になった。
事業別では、貸しオフィスやコワーキングスペース(共同オフィス)、カフェなどつくばセンタービル1階のco-en(コーエン)事業は、売上高が前年度より約880万円多い約5516万円になった。コワーキングスペース(共同オフィス)の月額会員は60人(23年度末は56人)、ビジター会員は1500人超(同1375人)という。25年度は5月に4階の貸しオフィスが開業することから約2110万円増の7626万円の売り上げを見込むほか、26年度は貸しオフィスがすべて埋まるとして9286万円の売上を見込む。
地下駐車場の売り上げは前年度比微増の1404万円(23年度は1360万円)。25年度、26年度いずれも1357万円の売上を見込む。つくばセンター広場の指定管理者としては921万円の売上があり、40件(23年度は29件)を超えるイベントについてアドバイスや物品貸出などの支援をした。
コンサルタントなどの受託事業は、同市のスーパーシティ実証実験の取り組みの一つとして、パーソナルモビリティ―シェアリングサービス「つくモビ」のアドバイザーなどを受注するなどし3775万円の売上があった。25年度以降も同事業の売り上げを見込む。ほかに現在、受託を前提に(地域のつながりをつくる)エリアマネジメントの相談を数件、受けているとした。
一方、23年度にサンドイッチ専門店として事業を継続し約2100万円の売上があったつくばエキスポセンター内のカフェ事業は、借主側の事業で継続が難しくなり、25年4月に閉店した。(鈴木宏子)