東日本大震災の被災地 岩手県山田町とウクライナを支援するチャリティーコンサートが7日、つくば市吾妻のアルスホールで開かれ、ウクライナからつくば市に避難中のチェロ奏者、グリブ・トルマチョブさん(31)が出演する。「山田町に届け!ウクライナ支援 チャリティーコンサート 第20弾」と題した復興と平和を願うコンサートになる。
妻の姉を頼りつくばに避難
グリブさんはウクライナ北東部のハルキウ出身。つくば市に住む妻の姉を頼り2023年、同市に避難してきた。チェロを始めたのは6歳のとき。かつてヨーロッパ最高のユース交響楽団と認められたこともあるスロボジャンスキー ユース・アカデミック交響楽団の首席チェリストを務めていた。ウクライナではプロとして12年間、積極的に演奏活動に取り組み、各地のフィルハーモニー管弦楽団で演奏したり、多くの著名な指揮者やソリストと協演してきた。
つくばについてグリブさんは「若々しく活気があり、多くの学生がいる素晴らしい街。故郷のハルキウも学術と文化が息づく街で、つくばとの共通点が安心感をもたらしてくれる」と話し、「今回のチャリティーコンサートに招待されることは大変光栄。音楽を通じて人々が集う意義深いイベントの一員になれることに心から感謝している」と意気込みを語る。
細く長く支援続ける
コンサートを主催するのは、つくば市在住の中島千春さんが代表を務めるチャリティー実行委員会。中島さんは東日本大震災後、長年「山田町に行って状況を見てから、必要なものを確認し、募金で購入して現地に届ける」活動を続けてきた。山田町支援に限定するのは一地域に集中して細く長く支援活動を行うためだ。
これまで山田町への支援をベースに、熊本地震の被災地なども支援してきた。第20回となる今回はウクライナ支援が初めて加わる。グリブさんが中島さんに裏千家茶道を学んでいることが縁となった。
強い思いに感銘
コンサートではブラームスの「チェロソナタ第1番」、サンサーンスの「白鳥」などを演奏する。ピアノはつくば市在住で同市出身のピアニスト、村田果穂さん(33)が演奏する。グリブさんとはつくばで知り合い、1年ほど前から「(チェロとピアノの)音を合わせる」友人だという。村田さんはグリブさんから誘いを受けて今回の出演を決めた。
村田さんは「震災の記憶を風化させず支援を続けていくという中島さんの強い思いを知って感銘を受けた。今回はさらにウクライナ支援も加わり、復興と平和を願うコンサートになる。演奏会を通じて、思いが多くの人の心に届くことを願っている」と話す。
リハーサルを行うたび村田さんは「グリブさんの多彩なアイデアに驚く。2人で意見を出しながら本番への準備を進めている。本番が楽しみ」という。
平和、共感、希望を感じて
グリブさんは「音楽には言葉を超えて人々をつなぎ、団結させる力があると信じている。私の演奏が観客の心に響き、平和、共感、希望を感じてもらえることを願っている」と来場を呼び掛ける。
中島さんは「東日本大震災などさまざまな災害があり、これからも起こると考えられる。災害を風化させないためにもコンサートを開催している。コンサートで豊かな音楽を聴きながら、被災地に思いをはせてほしい」と語る。
コンサートでは山田町向けとウクライナ向けの募金箱を設置する。コンサートの収入は全額をグリブさんがウクライナ支援のために使う予定だ。出演者の交通費や謝礼はチャリティー実行委委員会が負担する。ウクライナ支援については後日報告会を開いてグリブさんが何に使ったかを報告するという。(伊藤悦子)
◆「山田町に届け!ウクライナ支援 チャリティーコンサート 第20弾」は7日(土)午後6時30分から、つくば市吾妻2-8 つくば文化会館アルスホールで開催。開場は午後6時15分。入場料は当日大人3500円、前売り3000円。学生・子どもは当日2500円、前売り2000円。問い合わせはチャリティー実行委員会(電話090-7714-0518=井上さん、Eメールyamada2todoke@gmail.com)へ。