原因「その時々の管理職の不適切な判断」
生活保護などを担当するつくば市社会福祉課で昨年5月から、不適正な行政事務が相次いで発覚している問題で、市福祉部は23日、実態を調査し改善状況などをまとめた報告書を発表した。これまでに明らかになっている職員に対する残業代未払い、障害者加算の誤認定、県の監査に対する虚偽報告など7つの事案について、不適正な行政事務によって生じた合計額は計4741万2647円になった。不適正な事務を指示した管理職などについては今後、処分を検討するとしているが、何人になるかは23日時点で「数えてない」としている。
不適正事務が発生した原因や背景について根本祥代福祉部長は「(組織の)体質とは考えていない。その時その時の管理職等の不適切な判断が要因になった。職員から指摘があった時に是正できなかった管理職に問題があった」などと説明し、構造的な問題があったのではなく、管理職個人の問題だと話した。
7件の合計額の内訳は①社会福祉課職員に対する残業代未払いが2021年1月から24年3月までに同課に所属していた24人に対し3851時間860万6522円(6月20日付)②特殊勤務手当ての未払いは同期間で17人に19万1675円(3月6日付)③障害年金の申請に必要な診断書料の過支給は8件で6万2890円(24年7月20日付)④障害者加算の誤認定による過支給は27件1902万5721円⑤重度障害者加算の誤認定による過支給額は5件135万6870円⑥不適切な債権管理による国庫負担金の未算定は171件1758万8726円⑦生活保護費の不適切な現金取り扱いと県への虚偽報告は0円(3月17日付)ーの7件。
2014年度から23年度まで過去10年間に在職していた職員や管理職96人に聞き取りや書面による実態調査を実施し、原因を究明し、再発防止のための方策を検討したとしている。
残業代未払いついては、当時の課長から「(残業を申請すると)人事評価で低く評価せざるを得ない」「お前は能力が低いと思っていた」」など、残業をしないように促す発言があったなどとした。
障害者加算の誤認定については、2020年1月の会計検査時に調査官から誤認定を指摘されたにもかかわらず、翌日の係員会議で係長から「現時点で(誤認定の)加算を取り消すことなどはしなくてよい」などの発言があったことを明らかにしたほか、22年11月の内部会議で職員が誤認定を指摘した際は、当時の課長と課長補佐が県に確認するよう係長に指示し、県から誤認定だという回答を得たが、対応を行わなかったなどとした。
生活保護費の不適切な現金取り扱いと県への虚偽報告については「(当時の課長から)現金支給していることは外で言わないように、記録にも記載しないようにと指示を受けた。県監査での対応についても課長から口外しないよう注意された」などの証言が職員からあったことを明らかにした。
これに対し報告書には、なぜ管理職は誤った指示を出したのか、管理職が異動し交代してもなぜ誤った指示が続いたのかなどについての原因や背景に関する検証や分析の記載はない。
報告書について五十嵐立青市長は「徹底的な調査を指示し、管理職の対応や事務執行のさまざまな不適切な対応があり、極めて不正常な業務状況に陥っていたことが改めて明らかになった。このような事態に対し市民や関係機関に多大な迷惑をお掛けしたことを深くお詫びします」とし、「調査結果を踏まえ職員の処分を検討すると共に、市長が先頭に立ち、職員一丸となって生活保護行政の一層の改善を進め、一日でも早く市政に対する市民の信頼を回復できるよう取り組みます」などとするコメントを発表した。
一方、社会福祉課の元職員は「報告書はひじょうに不十分で不誠実。労務管理は不適切などではなく違法でありずさんだった。生活保護の問題も、ようやく職員から指摘があった事実が認められたが、なぜその時点で是正されなかったのかなどについて、いまだ説明が足りない。管理職は法令の正しい知識がないばかりか、自身の不適正な指導について『記憶がない』と逃げており、信じられない。調査方法についても、聞き取りまでされる職員とされない職員がいて不公平感を禁じ得ない。調査内容も偏りがあり、ひじょうに作為的で不信感を抱く。公平公正な第三者による調査が不可欠であると強く感じる」としている。(鈴木宏子)