茨城県南部は、茗溪学園中学・高校や筑波大学、流通経済大学など強豪校が集中する全国屈指のラグビータウンだ。一般社団法人「つくばスクラム」(本社つくば市、廣瀬重之代表)はこの地域のラグビー・スポーツ振興のため、2023年に筑波大学内に設立された。同大ラグビー部(嶋﨑達也監督)の強化支援も目的の一つで、勝つことで人々を勇気付け、地域に元気をもたらす存在になりたいという。
代表の廣瀬さんは筑波大ラグビー部OBで、嶋﨑監督とは同期。卒業から15年、今年度から同部ゼネラルマネージャーも務める。

子どもたちのスポーツ環境を支えたい
つくばスクラムの主要な活動の一つが、筑波大ラグビー部およびジャパンラグビーリーグワンの浦安D-Rocksとの協業による「UTRラグビーアカデミー」の運営だ。専門性が高い指導の下、年齢が近く親近感がある現役ラグビー部員が一緒に体を動かすことで、地域の子どもたちが楽しく夢中でプレーしながら心身ともに成長できる場を提供する。
「つくば近郊エリアには幼児・小学生向けのラグビースクールが存在するが、土日以外のプレー機会の増加や、専門的スキルの向上を求める声も上がっていた。また、スクールでラグビーに触れても中学校にはラグビー部がなく、やむなく他の競技に転向するという問題もあった。部活動の地域移行化など変革期にある子どもたちのスポーツ環境を支える場となりたい」と廣瀬代表は構想する。
地域ラグビーのさらなる活性化へ
つくばスクラムと筑波大ラグビー部は、地域のラグビーを活性化する数々の取り組みも行っている。子どもたちに安全で楽しいラグビー体験を提供する「つくばタグラグビーフェスティバル」を一昨年から開催。今年は初心者カテゴリーに21チーム、経験者カテゴリーに17チームが参加し、会場のCHUBE UT Field(筑波大学ラグビー場)では約300人の観客がスタンドから見守る中、子どもたちが天然芝のフィールドを走り回って交流した。

昨年には「つくばラグビーフェスティバル」を15年ぶりに復活。小学5・6年生対象のクリニックのほか、つくば秀英高-常総学院高、筑波大-流通経済大の試合などを開催し、ラグビー三昧の一日となった。
毎年10月の「つくばスポーツフェスティバル&つくパラ」にも出展しており、昨年はラグビーに初めて触れる子どもたちに向けて「鬼ごっこゲーム体験」を実施した。
このほか普及活動として、近隣の保育園・幼稚園やラグビースクールなどへの学生コーチの派遣も行っている。

日本一になって地域に恩返しを
これらの活動は、筑波大ラグビー部が既存の大学部活動の枠を超え、自ら学外へ出て地域と協業するのを支援するという側面もある。
「背景には資金が潤沢な私学に対し、運営費が乏しい国公立という大学部活動の二極化がある。弊部では寮を持たず部員は一人暮らしをしており、体づくりのための栄養管理が難しい。都内へ試合に行くにもバス代などの負担が大きい。活動の収益を部の強化費や遠征費などに役立てたい」

逆境の中でも常に可能性を示し続けるのが同部の社会的使命。全国大学ラグビーフットボール選手権大会では2012年と2014年に準優勝を果たした。次の目標はつくばから初の日本一になり、地域に感動を与えることだという。
「地域に出ていくことで、応援したいという声が直接耳に届くようになった。その声に応え、強くなり地域に喜んでもらうことが恩返し。1月2日に国立競技場で開催される決勝で、スタンドがチームカラーの水色で一面に染まる未来を夢見て活動している」(池田充雄)
◆UTRラグビーアカデミーは小学3年~中学3年生が対象。開催日時は原則毎週金曜日(一部木曜日あり)午後6時30分~8時00分、場所はCHUBE UT Field(筑波大学ラグビー場)、問い合わせはメール(info@utr-rugbyacademy.jp)へ。